三要件(旧)の基準





三要件(旧)の範囲とは


 ここでは、三要件(旧)の範囲内の「武力の行使」(自衛行動)が何かを明らかにする。


━━━━━【自衛のための必要最小限度】━━━━━

「武力の行使」の旧三要件

① 我が国に対する急迫不正の侵害があること      ← (発動要件①)

② これを排除するために他の適当な手段がないこと   ← (発動要件②)

③ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと     ← (程度・態様)

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○角田(禮)政府委員 自衛権行使の要件として、前々からいわゆる三要件というものを申し上げているわけです。これは、開始の要件というか発動の要件と、発動した後の実際の行使の要件と両方を含んで三要件、たとえば第三の必要最小限度の範囲にとどまらなければいけないというのは、発動した後の行使の態様についても適用される要件だと思います。

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第94回国会 衆議院 法務委員会 第18号 昭和56年6月3日


【参考】第186回国会 衆議院 安全保障委員会外務委員会連合審査会 第1号 平成26年6月2日

【参考】第19回国会 衆議院 内閣委員会 第20号 昭和29年4月6日

【参考】第71回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 昭和48年6月21日 (発言番号241)

【参考】第71回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 昭和48年6月21日 (発言番号267)

 








第一要件「急迫不正の侵害」とは


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吉國政府委員 もう一ぺん申し上げますが、急迫不正な侵害と申しますのは、わが国の独立を侵すおそれのある差し迫った正当性を欠くような侵害であるということでございます。

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吉國政府委員 侵害と申しますのは、わが国の主権を侵すということでございまして、その害によって現実の被害が生ずるというところまでは要求するものではございません。

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吉國政府委員 これは前々から申し上げておりますが、いま現実の被害と申し上げましたのは、武力攻撃というものに着目いたしまして、武力攻撃が始まればそれで侵害があったということでございます。

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吉國政府委員 武力攻撃のおそれがあるという時期ではございません。現実に武力攻撃があったという時期でございます。

 ただ、その武力攻撃によって現実に被害を生じたというところまでいっているのではなしに、わが国の主権を侵す行為、その武力攻撃が始まれば侵害があったという時点に相なると思います。

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吉國政府委員 武力攻撃の具体的な態様については、私ども知悉をいたしておりませんけれども、かりに武力攻撃の手段として兵器を用いて攻撃をするというときに、その攻撃によって現実に、たとえば家屋その他の財産が破壊される、損壊されるという現実の被害、あるいは人命が損傷され、あるいは人命が喪失されるというような具体的な被害、そういうものまで要求しているのでなしに、わが国土に対して武力攻撃として兵器を使用するという、使用し始めたというときが武力攻撃が開始されたというふうに私ども考えております。

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吉國政府委員 領海を何海里とするかは別といたしまして、わが国の領海内に不法に入ったというだけで、自衛権発動の急迫不正の侵害というまでにはなると限らないのではないかと思います。

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吉國政府委員 わが国の主権を侵害することなしにわが國に対する武力攻撃がなされるということはあり得ないのではないかと思います。

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吉國政府委員 これはほんとうに想定の問題でございますけれども、わが国に対する武力攻撃を意図して、その武力攻撃をするためにある兵器の使用をした。ところが、先ほどの御説明にもあったかと思いますが、その武器がその意図どおりわが国に対する武力攻撃の現実の被害を生ぜしめるだけの作用を果たし得なかったというような場合、これはわが国に対する武力攻撃があったということには相なると思います。

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吉國政府委員 あったことになる。あったということです。

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第71回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 昭和48年6月21日

 

個別的自衛権の地理的要件などに関する質問に対する答弁書 平成27年7月21日



第一要件「我が国に対する急迫不正の侵害」の『着手』とは

 

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政府委員(高辻正巳君) 予期できる事態に対して自衛力の保持ができるかというのじゃなくて、自衛権の行使ができるかと、こういうことでございますね。それはやはり武力攻撃というものが現存しなければ私はいけないと思います。ただし、武力攻撃というものが現存するという意味は、着手といいますか、そういうものが入ることはむろんでございますけれども、武力攻撃があるということが前提であると私は思っております。

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政府委員(高辻正巳君) つまり、非常に脅威があるというわけで相手をやっつける、これはできません。

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第61回国会 参議院 予算委員会 第3号 昭和44年2月21日

 

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高辻政府委員 大体いままで申し上げたことでもう尽きておると思うのでありますが、要するに武力攻撃が発生したときということでありますから、まず武力攻撃のおそれがあると推量される時期ではない。そういう場合に攻撃することを通常先制攻撃というと思いますが、まずそういう場合ではない。次にまた武力攻撃による現実の侵害があってから後ではない。武力攻撃が始まったときである。こういうことをいっておるわけです。始まったときがいつであるかというのは、諸般の事情による認定の問題になるわけです。認定はいろいろ場合によって、その場合がこれに当たるかどうかということでありまして、何といいますか、ごく大ざっぱな言い方でこの場合が当たるとか当たらぬとかいうことを軽々に申し上げるのはいかがかということで、政府はその点の認定を軽々しくやらないという態度でいるわけです。そういう認定のもとになる考え方の基本、これがきわめて大事なことであろうと思いますが、その基本はいままでに申し上げたとおりであります。

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高辻政府委員 私が武力攻撃が発生したというときに、これは着手が入るんだということを前にも申し上げたことがございますが、それはさておきまして、ただいまの、武力攻撃が加えられたときと言ったではないかというお話がございましたが、武力攻撃が発生した場合でなければいけないというのは、いま言っていることでございます。すなわち武力攻撃が始まっている、武力攻撃が加えられている、そういう、とにかく始まっていなければ話になりませんが、始まっていればよろしいということを言っているのは、ちっとも変わりがないと思います。

 それからもう一つ、準備が入らぬというのは、これはあたりまえのことでして、準備の場合にはまだ着手とはいえませんから、準備の段階ではまだいかぬということを申し上げたわけでありまして、決して矛盾しているものではないと思います。

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第63回国会 衆議院 予算委員会 第15号 昭和45年3月18日


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○吉國政府委員 いま手元に非常に古い時代のものは持っておりませんので、昭和四十五年三月十八日の第六十三回国会、衆議院予算委員会における楢崎委員の御質問に対しまする当時の高辻政府委員の答弁を申し上げますと、楢崎委員の「領域に入られない場合でも、自衛権の発動はあり得るのですね。それを聞いておるのです」という御質問に対しまして、高辻政府委員から、「大体いままで申し上げたことでもう尽きておると思うのでありますが、要するに武力攻撃が発生したときということでありますから、まず武力攻撃のおそれがあると推量される時期ではない」。これは先ほど私が申しましたとおりであります。「そういう場合に攻撃することを通常先制攻撃というと思いますが、まずそういう場合ではない。次にまた武力攻撃による現実の侵害があってから後ではない。武力攻撃が始まったときである。こういうことをいっておるわけです。始まったときがいつであるかというのは、諸般の事情による認定の問題になるわけです」というような答弁をしております。もっと古い時代にもあったと思いますが、いま手元に持っておりますのはそのようなものでございます。

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○吉國政府委員 先ほど私、申し上げましたのは、自衛権発動の三つの要件として、わが国に対する急迫不正な侵害というのが一つと、それからの侵害を排除するために他に適当な手段がないということ、それからその侵害を排除するために必要な最小限度の実力行使でなければならないという三つの要件を申し上げました。そのときに、侵害ということについては、現実の侵害がなければいけないのかどうかということについて、先ほどの先制攻撃と少し私も関連をしてお答えしたようなつもりでございますけれども、たとえばということで武力攻撃の例を出しまして、その武力攻撃の一つの態様として、たとえば一種の一定の武器の使用があった。その武器の使用があって、わが国に対する急迫不正というような要件が備わっていなければもちろん相なりませんけれども、侵害がそれで始まったということになりますと、というのは、現実の財産の損壊であるとか人命の殺傷というような具体的な被害というものまで、侵害ということで言っているわけではございません。そのちょっと前の段階で侵害があったことになりますよということを申し上げたつもりでございます。

 したがって、これは前々からもう歴代の長官がそういう答弁をいたしておるはずでございますので、違いはないと思いますが、必要でございますれば、先ほども申し上げました昭和四十五年の答弁より古い答弁をまたさがし出してお目にかけてみてもよろしいと思いますが、三要件の考え方について、法制局の考えは変わっておらないつもりでございます。

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第71回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 昭和48年6月21日

 

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なお、現実の事態において我が国に対する急迫不正の侵害が発生したか否かは、その時の国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様等々により判断されるものであり、限られた与件のみ仮設して論ずべきではないと考える。

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憲法第九条の解釈に関する質問に対する答弁書 昭和60年9月27日

 

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○野呂田国務大臣 もう委員御案内のとおり、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権を発動するためには、政府は、従来から、いわゆる自衛権発動の三要件というものがございます。すなわち、一つは、我が国に対する急迫不正の侵害があること、一つは、これを排除するために他の適当な手段がないこと、一つは、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こういう三つの要件がございます。これに該当する場合に武力の行使は限られると解されております。我が国に対する急迫不正の侵害がない場合に自衛権の行使をして武力の行使をするということは、やはり憲法上認められないものだと考えております。

 この場合に、我が国に対する急迫不正の侵害がある場合については、従来から、我が国に対する武力攻撃が発生した場合を指しておりまして、この武力攻撃が発生した場合とは、侵害のおそれがあるときではなく、また我が国が現実に被害を受けたときでもなく、侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手したときである、こういうふうに解されているところであります。

 委員から、戦闘機や艦船はどうかという具体的なお尋ねがございましたから、多少長くなりますがお答えさせていただきますが、我が国に現実の被害が発生していない時点であっても、侵略国が我が国に対して武力行使に着手しておれば、我が国に対する武力攻撃が発生したことと考えられ、自衛権発動の他の二つの要件を満たす場合には、我が国としては、自衛権を発動し、相手国の戦闘機や艦船を攻撃することは法理上可能となる、こういうふうに考えております。

(略)

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○野呂田国務大臣 

(略)

 したがって、では、着手した時期は具体的にいつかということになってくるわけでありますが、それは、そのときの国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様等について総合的に勘案して判断されるものであるというのが政府の従来からの見解でございます。

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第145回国会 衆議院 安全保障委員会 第3号 平成11年3月3日

 


【参考】もし「自衛権」を国民投票にかけたらどうなるか? 2017年7月19日

 


〇 三要件(旧)と自衛隊法76条の関係


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○真田政府委員 憲法第九条の規定にもかかわらず、わが国には固有の独立国として自衛権はあるというのが一般の考え方でございます。どういう場合に自衛権を現実に発動することができるかということになりますと、それは憲法上の解釈といたしまして、従来から自衛権の発動に関する三原則というのを唱えているわけでございます。その考え方を実定法上手続としてあらわしたのが七十六条である。(大出委員「それだけでしょう、ほかにはないでしょう」と呼ぶ)そういうふうに御理解になっていただいて結構でございます。現行法といたしましては。

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第85回国会 衆議院 予算委員会 第5号 昭和53年10月6日

 


〇 「外部からの武力攻撃」または「外国からの武力攻撃」について

 

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真田政府委員 「外部からの武力攻撃」という意味合いにつきましての従来の国会論議の概要を繰り返して申し上げますと、これは外国からの組織的かつ計画的な武力による攻撃というふうに言われております。

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真田政府委員 その点は、従来しばしば政府の方で明言しているところでございます。ただ問題は、国連憲章五十一条にも関連いたしますけれども、一体、外国からの武力攻撃があったというのはいつかという、ちょうど楢崎先生が何か「ニイタカヤマノボレ」とかいうような例をお出しになって、一体それじゃ国連憲章五十一条が発動するその時点はいつだということが問題になったことはございます。そのときには、日本に対して外国からの組織的かつ計画的な武力による攻撃の実害が起きるまで発動できないというのではない、あのときに着手という言葉を使ったかと思いますけれども、とにかくそれは国連でもいろいろ問題になって、その記録も一度私は見たことがございますが、現実に実害が起きる前でもよろしいということになっているはずでございます。

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第85回国会 衆議院 予算委員会 第5号 昭和53年10月6日


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○政府委員(真田秀夫君) 先ほど来の御論議をここで聞いておりまして私感じますのは、防衛出動の発令の時期とそれから自衛権の行使の時期とどうも少し混同して御論議が行われていないかというふうな感じを抱くわけなんですが、七十六条は防衛出動の発令の時期でございまして、それはわが国に対して外部から武力攻撃があった場合及びそのおそれのある場合、その場合には防衛出動の発令ができるというふうな制度になっております。しかし、その防衛出動の発令がありましても現実に武力攻撃がまだない、おそれのある段階であるという、そういう段階において日本がいわゆるその具体的な自衛権の行使をすることはこれは憲法上許されない。先ほどおっしゃいました自衛権発動の三要件のうちの第一第二に該当しなければ現実の自衛権の行使はできない。ただその自衛権の行使の前提となる外国からの武力攻撃、その武力攻撃があったというのが一体いつかというまた非常にきわどい問題になるわけなんですが、それはかつて楢崎委員が、「ニイタカヤマノボレ」という太平洋戦争の初期のときの行動を例に挙げられまして、そして一体その武力攻撃があったときというのはいつだということを政府に御質問になりました。そのときにもお答えしているはずなんですが、この七十六条に言っている「武力攻撃」というのは、これは国連憲章五十一条と大体同じ内容だというふうにわれわれも考えておりますが、あの国連憲章にも、原文では、あれはアームド・アタック・オカーズと書いてありまして、過去形ではないんですね、あの五十一条自体が。その辺がまた問題になりまして、国連総会の第六委員会で、一体国連憲章の五十一条が発動する時期は具体的にはいつだということがかなり真剣に御論議になったようです。で、その点につきまして政府のいままでの見解は昭和四十五年の三月十八日に衆議院の予算委員会において当時の愛知国務大臣がお述べになっておるわけなんですが、「現実の事態において、どの時点で武力攻撃が発生したかは、そのときの国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様等々によるのでありまして、抽象的に、または限られた与件のみ仮設して論ずべきものではございません。」と言って具体的なお答えは差し控えておるというのがいままでの経過でございます。

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第85回国会 参議院 内閣委員会 第2号 昭和53年10月17日

 


〇 満たさない場合はどうか

質問主意書

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 4 自衛権発動三要件の一つ「我が国に対する急迫不正の侵害がある場合」について

(略)

 イ 政府が設定している自衛権発動三要件の一つ「我が国に対する急迫不正の侵害がある」事態という危機迫る段階の前段階において、つまり、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態(周辺事態)に対し、我が国が個別的自衛権に基づき対処することは、憲法上問題があるのか否か、説明いただきたい。

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内閣法制局の権限と自衛権についての解釈に関する質問主意書 平成15年7月8日

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答弁書

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二の4のイについて

 御指摘の事態については、自衛権発動の三要件が満たされないことから、これに対応するために我が国が自衛権を発動することはできない。

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内閣法制局の権限と自衛権についての解釈に関する質問に対する答弁書 平成15年7月15日

 

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○角田(禮)政府委員 運命にかかわりあるというようなことではわが国の個別的自衛権は発動できない。あくまでわが国に対する直接の攻撃がある場合に限る、こういうふうに申し上げておきます。

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第94回国会 衆議院 法務委員会 第18号 昭和56年6月3日

 





第二要件「排除するため」とは

 

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○政府特別補佐人(秋山收君) 今の御質問は、例えば、我が国に対する武力攻撃が発生した場合において、日米安保条約に基づき我が国を防衛するために行動している米軍の艦船等が攻撃を受けたときに、これを排除することができるかどうか、それから、仮にこれを排除することができるとして、それは集団的自衛権に該当するのかどうかという御質問につながるのであろうと考えますが、それは、自衛隊が我が国に対する武力攻撃が発生した場合において、自衛隊がその攻撃を排除することは、失礼いたしました、そういうような場合におきまして、我が国を防衛するために行動しているアメリカの艦船等が攻撃を受けたときに、自衛隊がその攻撃を排除することは、それが我が国に対する武力攻撃から我が国を防衛するための必要な限度での実力行使にとどまるものである限り、あくまでも個別的自衛権の行使として許されると解しておりまして、集団的自衛権に基づき許されると解しているわけではございません。

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第156回国会 参議院 予算委員会 第11号 平成15年3月14日



第二要件「他の適当な手段がないこと」とは


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○船田国務大臣 日本とアメリカとの間におきましては、国土の防衛につきまして安保条約のあることは御承知の通りであります。ただいま御質問のような場合は、おそらく行政協定第二十四条の発動によりまして、共同作戦をしなければならぬというような場合になるかと存じます。従いまして、そういう場合において大作戦をするということは、わが国の自衛隊の力ではできませんし、また自衛の範囲内という問題から、これは問題が起ると思います。さような場合においては、おそらく米国の空下の活動あるいは艦船の活動ということがあると思いますので、大体においてさような場合においては、いわゆる他に方法があるということになるかと存じます。

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第24回国会 衆議院 内閣委員会 第15号 昭和31年2月29日


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○伊能国務大臣 その点はさいぜん総理大臣から詳細に申し上げたと存じますが、御承知のように設例として、国連の援助もなし、また日米安全保障条約もないというような、他に全く援助の手段がない、かような場合における憲法上の解釈の設例としてのお話でございまするから、例を飛行機とか誘導弾とかいろいろなことでございますが、根本は法理上の問題、かように私どもは考えまして、誘導弾等による攻撃を受けて、これを防御する手段がほかに全然ないというような場合、敵基地をたたくことも自衛権の範囲に入るということは、独立国として自衛権を持つ以上、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではあるまい。そういうような場合にはそのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛の範囲に含まれており、また可能であると私どもは考えております。しかしこのような事態は今日においては現実の問題として起りがたいのでありまして、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。かようにこの二つの観念は別個の問題で、決して矛盾するものではない、かように私どもは考えております。

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第31回国会 衆議院 内閣委員会 第21号 昭和34年3月19日

 

第131回国会 参議院 内閣委員会 第5号 平成6年11月8日

第131回国会 参議院 内閣委員会 第6号 平成6年11月10日

 

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143 いわゆる自衛権の3要件に関して、「生身の人間がやるものですから、国民が無事でも自衛隊員に犠牲が出るということもありうる。そういう犠牲も可能な限り避けるというのが政府のあるべき姿ですよね。武力攻撃=急迫不正の侵害があったからただちに出動というのではなく、他に手段がないかを十分考える。そして、自衛隊が実力を行使しなくても解決できる方法があれば、それをとるのだということです」(阪田=川口・前掲書(註50)130頁[阪田])といわれる背景にも、賭命義務への配慮があるのではなかろうか。

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武力行使との一体化論と憲法解釈 齊藤正彰 2021年7月31日 (P333) (下線は筆者)





均衡性と第三要件の必要最小限度の違い


 国際法上の制約である「均衡性」と、憲法上の制約である三要件(旧)の第三要件の「必要最小限度」の違いを確認する。 


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 お尋ねの「我が国に対する武力攻撃が発生しこれを排除するために、個別的自衛権を行使する場合」の「必要最小限度」とは、武力の行使の態様が相手の武力攻撃の態様と均衡がとれたものでなければならないことを内容とする国際法上の用語でいう均衡性に対応するものであるが、これと必ずしも「同一の範囲・内容」となるものではない

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集団的自衛権における「必要最小限度の実力行使」に関する質問に対する答弁書 平成27年6月16日



国際法上の制約


━━━━【自衛権を発動できる場合の要件】━━━━

◇ 外国から加えられた侵害が急迫不正である(違法性)

◇ 防衛行動以外に手段がなく、そのような防衛行動をとることがやむを得ない(必要性)

◇ 自衛権の発動としてとられた措置が加えられた侵害を排除するのに必要な限度のもので、つり合いがとれていなければならない(均衡性

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○下田説明員 国際法上では正当防衛と自衛権と同じ意味で使つておりますが、国際法上ただちに自衛権を行使し得るのではなくて、いろいろ条件があります。つまり与えられた危害が急迫したものであること、またその急迫した危害を避けるために他に措置がないこと、またその危害を排除するために加える行為は危害行為と比例のとれたものでなければならない。つまり竹島のために韓国全土を占領するというようなつり合いがとれない措置はいかぬとか、いろいろ条件がございます。でございますから、ただちに外国から侵略なり危害があつたからといつて、ふつり合いな措置が何でもできるというわけではありませんで、自衛権を行使いたしますにつきましても、やはり国際法上の条件に合つた場合でしかできないと思います。

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第16回国会 衆議院 外務委員会 第30号 昭和28年9月17日


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○下田政府委員 ……(略)……ところが自衛権によつて行使し得る対敵手段には制限がございます。御承知のように、国際法上自衛権を行使し得るのは、急迫した危害が国家に加えられるということ、そして危害除去に必要な限度でなければ行使し得ないということ、またその危害を除去するために他にとる手段がないということ、この三つの条件が必要でございます。

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第19回国会 衆議院 外務委員会 第18号 昭和29年3月16日



憲法上の制約


━━━━━【自衛のための必要最小限度】━━━━━

「武力の行使」の旧三要件

〇 我が国に対する急迫不正の侵害があること

〇 これを排除するために他の適当な手段がないこと

〇 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと     ← (第三要件)

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○政府委員(真田秀夫君) 普通に自衛権行使の三原則といわれているものにつきましては、先ほども触れておきましたけれども、まず場合といたしましては、わが国に対して外国からの武力攻撃が行なわれたということでございます。第二番目においては、その武力攻撃を防ぐために他に方法がない武力をもって反撃するよりほかに方法がないという非常に切迫している場合、それが第二の要件でございます。それから第三番目の要件といたしましては、かくして発動される武力行使は、外国からの武力攻撃を防止する必要最小限度に限るということでございます。
 それから韓国についての、韓国条項についての御質問でございますが、これはわが国の自衛権行使の三要件とは関係がございませんで、いま申しましたように、わが国に対する武力攻撃があった場合に日本の個別的自衛権は限定された態様で発動できるというだけのことでございますから、韓国に対する脅威が、危害がありましても、これは直ちにわが国の自衛権が発動することになるとは毛頭考えておりません。
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第68回国会 参議院 内閣委員会 第11号 昭和47年5月12日

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○角田(禮)政府委員 ちょっと別の例で申し上げて恐縮でございますが、いわゆる個別的自衛権、こういうものをわが国が国際法上も持っている、それから憲法の上でも持っているということは、御承認願えると思います。
 ところが、個別的自衛権についても、その行使の態様については、わが国におきましては、たとえば海外派兵はできないとか、それからその行使に当たっても必要最小限度というように、一般的に世界で認められているような、ほかの国が認めているような個別的自衛権の行使の態様よりもずっと狭い範囲に限られておるわけです。そういう意味では、個別的自衛権は持っているけれども、しかし、実際にそれを行使するに当たっては、非常に幅が狭いということを御了解願えると思います。
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第94回国会 衆議院 法務委員会 第18号 昭和56年6月3日 (下線は筆者)


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○説明員(柳井俊二君) ただいまの点につきましては、御承知のとおり、国連憲章上の、すなわち国際法上の自衛権の範囲我が国の憲法が認めております自衛権の範囲は違うわけでございまして、我が国の憲法上の自衛権というものは国際法上認められているものよりは狭いものでございます。現在我が国として貢献策等国際協調の上でどのようなことができるかということを検討しておりますし、また一部いろいろな施策を実施に移しているわけでございますが、これは当然我が国の憲法の許す範囲内において行うべきであるというふうに考えております。
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第118回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 平成2年9月19日

(上記の答弁で『我が国の憲法上の自衛権』と述べているものは、我が国が憲法の制約の下で『自衛権の行使』として行うことのできる『武力の行使』の範囲のことである。国際法上の『権利』の概念である『自衛権』が、憲法によって正当化される統治権の内部の『権力・権限・権能』として存在するわけではないことに注意。)


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 憲法第九条第一項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定し、さらに、同条第二項は、「前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定している。

 しかしながら、憲法前文で確認している日本国民の平和的生存権や憲法第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきこととしている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条は、外国からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合にこれを排除するため必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないと解され、そのための必要最小限度の実力を保持することも禁じてはいないと解される。

 我が国がこのような自衛のために行う実力の行使及び保持は、前記のように、一見すると実力の行使及び保持の一切を禁じているようにも見える憲法第九条の文言の下において例外的に認められるものである以上、当該急迫不正の事態排除するため必要であるのみならず、そのための最小限度でもなければならないものであると考える。

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内閣法制局の権限と自衛権についての解釈に関する質問に対する答弁書 平成15年7月15日

 




 

 

 第三要件の「必要最小限度」とは、実力行使における程度・態様をより小さい形、より少ない形で実施しなければならないことを意味する。(『最小』とは、『最も小さいこと』『いちばん小さいこと』の意味)

 つまり、相手が銃を持っていたとしても、スタンガンで制圧できるのであればスタンガンで制圧しなければならないし、相手がナイフを持っていたとしても、素手で制圧できるのであれば素手で制圧しなければならない。

 練度を高めることで、より小さく、より少なく、より抑制的な形での実施を実現することができる。


 これを突き詰めていけば、最終的には戦うことなく話し合いで解決することが望まれる。


 これは、警察官職務執行法1条2項と同様の意味である。

 

警察官職務執行法

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(この法律の目的)

第一条 この法律は、警察官が警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。

2 この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。

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 目的は「我が国に対する急迫不正の侵害(第一要件)」を「排除する(第二要件)」ことであり、この目的を達成するために「必要最小限度(第三要件)」の手段を用いることができるということである。


【動画】日本は死刑執行があるから野蛮?まったく違います! 2022/08/12





三要件(旧)の用語

〇 三要件(旧)と「防衛出動」の関係


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○政府委員(伊藤圭一君) いま先生のお述べになりました内容が具体的にどういうものかというのは、私もちょっといま判断しかねるわけでございますが、いま大臣が申しました有事というのは、有事というのは定義がないわけでございますけれども、私どもが研究の対象といたして考えておりますのは、七十六条の防衛出動が下令されたような状況というものを考えているわけでございます。ただ、いまのお話にございましたように、いわゆる自衛力の行使とこの防衛出動とは結びついていないということは、私そのように考えているわけでございますが、防衛出動が下令されましてもなお自衛力を行使するのは、いわゆる自衛力行使の三要件と申しますか、それに該当したようなときだというふうに考えているわけでございます。

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第85回国会 参議院 内閣委員会 第2号 昭和53年10月17日

 

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○政府委員(真田秀夫君) 先ほど来の御論議をここで聞いておりまして私感じますのは、防衛出動の発令の時期とそれから自衛権の行使の時期とどうも少し混同して御論議が行われていないかというふうな感じを抱くわけなんですが、七十六条は防衛出動の発令の時期でございまして、それはわが国に対して外部から武力攻撃があった場合及びそのおそれのある場合、その場合には防衛出動の発令ができるというふうな制度になっております。しかし、その防衛出動の発令がありましても現実に武力攻撃がまだない、おそれのある段階であるという、そういう段階において日本がいわゆるその具体的な自衛権の行使をすることはこれは憲法上許されない。先ほどおっしゃいました自衛権発動の三要件のうちの第一第二に該当しなければ現実の自衛権の行使はできない。……(略)……

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第85回国会 参議院 内閣委員会 第2号 昭和53年10月17日

 

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 憲法第九条の下において認められる自衛権の発動としての武力の行使については、政府は、従来から、第一に、我が国に対する急迫不正の侵害があること、第二に、これを排除するために他の適当な手段がないこと、第三に、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、という三要件に該当する場合に限られると解している。自衛隊法第七十六条の規定に基づき出動を命ぜられた自衛隊は、同法第八十八条の規定に基づき、我が国を防衛するため、必要な武力を行使することができるが、この武力の行使は、自衛権発動の三要件に該当する場合に限られており、このことは、武力攻撃事態対処法案の「武力攻撃事態」に該当する事態であっても、同様である。

 他方、自衛隊法第七十六条の規定に基づく防衛出動は、内閣総理大臣が、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合に命ずるものであり、自衛権発動の三要件に該当する場合に限られない。

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武力攻撃事態に関する質問に対する答弁書 平成14年5月24日

 


〇 三要件(旧)と「戦闘状態」

 三要件(旧)に該当する場合に「武力の行使」(自衛行動)を行うと、「戦闘状態」となる。


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○伊藤(圭)政府委員 まあ平時と戦時というような分け方をすれば、いわゆる自衛隊が武力を行使しますから戦闘状態であるわけです。ただ、防衛出動が下令されてそれがすぐ自衛権の行使というわけではございませんで、先ほど法制局長官からも御答弁がありましたように、三要件に該当する場合にその自衛権を行使する、自衛権を行使する場合には、これはまさに戦闘状態というふうに理解いたしております。

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第85回国会 衆議院 予算委員会 第5号 昭和53年10月6日



〇 三要件(旧)と「同盟国の軍隊」に対する攻撃


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 お尋ねのような事案については、法理としては、仮に、個別具体の事実関係において、お尋ねの「同盟国の軍隊」に対する攻撃が我が国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たると認められるならば、いわゆる自衛権発動の三要件を満たす限りにおいて、我が国として自衛権を発動し、我が国を防衛するための行為の一環として実力により当該攻撃を排除することも可能であるが、右のように認めることができない場合であれば、憲法第九条の下においては、そのような場合に我が国として実力をもって当該攻撃を排除することは許されないものと考える。

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政府の憲法解釈変更に関する質問に対する答弁書 平成16年6月18日

 

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○山本政府参考人 

(略)

 まず、弾道ミサイルにつきましては、我が国に飛来する相当の蓋然性があり、自衛権発動の三要件を満たす場合には、その迎撃は我が国の自衛権の行使として当然認められるというふうに考えますし、また、弾道ミサイル等に対する破壊措置の規定というのがございまして、自衛隊法の八十二条の二でありますけれども、これに定める要件に該当する場合にはその破壊措置をとることができる。最後に、一般論として、我が国に飛来する蓋然性のない、他国に向かう弾道ミサイルにつきましては、それが他国に対する武力攻撃である場合には、我が国がそれを撃墜することは憲法上の問題が生じ得るというのがお答えでございます。

 第二の、米軍艦艇の話でございますけれども、これはやはり二つに分かれておりまして、既に我が国に対する武力攻撃が発生した場合におきまして、我が国防衛のために行動している米軍艦船が相手国から攻撃を受けたときには、我が国の自衛権の行使によって対処することが可能でありますし、また、法理としては、個別具体の事実関係におきまして、お尋ねのような、米軍艦船への攻撃が我が国に対する武力攻撃に該当すると認められるならば、我が国として自衛権を発動して実力を行使することによって、当該米軍艦船への攻撃を排撃するということが可能な場合もあります。

 また次に、武力攻撃に当たらない武器の使用といたしまして、自己等や武器等の防護のための武器使用の規定、これはテロ特法の十二条あるいは自衛隊法の九十五条でございますが、その要件が満たされるときには武器の使用が認められておりまして、このような武器の使用が、結果的に米軍艦船に対する攻撃を防ぐ反射的効果を有する場合があり得るというふうにお答えしているわけでございます。

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第166回国会 衆議院 安全保障委員会 第9号 平成19年5月15日





「武力の行使」の一体化論

 日本国の実力組織が、外国で他国の行っている「武力の行使」と一体化した場合には、「自衛のための必要最小限度」という三要件(旧)の基準を超える「武力の行使」を行っていることになることから、9条に抵触して違憲となる。

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○政府特別補佐人(津野修君) お答えいたします。

 この点につきましては、しばしば御党の方からいろいろ御質問を受けておりますが、政府は従来から、輸送協力等、それ自体が我が国の武力の行使ではない行為であっても、他国の武力の行使への関与の密接性などから他国の武力の行使と一体化する場合、そういう場合には、その行為は憲法九条の規定に違反することとなりまして行い得ないというふうに考えておりますが、他方、いわゆる後方支援活動でありましても、それが他国の武力の行使と一体化しない限りにおいては、憲法第九条との関係で問題を生じないというふうに考えているわけでございます。

 これは湾岸戦争当時、いろいろ弾薬、武器・弾薬の輸送に関しましても御議論があったところでございますけれども、考え方としては、一体化しない限りその武器・弾薬の輸送であっても憲法上問題はないということは、従来の湾岸戦争当時の国会答弁でも、中山外務大臣等からもきちんと述べられているところでございます。

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第153回国会 参議院 外交防衛委員会、国土交通委員会、内閣委員会連合審査会 第1号 平成13年10月23日

 



 

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政府委員(角田禮次郎君) 一体をなすような行動をして補給業務をやるというふうに書いてありますが、これはその補給という観念の方から見るのじゃなくて、それ自体が武力行使の内容をなすような直接それにくっついていると、そういうようなものはむしろ武力行使としてとらえられる、そして憲法に反するというような意味で林元長官が言われたのだと、そういう意味では私が先ほど来申し上げていることと基本的には違いはないように思います。

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政府委員(角田禮次郎君) 先ほど来申し上げていることをまた繰り返すようでございますけれども、憲法第九条の解釈としてわが国は自衛のため必要最小限度の武力行使ができるということがまず出発点になっているわけです。他国に対する協力もそういうものを越えた武力行使はできないと、こういうことに当然なるわけであります。したがいまして、いま委員が言われたように、他国同士の紛争に何らかの意味で、何らかの方法で関与するということが一切憲法九条のもとで禁止されているというふうには私どもは考えてないわけです。ただし、そういう外国同士の紛争について協力といいますか、何らかの意味で関与をするということについての別の立場からの議論というものは当然あると思いますが、憲法がぎりぎりの憲法解釈としてそこまで禁止しているというふうには考えていないわけでございます。

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第96回国会 参議院 外務委員会 第7号 昭和57年4月20日

 

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○大森政府委員 一体化しているかどうかというのは他人から見た他人の判断であるかという趣旨のお尋ねがございましたけれども、要するに、この一体化の議論と申しますのは、くどく申して恐縮ですが、仮にみずからは直接武力の行使または武力による威嚇をしていないとしても、他のものが行う武力の行使等への関与の密接性から我が国も武力の行使または武力による威嚇をしたとの評価を受ける場合があるということを前提としておりまして、これはいわば法的判断に、法的評価に伴う当然の事理を述べたものである、法的評価の問題である。

 したがいまして、他人がそういうふうに言われるからやめておくのだという問題ではございませんで、やはり行う主体の側において、自分の行動が客観的にそのように評価されるということになる限りは主体的にやってはいけない問題である、その主体的判断の基準であるということでございます。

 それからもう一点は、そういってもその基準が非常に不明確であるから、現場で判断を強いることになるのは不都合ではないかという御指摘でございますが、確かに個々具体的な判断ということの宿命といたしましてそのような御懸念が生ずることはごもっともでございますが、だからこそ、そういう現場で時々刻々の判断にかからせることのないように、あらかじめ類型的に一体化が生じないような行為を限定して、例えばガイドライン等で後方支援をする場合には、あらかじめ類型的に閣議等で決定をいたしまして、その範囲内で、一体化が生じないような範囲内において行うということが確保されるべきであるということを常々私どもも述べてきているところでございます。

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第142回国会 衆議院 予算委員会 第27号 平成10年3月18日

 

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 なお、御指摘の「武力行使との一体化」論とは、仮に自らは直接「武力の行使」をしていないとしても、他の者が行う「武力の行使」への関与の密接性等から、我が国も「武力の行使」をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとするものであり、いわば憲法上の判断に関する当然の事理を述べたものである。……(略)……

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内閣法制局の権限と自衛権についての解釈に関する質問に対する答弁書 平成15年7月15日

 

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 一般論として、政府としては、従前から、自衛隊がその任務を遂行するために行う情報収集活動によって得られる情報を、一般的な情報交換の一環として提供することは、実力の行使に当たらず、憲法上の問題はないと考えているが、例えば、特定の国の武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供する場合のように、情報の提供に特定の行動が伴う場合には、これが例外的に他国による武力の行使と一体となると判断される可能性があると考えている。いずれにせよ、他国の武力の行使に関連する我が国の活動が、当該他国の武力の行使と一体化するかどうかについては、一般に、我が国の活動の具体的内容等諸般の事情を総合的に勘案し、個別に判断すべきものと考えている。

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中東地域への自衛隊派遣に関する質問に対する答弁書 令和元年12月17日

    【参考】「例外的に他国による武力行使と一体と判断の可能性」 2019年12月17日



<理解の補強>

【詳しすぎる】武力行使との一体化論と憲法解釈 齊藤正彰 2021年7月31日 (PDF