内閣の53条「臨時会召集決定義務」違反



 53条「国会召集決定義務」に違反している内閣が存在している。この行為が法秩序において許容されるか否かを考える。


 まず、53条の条文を確認する。

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第53条 〔臨時会〕

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。

いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない

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 この規定に関して、「53条は期限が定められていないため、召集時期は内閣の裁量である」との主張や、「53条で期限が定められていないのは、現行憲法の不備である」との主張が見られる。

 しかし、それらの主張は次の2つの論点の理由で妥当でないと思われる。


 ① 義務規定であることの論点

 ② 内閣の裁量権の有無に関する論点


 これらについて、下記で詳しく解説する。





① 義務規定であることの論点


 憲法の中に記載されている、53条の「しなければならない。」と同じような文言を参考に、この規定を無視しても構わないのかどうかを考えてみる。


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しなければならない
なければならない

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 これらは義務規定と解される。


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(しては)ならない

~ない
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 これは禁止規定と解される。



 53条を無視するならば、現行憲法のこれらの文言の規定をすべて無視した場合に、法秩序が成り立ちえるのか考えてみた方がいいだろう。法秩序を成り立たせるためには、罰則がないからといって、条文を無視していいということにはならない。


 下記に、53条と同じような文言の「しなければならない」「なければならない」の条文を列挙する。


日本国憲法

 

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。



第一章 天皇

〔財産授受の制限〕
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない


⇒ この規定を無視した場合、罰則はないけれども、天皇が権力を握ることとなり得る。これは、象徴天皇制を逸脱する行為となり得る。



第二章 戦争の放棄



第三章 国民の権利及び義務

〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。


⇒ 罰則はないが、人権は不断の努力によって保持しなければ、憲法の正当性の効力基盤自体が失われてしまう性質であるため、国民に対して義務的な記載をしていると考えられる。



〔公務員の選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障及び投票秘密の保障〕
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。


⇒ 罰則がないからといって、選挙における投票の秘密を侵してもいいわけではない。


〔思想及び良心の自由〕
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない

 

⇒ 罰則や具体的な法律がないからといって、このような禁止規定を侵すようなことをしてはならない。これに関しても、国の権限に裁量の余地があるというものではない。


〔信教の自由〕
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない


⇒ 罰則がないからといって、国は宗教団体に特権を与えたり、政治上の権力を行使させるようなことをしてはならない。これも、内閣に裁量の余地があるというものではない。
⇒ 罰則がないからといって、国及びその機関が、宗教教育やその他の宗教的活動を行ってはならない。


〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない


⇒ 罰則がないからといって、検閲をしていいわけではないし、通信の秘密を侵していいということにはならない。


〔家族関係における個人の尊厳と両性の平等〕
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない


⇒ 婚姻制度が、夫婦が不平等な状態で、使用人や奴隷のような関係になってはならず、「相互の協力により、維持」されなければならないことを示していると考えられる。
⇒ 違憲審査はあるはずであるが、罰則がないからといって、国会は「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚」していない法律を立法してはいけない。

 

〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない


⇒ 努める義務を置き、国民の人権保障実現のために尽力するように義務を課している。


〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止〕
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない


〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。


〔財産権〕
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


⇒ 罰則がないからといって、財産権を侵すようなことがあってはならない。


〔抑留及び拘禁の制約〕
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない

 

⇒ 拘禁の理由について要求があったのにもかかわらず、罰則がないからといって、公開の法廷で示されないなんてことがあってはならない。



第四章 国会

〔議員及び選挙人の資格〕
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない


⇒ 罰則がないからといって、差別するようなことがあってはならない。


〔議員の不逮捕特権〕
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない


⇒ 罰則がないからといって、会期前に逮捕された議員を、議員の要求があったのにも関わらず、行政機関が釈放しないなんてことがあってはならない。


〔臨時会〕
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない

 

⇒ この条文を理解する上で、70条の文言を見てみよう。70条には、「内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。」とある。普通に読めば、「召集があった時は総辞職しなければならない。」と読める。これと同じように、この53条の規定でも、「要求があれば、召集を決定しなければならない」と読むのが妥当だろう。これは、直ちに決定しなければならないものであり、内閣に選択の余地や裁量の余地は想定されていないと考えられる。なぜ国会自身が召集の権限を持っていないかというと、国会の召集権限それ自体は7条2号によって天皇が有しているからである。天皇の国事行為は「内閣の助言と承認(7条)」が必要なため、内閣は、直ちに召集を決定しなければならないことを定めたと読むことが妥当であると考える。

 これを無視した場合、70条の規定も同じように、「総辞職しない」「特別の事情があるので総辞職しない」などと言い張ることもできることとなる。憲法を無視することは、政権が法の支配、立憲主義、憲法の下を逸脱し、独裁化するのである。これは国民の人権保障実現を目的としてつくられた法の精神を踏みにじるものであり、為政者の恣意的な都合が優先される人治主義である。

 


〔総選挙、特別会及び緊急集会〕
第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。


⇒ 罰則がないからといって、選挙の日から30日以内に国会を召集しないなんてことがあってはならない。


〔会議の公開と会議録〕
第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない


⇒ 罰則がないからといって、公表できる会議の記録を一般に頒布しないことがあってはならない。


〔衆議院の予算先議権及び予算の議決〕
第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。


⇒ 罰則がないからといって、予算を衆議院ではなく参議院に先に提出してはならない。


〔国務大臣の出席〕
第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない

 

⇒ 罰則がないからといって、出席を求められた場合には出席を拒んではならない。



第五章 内閣

〔内閣の組織と責任〕
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。


⇒ 罰則がないからといって、「文民」の規定を無視してはいけない。


〔国務大臣の任免〕
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。


⇒ 罰則がないからといって、過半数以上の大臣を国会議員から選んではいけない。


〔不信任決議と解散又は総辞職〕
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない

〔内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による総辞職〕
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない

 

⇒ 国会の召集後に、罰則がないからといって、総辞職を拒むようなことがあってはいけない。



第六章 司法

〔最高裁判所の規則制定権〕
第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。


⇒ 罰則がないからといって、検察官が最高裁判所の定める規則に従わないことがあってはならない。


〔対審及び判決の公開〕
第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない

 

⇒ 罰則がないからといって、裁判所が「政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件」について、非公開とすることがあってはならない。



第七章 財政

〔財政処理の要件〕
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない


⇒ 罰則がないからといって、財政を処理する権限を国会の議決に基づかないような行使の方法をしてはならない。


〔予算の作成〕
第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない

 

⇒罰則がないからと言って、予算を国会に提出しなかったり、審議のないままに議決をするようなことがあってはならない。


〔予備費〕
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない


⇒ 罰則がないからといって、予備費の支出について、事後に国会の承諾を得ないなんてことがあってはならない。


〔皇室財産及び皇室費用〕
第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない


⇒ 皇室費用について、罰則がないからといって、国会の議決を得ないままに利用されてはいけない。国民の税金である。


〔公の財産の用途制限〕
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない


⇒ 罰則がないからといって、拘禁その他の公の財産を宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出したり利用に供していいわけではない。


〔会計検査〕
第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。


⇒ 罰則がないからといって、国の収入支出の決算を国会に提出しないことがあってはならない。


〔財政状況の報告〕
第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない

 

⇒ 罰則がないからといって、内閣が国の財政状況について、国会と国民に対して報告を怠ってはならない。



第八章 地方自治



第九章 改正

〔憲法改正の発議、国民投票及び公布〕
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

 

⇒ 罰則がないからといって、国民に提案せず、国民の承認を経ないままに憲法改正が行われてはならない。

 


第十章 最高法規

 






② 内閣の裁量権の有無に関する論点

 53条【後段】の部分に、内閣の裁量が存在するか否かを検討する。

 まず、なぜ53条【後段】が「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」という権限から直接的に「国会を召集」することができる仕組みとなっておらず、「内閣」に対して「その召集を決定しなければならない」と定めて「内閣」が介在する仕組みとなっているかというと、「国会を召集すること。(7条2号)」は「天皇」の国事行為であり、その行為が行われるためには「内閣の助言と承認(7条)」を必要とするからである。


 53条の「内閣は、その召集を決定しなければならない。」の『決定』は、7条の天皇に対する「助言と承認」に繋がるのである。つまり、これは7条2号の「国会を召集すること。」という天皇の国事行為を求める「決定」ということである。

 

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    第四章 国会


〔臨時会〕

第53条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

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 内閣は、53条【前段】の「召集を決定」、または53条【後段】の「召集を決定」を行い、天皇に「助言と承認」を行う。

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    第一章 天皇


〔天皇の国事行為〕
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行ふこと。
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 7条2号の天皇の国事行為が行われ、国会が召集される。


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……(略)……新憲法でも、天皇が國會を召集することになっている(第七條)(召集とは國會の會期を始めることである)。しかし、議員のほうからも國會を召集してくれと求めることができる。衆議院でも、參議院でも、その議員の四分の一以上から國會を召集してくれと求められたならば、内閣は國會を召集することにきめて、天皇に、そう申し出なくてはならない(第五三條)。

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あたらしい憲法のはなし 宮沢俊義 (P116)

 
   【参考】「衆議院解散の効力に関する裁判所の審査権限」の判例 昭和35年6月8日

 



 

 53条を【前段】と【後段】に分けて詳しく検討する。



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53条【前段】 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。

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 ( ⇒ 内閣の裁量)

 【前段】では、臨時会を召集しようとする場合、その時期を決めるのは「内閣」の自由裁量である。いつの時点での召集とするかは「内閣」が指定することができる。


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53条【後段】 いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

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 ( ⇒ いづれかの議院の総議員の四分の一以上の者たちの裁量)


 【後段】では、臨時会を召集しようとする場合、その時期を決めるのは「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちの自由裁量である。いつの時点での召集とするかは「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが指定できるのではないかと思われる。

 しかし、召集それ自体は「天皇」の国事行為であるため、内閣による天皇への「助言と承認(7条)」が必要となる。

 そのため、53条【後段】は、内閣に召集を決定することを裁量の余地なく求めた規定であり、内閣は要求があれば直ちに召集するように決定しなければならない、あるいは、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが指定した日付で召集することを決定しなければならないと読むことが妥当であると考えられる。

 



 この53条【後段】の中に、
「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの裁量」と、「内閣の裁量」との二重の裁量が含まれるとは読むことはできないと考える。


 53条【後段】について、これはおかしい。
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 「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちの裁量
    +
 「内閣」の裁量
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 なぜならば、「内閣の裁量」については、既に53条【前段】に規定されており、召集の時期を自由に決定することができる裁量を有しているからである。



 もし53条【後段】の中に「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの要求」を内閣が一定期間留め置いたり、断ったりする権限を有している可能性を考えるにしても、それは憲法上に53条【後段】の規定が存在しなかった場合に、現実の政治の中で議院の議員からの要求にがあった際にも、53条【前段】の「内閣の裁量」による権限を不行使とすることが可能となるに留まるものであるはずである。

 憲法上に53条【後段】の規定が存在するにもかかわらず、「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの要求」があった時点で重ねて「内閣の裁量」が持ち出されることは不自然と言うべきである。


 53条【後段】は、そのような「内閣による権限の不行使」を行わせないために設けられたものと解することが自然であり、53条【後段】の「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの要求」があった時点で、直ちに召集を決定し、国政の中で唯一「内閣」に託された天皇への「助言と承認(7条)」による国事行為の実施を決定しなければならないものと言うべきである。



<理解の補強>


[262] (四)国会の召集権限と衆議院の解散権限の所在はどこに求められるか

日本国憲法の話-今だから、もういちど憲法を読み直そう-53条





①と②の評価

 ①「義務規定であることの論点」より、内閣は「しなければならない。」という義務規定を自由裁量や努力義務と解したり、もっぱら無視したりすることは、憲法秩序を不安定化させるために行ってはならず、違法なものと言うべきである。


 ②「内閣の裁量権の有無に関する論点」より、53条【後段】に、内閣の裁量の余地があるとは考えられず、これを無視したことは違法なものと言うべきである。



 さらに、高度に政治的な問題であることを理由とする「統治行為論」により裁判所が憲法判断を回避することが考えられるが、内閣の53条違反は「一見明白に違憲な行為」と解することができ、憲法判断するべきであると考えられる。また、「憲法の一義的な文言に背く」ことにも該当すると考えられ、憲法判断を行う必要は高いと考えられる。


 53条後段は、「過半数」や「3分の2以上」という基準ではなく、「4分の1以上」という基準である。この要件から見て、53条後段は少数派の意見を保障する趣旨であると解される。

 そのため、53条後段の「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求」があった際に、「どの程度の期間であれば、内閣が召集しないことも許されるのか(違憲とならないのか)」或いは「召集しないことも許される場合があるのか(違憲とならない場合があるのか)」などの具体的な事項を『法律』という多数決原理によって立法される法形式によって定めることができるとすることは相応しくない。

 なぜならば、結局この53条後段の意味するところを多数決原理によって定義することができるのであれば、多数派が法律上で多数派にとって有利な定義を行うことで、少数派が行った「4分の1以上」の要求を無視することができることとなってしまうからである。

 これでは、憲法が「4分の1以上」という基準を設けた趣旨を損ない、規定の意味を無効化する結果を生んでしまう。

 そのため、裁判所が「統治行為論」を採用し、53条後段の意味する具体的な内容を、多数決によって立法する『法律』という形式で確定するべきとの判断を示すことは適切でなく、違憲判断を行う必要があると考えられる。



<理解の補強>

 
臨時会 Wikipedia

日本国憲法第53条 Wikipedia


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【動画】憲法違反の解散権利濫用についての緊急会見(平野貞夫・小西洋之) 2017/10/13

臨時国会の召集に関する憲法53条後段の趣旨を遵守するよう求める会長声明 岡山弁護士会 2017年11月7日

憲法53条違憲国家賠償請求訴訟 2018年02月05日
臨時国会先送りは違憲 立憲議員が提訴 2018年2月26日
国会召集放置、違憲と提訴 立民議員が国に賠償請求 2018/2/26
「国会召集応じず違憲」=立憲議員、国を提訴-岡山地裁 2018/02/26

本日、岡山地方裁判所に憲法53条違憲国家賠償請求の提訴を行い、その後記者会見を行いました。  2018年02月26日
臨時国会先送り「違憲」 立民議員、53条解釈巡り提訴 2018年2月26日

【動画】立憲主義と9条② 民主化と立憲化のコントラロール 石川健治 立憲デモクラシー講座⑤ 2018/03/01

【詳しい】憲法53条違憲国家賠償請求訴訟の意義  2018.03.04

 

国会召集3カ月放置訴訟で初弁論 国争う姿勢 岡山地裁 2018.5.15

「憲法守らない総理が改憲議論、非合理的」国民・大塚氏 2018年5月17日

臨時国会先送りは違憲か 2018-05-25

違憲訴訟提起の報告(憲法53条違反) 2018.05.28

党基本情報 憲法に関する考え方 ~立憲的憲法論議~ 立憲民主党 2018年7月19日

「政府は先行する岡山訴訟において、」 Twitter 2018年9月14日
昨年臨時国会めぐり無所属参院議員が提訴 3カ月後の召集「違憲」主張 2018.9.14

「臨時国会を召集しなかったのは違憲」参議院議員が提訴 2018年9月14日

国会が内閣の監督機関になるのか? それとも下請け機関になるのか? 立憲主義の存立かけて小西洋之参院議員が国を相手取り「憲法53条違憲国家賠償等請求訴訟」を東京地裁に提訴! 2018.9.14

私が原告となっている「憲法53条違憲国家賠償請求訴訟」の第2回口頭弁論が岡山地裁で行われ、私も原告として、意見陳述を行いました。 2018年09月18日

臨時国会放置、国側「司法判断及ばぬ」 憲法違反問われた訴訟、口頭弁論 2018年9月19日

(憲法を考える)国会の召集は「統治行為」か 要求を3カ月以上放置巡り、岡山地裁で係争中 2018年11月27日

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第290回 権力分立 伊藤真 2019年10月1日

憲法53条 違憲国家賠償等 請求事件 第6回期日 口頭弁論のおしらせ  2020/1/14

ただ一点だけに限り、憲法改正をしてはどうでしょうか? 2020/06/17

憲法53条裁判が問うもの 志田陽子 2020-07-12

【かなり詳しい】内閣による臨時国会不召集の違憲性と国家賠償法 髙作正博 2020-07-20

東京地裁での学者証言を朝日新聞が特集報道 2020-11-24

自民党の改憲案は「法治主義」「権力分立」に反する件 2021/01/09

【動画】2021年3月17日法務委員会【憲法53条訴訟】 2021/03/18

【動画】臨時国会が開かれない!憲法53条違反の数々。違憲判決はなぜ出ない?〜檻の中のライオン憲法講座より 2021/08/17

【動画】「議会を召集するかしないかという部分に、体制の絶対主義・専制主義の性質が表れる」 憲法学者・石川健治 2021/09/09

特別講演「コロナと憲法53条・臨時国会の意味を問い直す」志田陽子 2021-11-27

まっとうな憲法報道に向けて 日本の立憲主義の課題は何か 2022年05月02日





憲法保障による是正方法


 憲法は国民が国(統治権を行使する者)に求めた規範である。この規範を内閣が無視しているということは、内閣は国民の求めに背いたということになる。

 このことは、「野党の要求に応えない」というような憲法秩序の下でなされる国会での政治的な問題にとどまるものではなく、国民の定めた憲法という最高の法に背いたということを意味する。


 このような憲法無視が横行した場合、裁判所が違憲審査で是正することができるのかどうかも真剣に考えていかなければならない。
 憲法の理念を守ろうとする憲法保障の観点から、裁判所が「法律上の争訟(①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②法律の適用によって終局的に解決できるもの)」以外の抽象的な審査によって国会や内閣の憲法無視の横行を是正することができるのかも考えていく必要がある。(処分の不作為)
 また、違憲審査を行った場合に、どのように是正するのか、その有効性についても判断をしなくてはならないはずである。国家賠償法によって国に損害賠償を請求することになるのだろうか。しかし、国は誰に対して金銭賠償をするのだろうか。司法府による違憲審査によって違憲判決が出された場合には、内閣総辞職や国会の解散がなされるべきなのだろうか。刑法的な罰則に値する規定を設け、憲法保障機能を強化できるものなのだろうか。



 憲法保障の手段を考える。



 

〇 〔宣言的保障〕の部分は、『事前的保障手段』であり、法の根幹に関わる非常に重要な意味を持っているが、法への信頼を保とうとする者の心構えを刺激することしかできず、今回の件を是正する力にはならない。


〇 〔制度的保障〕について、『事前的保障手段』の「権力分立制」は、三権分立は保たれているが、今回の件を直接是正するものではない。『事後的保障手段』の「違憲審査制」は、今回の件を実効的に是正する唯一の方法であると考えられる。

〇 〔手続的保障〕の「硬性憲法」は、『事前的保障手段』であり、今回の件を直接是正する力とはならない。将来同じような事態が起きることを防ぐために条文改正を検討することは可能である。ただ、現在の53条でも十分に明確であると考えられるが、現在よりもさらに明確な内容の規定へと改正したとしても、もともと法を無視した際に、その行為を是正する手続きが定められていなければ、その改正された新53条も実効性をもたないのである。よって、最終的には〔制度的保障〕の「違憲審査制(81条)」に頼らざるを得ないのである。


〇 上記に挙げた憲法典に定めのある【憲法内保障】ではなく、【超法規的憲法保障】については、「抵抗権」と「国家緊急権」がある。


 内閣の53条を無視した行為が、「国家緊急権」として憲法上の根拠なく、現実の必要性から行われた超法規的措置である可能性は検討の対象となる。しかし、憲法秩序を保障するための目的で行使されたやむにやまれぬ行為でなければ、違憲・違法性を免れることはできない。また、「国家緊急権」は憲法上の根拠がないのであるから、その行為の違法性は事後的に裁判所で法的判断が為される事柄となる。よって、〔制度的憲法保障〕の「違憲審査制(81条)」に行き着くこととなる。


 「抵抗権」については、人権が憲法以前に人に本来的に備わっているとする自然権思想を基に導かれる。ただ、この趣旨は直接国家を破壊したり、暴動によって制圧することに繋がるわけではない。自然権思想を条文に組み込んでいると考えられる12条の趣旨より、国民の「不断の努力」によって憲法保障を実現していく意志を持つことが求められると考えられる。ただ、これは現段階では〔宣言的保障〕に行き着くもので、法整備の実現などに向かって努力していくことを促されていると見るべきだろう。





憲法訴訟の理解


 下記は、今回の53条の件を直接取り扱うものではないが、憲法訴訟について理解を深めることができると思われる。いくつか資料を集めていこう。


青井未帆
憲法訴訟・憲法判断について考える 信州大学リポジトリ
【動画】青井未帆「裁判所の果たす役割」 2017/03/10

憲法判断をめぐる司法権の役割について : 安保法制違憲国賠訴訟を題材に 青井未帆 学習院大学リポジトリ


古賀茂明
「集団的自衛権違憲判決を阻止するための改憲を報じないメディア」 古賀茂明 2018.2.5


高橋和之
【書籍】体系 憲法訴訟 高橋和之 2017/04/27
【立ち読み版】体系 憲法訴訟 高橋和之 2017/04/27 PDF


司法消極主義の弊害について
自民案、立憲主義に逆行 核心評論「憲法改正」 2018年5月3日



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――統治行為と言えば、野党が憲法53条後段に基づき臨時国会召集を求めたのに安倍内閣が3カ月以上応じなかったことが憲法違反にあたるのではないかと訴訟が起きていますが、国側は臨時国会の召集は統治行為にあたると主張しています。

長谷部 あきれた論法です。準備に必要な合理的期間を超えて内閣が召集時期を引き延ばすことは憲法に違反します。
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「打倒 芦部憲法学」弟子の長谷部恭男早大教授が語る 2020年03月15日

 





法秩序の実現

 このようなことが横行し、法秩序への信頼が脅かされてしまったりすることがないように、日本国憲法制定時に「憲法を正しく運用」することが大切であることが発せられている。

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日本国憲法公布記念式典の勅語(昭和21年11月3日)


 本日、日本国憲法を公布せしめた。
 この憲法は、帝国憲法を全面的に改正したものであつて、国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によつて確定されたのである。即ち、日本国民は、みずから進んで戦争を放棄し、全世界に、正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し、常に基本的人権を尊重し、民主主義に基いて国政を運営することを、ここに、明らかに定めたのである。
 朕は、国民と共に、全力をあげ、相携へて、この憲法を正しく運用し、節度と責任とを重んじ、自由と平和とを愛する文化国家を建設するやうに努めたいと思ふ。

 朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第73条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
 御名 御璽
    昭和21年11月3日
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日本国憲法 参議院

 法秩序のへの信頼を失わせるような形で法を利用することは、そもそも国家設立の意志に反する。これは、民法で表現するならば、1条の「信義誠実の原則」に違反するような行為である。

 ただ、憲法の効力基盤は、民法のように憲法の効力を基にして立法された法律の条文上にあるわけではない。憲法の効力基盤は、国民の支持や法秩序への信頼によってつくられているものである。そのため、それを破壊するような法運用を行う者に対しては、三権分立の上にある最高権力である国民の「不断の努力」によって是正していく必要がある。




那覇地方裁判所


=新聞掲載情報=『論壇 臨時国会召集無視に初判決』『裁判所は憲法違反見逃すな』 2020.06.05

━ ニュース ━
国会召集「内閣に法的義務」 憲法53条めぐり初判決 2020年6月10日

   志田陽子 コメント
原告「一歩進んだ結論」 請求棄却も意義強調―憲法53条訴訟 2020年06月10日

   志田陽子 コメント
臨時国会不召集、原告側敗訴 「内閣は損賠義務負わず」―那覇地裁 2020年06月10日

臨時国会召集「憲法上の義務」認める 2020.6.10

臨時国会召集「憲法上の義務」認める 2020.06.10

野党議員らの請求棄却、那覇地裁 2020/6/10

安倍内閣の国会召集「放置」訴訟 那覇地裁が野党議員側の請求棄却 憲法53条初判断 2020年6月10日

臨時国会“不招集”訴訟 原告の請求棄却 2020/06/10
【動画】RBC NEWS「臨時国会“不招集”訴訟 原告の請求棄却」 2020/06/10
<社説>国会不召集訴訟判決 なぜ当否の判断示さない 2020年6月11日

(社説)国会召集訴訟 物足りなさと収穫と 2020年6月11日

国会召集の要求、無視は違憲のそしり免れず 判決が警告 2020年6月11日

<解説>憲法53条の意義、明確に 少数意見尊重、権力行使チェック 2020年6月11日

憲法53条国家賠償請求 国会召集の法的義務は内閣 2020年6月11日

国会召集「憲法上の義務」 17年、安倍内閣3カ月応じず 那覇地裁判決 2020年6月11日

臨時国会召集要求を無視し、臨時国会を速やかに招集しないことは違憲である 2020-06-11
社説[国会不召集訴訟]なぜ違憲に踏み込まぬ 2020年6月12日
国会召集せず 「憲法上の義務」なのに 2020年6月12日

臨時国会召集は「憲法上の義務」 那覇地裁判決を受け、野党が会期延長要求の構え 2020年6月12日

臨時国会の召集 法的義務は無視できない 2020年6月13日
国会召集めぐる判決 憲法上の義務明言は重い 2020年6月14日

臨時会召集義務53条違反を問う判決+砂川事件調査官メモ発見――安倍首相の国会嫌い 2020年6月15日

[木村草太の憲法の新手](130)臨時国会召集権で判決 「司法審査の対象」に意義 公共的運営へ改善策を 2020年6月21日

那覇地裁、臨時国会召集めぐり初判断 「招集は憲法上の義務」 2020年7月15日

 



たたかい日記:憲法53条訴訟 那覇地裁に続け
 2020/6/12

「今回の53条訴訟の判決文を公開してくださっています。」 Twitter

憲法53条違憲国賠訴訟判決(那覇地裁) 2020.06.10
【判決文】憲法53条違憲国家賠償請求事件判決 令和2年6月10日 PDF

裁判例


【判決文】憲法53条違憲国家賠償請求事件 那覇地方裁判所 令和2年6月10日 (PDF  -第3 当裁判所の判断-



(上記の判決文のPDFから抜粋)
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1 争点⑴について

具体的な権利義務ないし法律関係に関する争訟については,裁判所による司法審査が及ぶのが原則である(憲法76条1項,裁判所法3条1項)。

 しかしながら,「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為」については,法律上の争訟として,これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても,こうした国家行為は裁判所の審査権の外にあり,その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府,国会等の政治部門の判断に委され,最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解される(昭和35年最判)。そこで,以下,憲法53条後段の規定に基づく内閣による臨時会の召集決定が,昭和35年最判が指摘するところの「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為」又はそれに準じるものとして司法審査の対象外といえるかを検討する。

 内閣は,国会の臨時会の召集を決定する権限があり(憲法53条前段),議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,臨時会の召集を決定しなければならない(同条後段)。憲法53条前段の規定に基づく内閣による臨時会の召集は,それ自体,内閣が時々刻々動く政治状況・政治情勢,審議すべき事項等を勘案した上で,召集の可否及び召集時期を定めてこれを行うものであり,高度の政治性を有するものであることは否定できない。しかしながら,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集については,議院の総議員の4分の1以上の要求がある場合において,内閣が憲法上の要請に基づき行う必要があるものであって,これは単なる政治的義務と解されるものではなく,憲法上明文をもって規定された法的義務と考えられる。また,憲法53条後段は,議院の総議員の4分の1以上の要求があった場合に内閣に臨時会の召集を義務付けるものの,その召集時期については何ら定めを置いていないが,召集の要求がされてから合理的期間内に臨時会を召集する義務があると解される(被告もこのこと自体は否定しないものと解される(被告第2準備書面12頁,被告第4準備書面22~23頁参照)。)

 そして,憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求がされた場合に,内閣が臨時会の召集を合理的期間内に行ったかどうかについては,合理的期間の解釈問題であって,法律問題といえるのであるから,法律上の争訟として,裁判所がこれを判断することが可能な事柄であるといえる。

 ところで,憲法53条後段に基づく適法な召集要求があった場合,内閣としては,臨時会の召集を行う憲法上の義務を負うものであるところ,例えば,通常国会の開催時期が近接しているとか,内閣が憲法53条前段に基づき独自に臨時会を開催するなどの特段の事情がない限り,同条後段に基づく臨時会を召集する義務があるのであって,上記のような特段の事情の有無を考慮する以外に,臨時会を召集するかしないかについて,内閣に認められる裁量の余地は極めて乏しいものと考えられる。また,臨時会の召集決定を行うべき時期についてみても,内閣は,憲法53条後段に基づく適法な召集要求があり,臨時会の召集が憲法上一義的に義務付けられている以上,仮に被告が主張するとおり,臨時会の召集時期の決定について政治的要素を考慮するなどの裁量を残す余地があるとしても,召集をしないという判断が原則としてできない以上は,召集時期に関する裁量も必ずしも大きいものとは考えられない。そうすると,内閣の臨時会の召集が高度に政治性の高いものであるとしても,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定については,憲法上の規律が比較的明確であり,仮に内閣の裁量が認められるとしても限定的なものといえる。

 これに対し,衆議院の解散については,これにより衆議院議員の議員としての資格を失わせた上,新たな衆議院議員選挙が行われて衆議院の構成が変更され,新たな特別会が開催されるなど(憲法54条1項),国政に与える影響が極めて重大である上,内閣による衆議院の解散権には憲法上の制約もないなど,国政に与える影響力という面からも,憲法上の規律の面からも,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定とは大きく異なるものといえる。

 そして,国会による立法行為(立法不作為も含む)の違法性については,司法審査の対象となるものと解されており(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁),さらに,立法の前提である内閣の法案提出行為の違法性についても,裁判所が審理判断を行うことができることが前提とされていること(最高裁昭和62年6月26日第一小法廷判決・集民151号147頁参照)をも考慮すれば,憲法53条後段に基づく臨時会の召集決定は,それ自体,裁判所の審査権の範囲外であり,その判断の適否を最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解する根拠に乏しいものといわざるを得ない。

 したがって,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定は,昭和35年最判にいう「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為」又はそれに準じるものとはいえず,司法審査の対象外であるということはできない。

 

 ⑵ 被告は,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定が司法審査の対象となると,憲法が定める議院内閣制(憲法7条3号,66条3項,68条1項,69条,72条等)の下における国会と内閣との均衡・抑制関係ないし協働関係を損なうおそれがあり,したがって,その適否は最終的には国民の政治判断に委ねられるべきであるなどと主張する。

 しかし,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定は,「議院の総議員の4分の1以上の要求」という同条の規定する要件を満たした場合には,内閣が臨時会の召集決定を行う憲法上の義務を負うものであり,仮に内閣がこの義務を履行しない場合(不当に召集が遅延した場合を含む。)には,憲法53条後段の趣旨すなわち少数派の国会議員による国会の召集要求の途を開け,少数派の国会議員の意見を国会に反映させるという趣旨が没却されるおそれがあるのであって,そのような事態が生じる場合には,議院内閣制の下における国会と内閣との均衡・抑制関係ないし協働関係が損なわれるおそれがあるというべきであるから,司法審査の対象とする必要性が高いというべきである。

 また,憲法53条後段に基づく臨時会の召集決定が政治性のある行為であることは否定できないものの,そのような行為であるとしても,憲法上の適否は判断が可能であるし,昭和35年最判が司法審査の対象外であるとした衆議院の解散と同程度ないしそれ以上の高度の政治性のある行為であるとまでは解し難い。確かに内閣による臨時会の召集決定を司法審査の対象とし,違憲判断をした場合には,国政に与える事実上の影響が少なくないことは否定できないものの(原告らは,仮に本件において違憲判断がされた場合でも,被告に慰謝料の支払義務が発生するにすぎないなどと主張するが,現実の影響を考慮すると,同主張は採用することができない。),前記のとおり,内閣が憲法53条後段に違反して臨時会を召集しない場合には,議院内閣制の下における国会と内閣との均衡・抑制関係ないし協働関係が損なわれる可能性があると考えられる以上,これを司法審査の対象から外すことが相当であるとはいえない。これに反する被告の主張は採用することができない。

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 最後に「これを司法審査の対象から外すことが相当であるとはいえない。」としているが、ではどの段階でどのように司法審査を行うことができるのだろうか。国家賠償法でない訴訟方式によって、「司法審査」を行うことができるのだろうか。


 判決文のPDFの中の「2 争点⑵について」に記載されている国家賠償法の問題について、憲法17条との関係も考えておく必要がある。この事例は、「公務員の不法行為」であると考えられるが、国家賠償法によって賠償を求めることは本当にできないのだろうか。


憲法

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第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

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 国家賠償請求以外の訴訟方式を検討するとどうなるだろうか。

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もう一つは、国家賠償請求以外の方策の追及である。この訴訟の原告が、抗告訴訟(不作為の違法確認や義務付け等)ではなく国家賠償請求を選択したのは、「処分性」論争を避けた結果であると考えられる。抗告訴訟でもなく、国家賠償でもないとすれば、「実質的当事者訴訟」が考えられる。国を被告としての「違法確認訴訟」ができなければ、せっかくの争点(1)の判断は画餅に帰すことになる。

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「憲法53条違憲国家賠償訴訟」那覇地裁判決に見る、安倍内閣の憲法無視の姿勢。 2020年6月15日

「憲法53条違憲国家賠償訴訟」那覇地裁判決に見る、安倍内閣の憲法無視の姿勢。 2020年6月16日

 下記の判例の意見で、衆議院の「解散」が憲法81条にいう「処分」に該当すると示している部分がある。これを用いれば行政法上の「処分性」に該当しないのだろうか。


苫米地事件(最大判昭和35.6.8)

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けだし、解散は憲法八一条にいう「処分」であつて、正に裁判所の違憲審査権の対象であるからである。

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憲法
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第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

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行政事件訴訟法

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   第一章 総則


(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
   第二章 抗告訴訟
      第一節 取消訴訟

(裁量処分の取消し)
第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
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 話を戻すと,臨時会の召集につき司法権による救済を図る(事実上,上記「義務づけ」の訴訟を提起し,請求認容判決を得ることなどによって臨時会の召集を間接的に強制しようとする)ことに関して,訴訟要件の点など法的救済のためのハードルは低くはないだろう。

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第106回 憲法53条に基づく臨時会の召集と「憲法適合的世論」 2020/11




【動画】憲法53条の不備を補完するため国会法改正案と自動車関連税制の減税法案を法制局に相談 2020年06月12日


 53条後段は「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」という少数派の要求によって臨時会の召集を決定しなければならないのであるが、上記動画のように法律を作ることを検討した場合、その具体的な期間などの基準を多数決原理によって決定する国会法などの「法律」という法形式で定めることが妥当であるかは検討する必要がある。
 この場合、裁判所が合理的な期間であると考える法律は合憲であるが、裁判所が合理的な期間でないと考える場合には違憲となると判断されるのだろうか。

 ただ、一度定められた法律上の規定に従っているのであれば、その法律上の規定がもともと合理的な期間でないような場合にも、法律の範囲内であることを理由として裁判所が違法性を判断しなかったり、訴訟を受け付けなくなったりと、なかなか境界線を引くことが難しい問題に行き着くことが考えられる。

 どのようにすれば憲法保障を実現できるのか、相当に検討する必要がありそうである。

 

「内閣への権力集中」が問題なのではなく、内閣を牽制できない「立法府の弱」さが問題 2020.6.25

憲法53条に基づく臨時会召集権限の行使と国家賠償(那覇地裁判決) 宮村教平 2020年8月28日 PDF

 

憲法53条・臨時国会召集裁判の意味 議会制民主主義を支えるもの 2021年01月04日

 (参考:『法と民主主義 』7月号に論説掲載 2020-07-20)

 (参考:第158回国会 参議院 外交防衛委員会 閉会後第1号 平成15年12月16日

憲法53条裁判を考える――「知る権利」と民主主義の質 2021/1/6

 

憲法53条の国会召集をめぐる那覇地裁判決に関する一考察 伊藤純子 2021-01 茨城大学リポジトリ




東京地方裁判所


野党議員「国会否定する行為」 不召集違憲訴訟―東京地裁
 2020年11月17日

臨時国会応じなかった安倍内閣へ怒り「国民を愚弄」 2020年11月17日

(憲法を考える)開かぬ臨時国会、民主主義の危機 要求放置した安倍内閣めぐる訴訟、学者ら初めて直接証言 2020年11月24日

【動画】伊藤塾塾長 伊藤真 特別講義「行政書士と憲法」 2021/2/23

元法制局長官の一問一答 国会不召集訴訟 2021年03月21日

元法制局長官「違憲」と証言 安倍内閣の国会召集―24日に判決・東京地裁 2021年03月21日

国会召集、合理的期間とは? 原告「20日以内」―政府は明示せず・53条訴訟 2021年03月21日

那覇地裁は憲法判断せず 召集時期、政府主導続く 2021年03月21日


【動画】憲法53条訴訟判決~受講生・受験生の皆さんへ第59弾 2021年3月24日

臨時国会召集の訴え、請求退ける 東京地裁、違憲性の判断はせず 2021/3/24

国会不召集、憲法判断せず 野党議員の請求棄却―東京地裁 2021年03月24日

臨時国会不召集、憲法判断せず 東京地裁、訴え退ける 2021年3月24日

「国会召集せず違憲」訴訟 憲法判断せず訴え退ける 東京地裁 2021年3月24日

 国会召集、憲法判断せず 東京地裁、「内閣に義務」との訴え却下 2021年3月25日

<視点>内閣への「歯止め」、司法の役割では 国会召集義務、憲法判断せず 2021年3月25日

<社説>国会召集訴訟 憲法上の義務のはずが 2021年3月25日

<寄稿>憲法53条訴訟を考える 裁判所は無用の遠慮をやめよう 志田陽子(武蔵野美術大学教授) 2021年4月2日


【判決文】憲法53条違憲国家賠償等請求事件 東京地方裁判所 令和3年3月24日 (PDF

【判決文】憲法53条違憲国家賠償等請求事件 東京地方裁判所 令和3年3月24日


 

岡山地方裁判所


53条違憲訴訟 証人請求認められず 次回で結審へ 地裁 /岡山
 2020年10月28日

53条違憲訴訟が結審 「責任政治の原則毀損」 地裁口頭弁論 /岡山 2021/1/27

 

憲法53条岡山訴訟 請求棄却も違憲評価の余地 原告側は即日控訴【岡山】 2021年4月13日

憲法53条岡山訴訟 請求棄却も違憲評価の余地 原告側は即日控訴【岡山】 2021/4/13

臨時国会召集の要求に応じないのは憲法違反との訴えを棄却「違憲と評価される余地はある」とも 岡山地裁 2021/4/13

国会召集訴訟、請求退ける 2021年4月13日

国会召集訴訟、請求退ける 岡山地裁、安倍内閣時 2021/4/13

国会召集訴訟、請求退ける 岡山地裁、安倍内閣時 2021年4月13日

国会召集訴訟、原告の請求棄却 安倍内閣時、憲法判断はせず―岡山地裁 2021年04月13日

国会召集先送り訴訟 賠償請求棄却 岡山地裁、違憲性判断示さず 2021年04月13日

臨時国会の召集「憲法上の義務」 岡山地裁、請求は棄却 2021年4月13日

臨時国会召集めぐる訴訟 3地裁、いずれも憲法判断せず 2021/4/13

臨時国会召集に安倍内閣応じず 違憲の訴え退ける 岡山地裁 2021年4月13日

臨時国会召集先送り訴訟 国会議員の請求棄却 岡山地裁判決 2021/4/13

国会召集訴訟 「安倍内閣、賠償義務なし」 地裁、原告側の請求棄却 2021/4/14

(社説)国会召集訴訟 内閣の無法 放置するな 2021年4月15日

 

【判決文】憲法53条違憲国家賠償請求事件 岡山地方裁判所  令和3年4月13日 (PDF

 

(上記の判決文のPDFから抜粋)

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1 内閣による臨時会の召集の決定が憲法53条後段に違反するかの法的判断について,裁判所の司法審査権が及ばないといえるか(争点1)について


⑴  司法権とは,具体的な争訟について法を適用し宣言することによってこれを解決する国家作用であり,全て司法権は,最高裁判所及び下級裁判所に属する(憲法76条1項)。裁判所は,憲法に特別の定めがある場合を除き,一切の「法律上の争訟」を裁判する権限を有し(裁判所法3条1項),一切の法律等に関する違憲審査権を有する(憲法81条)。したがって,具体的な権利義務ないし法律関係に関する争訟については,裁判所による司法審査が及ぶのが原則である(憲法76条1項,裁判所法3条1項)。

 もっとも,直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為については,法律上の争訟として,これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても,三権分立の原理に由来して,当該国家行為の高度の政治性,裁判所の司法機関としての本来の役割,裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ,司法権の憲法上の本質に内在する制約として,一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは,司裁判所の審査権の外にあり,その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府,国会等の政治部門の判断に委され,最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解される(最高裁判所昭和34年12月16日大法廷判決・民集13巻13号3225頁,昭和35年最判)。

 以下,憲法53条後段の規定に基づく内閣による臨時会の召集決定が,このような直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為として,司法審査の対象外といえるかにつき,検討する。


⑵  内閣は,国会の臨時会の召集を決定することができ(憲法53条前段),議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,臨時会の召集を決定しなければならないとされる(同条後段)。

 このうち,憲法53条前段に基づく内閣による臨時会の召集は,内閣が時々刻々動く政治情勢や審議すべき事項等を勘案した上で,自らの政治的判断に基づき,召集の必要性や召集時期を検討,決定して行うものであり,一定の高度の政治性を有するものと考えられる。

 他方で,憲法53条後段に基づく臨時会の召集は,同条前段とは異なり,三権分立制の下,国会による自律的な集会を保障するとともに,いずれかの議院の総議員の4分の1という少数派の国会議員に国会の召集要求の途を開け,少数派の意見を国会に反映させるという趣旨に基づき,憲法上の要請として,議院の総議員の4分の1以上の要求がある場合に臨時会の召集を決定しなければならない旨を定めているものであって,これは単なる政治的義務ではなく,憲法上明文をもって規定された法的義務であると解される。また,憲法53条後段は,その召集時期について明文上の定めを置いていないものの,上記のような趣旨からすれば,内閣は,同条後段に基づく臨時会の召集要求がされた後,召集手続等を行うために通例必要な合理的期間内に臨時会を召集する法的義務があるものと考えられる。(甲A2,5,27から36まで等)

 そうすると,内閣による憲法53条後段に基づく臨時会の召集決定の判断には,召集時期に係る判断も含め,高度な政治的判断が介在するものではないから,三権分立の原理に由来し,司法権に内在する制約として,その判断を政治部門の判断に委され,最終的には国民の政治判断に委ねるべき事項とは解されない。したがって,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定は,直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為として,司法審査の対象外であるということはできない。


⑶  これに対し,被告は,憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求は,一定数以上の国会議員において国会が召集されるべき必要があるとの政治的判断をした場合にされるものであるから,高度に政治性を有する行為であるところ,かかる召集要求を契機として行われる内閣による臨時会の召集の決定も,召集時期に係る判断も含め,おのずから高度に政治性を有する行為というべきである旨主張する。

 国会議員による憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求自体は,国会議員らがその政治的目標を実現するため,政治的判断に基づいて行うものであるから,政治性のある行為と考えられるものの,そのことから直ちに,当該要求に対する内閣の臨時会の召集決定も政治的判断に基づいて行われるものであるということはできず,前記⑵で説示したとおり,内閣は,同条後段に基づく臨時会の召集要求がされた場合,召集手続等を行うために通例必要な合理的期間内に,臨時会を召集する法的義務があるものと考えられ,召集決定の判断には,召集時期に係る判断も含め,高度な政治的判断が介在するものとはいえない。したがって,被告の主張は採用できない。


⑷  また,被告は,内閣による臨時会の召集の決定は,政治部門である内閣と国会との関係に係る意思決定であって,内閣と国会との均衡・抑制関係及び協働関係の基礎となる国会の召集に係る内閣の意思決定の適否や当不当に裁判所の司法審査権が及ぶとなれば,裁判所が国会の活動の前提となる内閣の意思決定を制約することになりかねず,憲法が定める内閣と国会との均衡・抑制関係及び協働関係が損なわれることになりかねないものであるから,その適否や当不当の評価については,国民に対して政治的責任を負う内閣及び国会に任されており,最終的には国民の選挙を通じた政治判断に委ねられるべきものであって,三権分立の原理に由来する司法権の憲法上の本質に内在する制約として,裁判所の司法審査権は及ばないと解すべきである旨主張する。

 しかし,前記⑵で説示したとおり,内閣は,国会議員らから憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集があった場合,召集手続等を行うために通例必要な合理的期間内に,臨時会の召集を決定する法的義務を負うものと考えられ,同条後段に基づく臨時会の召集決定は,同条後段により義務付けられた事務的行為に過ぎない。そうすると,内閣は,このような召集決定自体の有無や時期等を,国会との均衡・抑制関係及び協働関係のために調整できるものではないから,当該召集決定の適否や当不当に裁判所の司法審査権を及ぼしたとしても,憲法が定める内閣と国会との均衡・抑制関係及び協働関係に影響するものとは考えがたい。したがって,三権分立の原理に由来して司法権に内在する制約として裁判所の司法審査権が及ばないものということはできず,被告の主張は採用できない。


⑸  以上によれば,憲法53条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定は,直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為として,司法審査の対象外であるということはできない。

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広島高等裁判所 岡山支部


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〈社説〉国会の召集義務 内閣はもう軽視できない 2022/01/29

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憲法53条訴訟、憲法学者と考える 議会閉会の英首相に英最高裁は? 2022-02-06)

 

【判決文】憲法53条違憲国家賠償請求控訴事件  広島高等裁判所  岡山支部 令和4年1月27日 (PDF

 

(上記の判決文のPDFから抜粋)

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 (3) 原判決23頁7行目末尾に改行の上,次のとおり加える。

「 また,憲法は,天皇が内閣の助言と承認によって国会を召集することとしているから(憲法7条2号),国会の活動を開始するためには,期日と場所を定めて国会議員を集めるという,天皇の国事行為である召集が必要であり,これなしに国会議員が自主的に集合し,政治活動を行うことは何ら妨げられないが,これを国会の活動であるということはできない。国会が国会として活動する会期を開始するためには召集を要するのであり,憲法上定められている定期の常会(憲法52条),衆議院解散後の特別会(憲法54条1項)及び臨時の必要による臨時会(憲法53条)のうち,前2者は国会自身をして必要に応じた自律的な会期を開始するに足りる規定とはいえない。そこで,憲法53条は,まず,前段において「内閣は,国会の臨時会の召集を決定することができる」と規定し,天皇の国事行為に先行する臨時会の召集決定権を内閣総理大臣及びその他の国務大臣によって組織される内閣(憲法66条1項)に帰属させ,内閣による臨時会召集決定によって他律的に会期を開始させることを定めつつ,次いで,後段において「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,内閣は,その召集を決定しなければならない」と規定し,実質的に国会をして自ら会期を開始して活動できるようにしたものと解される。もっとも,国会自身が自律的に会期を開始すべき行為をしようといっても,当然ながら会期前のことであり,その行為自体は形式的には国会の活動といえないことになる。そこで,憲法53条後段は,「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」という一部少数の国会議員らによる意思形成の形式(国会法3条参照)を用いることによって,実質的に国会をして自律的に会期を開始させることができるようにしたものであり,同条後段はそこに意味があると解される。すなわち,国会法3条は「いずれかの議院の総議員の4分の1以上の議員が連名で,議長を経由して内閣に要求書を提出しなければならない」と定めており,国会外で署名を集め,それがいずれかの議院の総議員の4分の1以上集積したときに,内閣に対して直接要求するという形式を採用していないのであり,議長を経由することにより,あくまで,実質的に国会の意思形成の形式を用いているのであって,国会と内閣との間の関係であることを前提としているといえる。そうすると,憲法53条後段は,実質的に国会をして必要に応じて活動しうる権限を与えた趣旨の規定というべきであり,かつ,活動を開始する限りの国会の意思形成としては過半数でなく「4分の1以上」で足りるとすることによって,少数派の尊重をも図ったといえる。かくして,憲法は,臨時会について,飽くまで内閣に対し,自ら召集を決定するほか(同条前段),「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」に応じて召集を決定すべきものと義務付け(同条後段,もって内閣と国会の機関相互の権限分配を定めたといえる。このことは,前記のとおり憲法が同条を常会(憲法52条)及び特別会(憲法54条1項)と並べて規定していることからもうかがえるところである。すなわち,憲法は,常会,特別会,臨時会を問わず,天皇が内閣の助言と承認によって国会を召集するとした上,憲法53条をもって実質的には国会が他律的のみならず自律的にも活動を開始できる旨の機関を規律する規定であることを明らかにすべく憲法52条及び憲法54条と並べて配置するとともに,常会及び特別会について召集の決定権限者を明らかに規定しなかったのとは異なり,内閣の決定権限をあえて明記したと解される憲法53条が,議員を主語とせずに内閣を主語とした上,内閣をして「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」によって決定すべきものと義務付ける形式で規定した点は,内閣と国会という機関相互の権限分配を規定したことを表現する趣旨と解される。)。同条の趣旨が以上のとおりだとすれば,会期の他律的な開始においては召集決定権を合議体としての内閣に帰属させる一方,会期を自律的に開始させる召集要求権については,そもそも国会が本来的に合議体の機関であることを併せ考慮すればなおさら,各個別の国会議員の権限として分散的に帰属させることに実質的な意味があるとみるのは不自然であり,それは形式にすぎないとともに少数派を尊重したものであって,同条前段後段とも内閣と国会という機関相互の権限分配を規定したものと統一的に理解すべきである。このように解してこそ,同条前段による臨時会も同条後段による臨時会も,国会の会期ないし活動として何らの異同もないことを自然に理解できるといえる。

 したがって,内閣は,「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」によって成立した国会の臨時会召集要求という権限行使に応じないときには,国会による自律的な活動の開始を妨げたものとして,国会ひいては全国民(憲法43条1項参照)に対して政治的責任を免れないといわざるを得ない。しかしながら,この召集要求とこれに対する懈怠ないし拒絶は,実質的には国会と内閣という機関相互間における権限の行使に関する紛争であるから,本来的には国民の権利義務ないし法律関係には直接関係しないというべきである(なお,裁判所が機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争を審判するには,その旨の法律の定めを要する(裁判所法3条1項行政事件訴訟法6条42条参照)。)。」

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 「政治的責任を免れないといわざるを得ない。」と記載されているが、「政治的責任」だけなのだろうか。「法的責任」についてはどうなのだろうか。

 岡山地方裁判所は「法的義務」という言葉も使っているが、この点はどういう関係なのだろうか。





東京高等裁判所

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国会召集訴訟、棄却 東京高裁も憲法判断せず 2022年2月22日

 

【判決文】憲法53条違憲国家賠償等請求控訴事件  東京高等裁判所  令和4年2月21日 (PDF





福岡高等裁判所 那覇支部

 

憲法53条沖縄訴訟 きょう二審判決 国会召集に応じなかった内閣対応、憲法判断が焦点 2022年3月17日

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社説[国会召集訴訟] 憲法上の義務は明らか 2022年3月18日

<社説>国会召集高裁判決 最高裁は違憲に踏み込め 2022年3月19日


【動画】進む裁判と司法の良心~受講生・受験生の皆さんへ第119弾 2022年3月18日

 

【判決文】憲法53条違憲国家賠償請求控訴事件 福岡高等裁判所 那覇支部 令和4年3月17日 (PDF

 

 



裁判全般

憲法53条が死ぬとき 臨時国会召集義務をないがしろにした内閣に、司法は対峙すべきだ 2021年04月20日

  (「長谷部恭男教授:」 Twitter)

元最高裁判事、国会召集先送りは「違憲」 53条訴訟で意見書提出 2021年9月21日

元最高裁判事「違憲」明言 国会不召集訴訟控訴審 2021年09月21日

憲法53条後段による臨時会招集に,直ちに応じなかった政府の法的責任 : 国家賠償請求訴訟の可能性 石村修 2021-12-15

憲法53条「死文化」の危機、3つの高裁判決に注目 2022年1月26日
【かなり分析的である】統治機構の機能維持と司法審査 : 憲法53条違憲国賠訴訟など近時の事件を中心に 神橋一彦 2022-03-31

憲法訴訟に取り組む想い 伊藤真 2022年4月 

【情報量が多い】早稲田大学大学院法務研究科研究紀要に論文掲載 「憲法53条・臨時会不召集裁判――議会制民主主義を支えるもの」 2022-08-30 

第16号 (『憲法 53 条・臨時会不召集裁判 ―議会制民主主義を支えるもの― 志田 陽子』のPDF)

「臨時国会召集しないのは違憲」「司法を軽視するな」弁護士、学者が岸田内閣に説明求める 2022年08月31日

「閉会中審査で逃げるのは自民の黄金パターンだ」臨時国会召集めぐる違憲訴訟、事務局長が語る問題点 2022年09月08日 

【音声】望月衣塑子「閉会中審査」 2022-09-28

2023年 新年にあたって ~今こそ果たされるべき司法の責務~ 伊藤真 2023.01.09

【動画】安保法制違憲訴訟全国の状況 XXIV ~「今こそ「統治行為論」を消去せよ!」豊 秀一(朝日新聞編集委員) 2023/09/30

 

国会召集98日間先送り違憲訴訟の会 facebook

 





最高裁判所


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憲法53条違憲国家賠償等請求事件外2件について 最高裁判所広報課 PDF


【判決文】憲法53条違憲国家賠償等請求事件 最高裁判所第三小法廷 令和5年9月12日 (PDF

 

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大きな成果をあげた公法上の当事者訴訟については、東京弁護団の裁判にのみついていて、岡山と沖縄は国賠のみになっています(最高裁のウェブサイトに載っているのは東京分の判決)。

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小口 幸人 facebook 2023/09/15

最高裁判所令和5年9月12日憲法53条違憲国賠訴訟判決(PDF) (福岡高裁那覇支部からのもの/南山法律事務所


内閣官房長官記者会見 令和5年9月12日(火)午後


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沖縄選出議員ら敗訴確定 国会召集訴訟、最高裁が上告棄却  裁判官1人だけ「違法」と反対意見 2023年9月13日

臨時国会召集訴訟 最高裁が野党議員側の上告退ける 岡山など全国3地裁で訴え 2023/9/13

【動画】臨時国会召集訴訟 最高裁が野党議員側の上告退ける 岡山など全国3地裁で訴え  2023/09/13

【音声】臨時国会召集に速やかに応じるのは内閣の義務!安部、菅、岸田、召集放置に対する司法からの強烈なメッセージ【水谷加奈、いとうあさこ】大竹まこと 2023年9月13日

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国会召集訴訟上告棄却 最高裁 野党側の敗訴確定 2023年9月13日

〈社説〉国会召集の期限 速やかに法を改正せよ 2023/09/14

[社説]国会不召集判決 司法の役割を放棄した 2023年9月15日

[社説]国会不召集最高裁判決 内閣の恣意的運用は許されない 2023年9月16日

<ぎろんの森>議会軽視を咎める国たれ 2023年9月16日

【国会召集訴訟】憲法上の義務見つめ直せ 2023.09.17

臨時国会の召集手続き 憲法理念に沿う法整備を 2023/9/17

(天声人語)憲法53条訴訟 2023年9月17日

社説:国会召集の義務 内閣に期限を課す法改正を 2023年9月18日 

臨時国会召集義務 少数意見軽視、政府は改めよ 2023/9/18

<社説>臨時国会召集訴訟 速やかな召集へ法改正を 2023年09月19日

(天声人語)憲法53条訴訟 2023年09月19日

<社説>国会の召集義務 少数派の権利守る政治を 2023年9月20日

[国会召集「20日で十分」]少数派尊重の理念 法で補え 2023年9月21日

国会不召集判決 期間示す法整備が必要だ 2023/9/24

 


「初めて53条の法的義務を認め、確認訴訟についても法律上の争訟性を認め国の統治行為論をも退けました。」 Twitter

【動画】2023年9月12日 #岡田会見 立憲民主党

最高裁判決第三小法廷において判決が言い渡されました 2023/9/12



 この最高裁判決では「確認の訴え」は「法律上の争訟」に当たると述べている。


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 本件各確認の訴えは、上告人が、個々の国会議員が臨時会召集要求に係る権利を有するという憲法53条後段の解釈を前提に、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして、上告人を含む参議院議員が同条後段の規定により上記権利を行使した場合に被上告人が上告人に対して負う法的義務又は上告人が被上告人との間で有する法律上の地位の確認を求める訴えであると解されるから、当事者間の具体的な権利義務又は法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用によって終局的に解決することができるものであるということができる。そうすると、本件各確認の訴えは、法律上の争訟に当たるというべきであり、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。

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PDF


行政事件訴訟法

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(当事者訴訟)

第四条 この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

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裁判所法
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第三条(裁判所の権限) 裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。

② ……(略)……

③ ……(略)……

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行政訴訟(当事者訴訟) Wikipedia


民事訴訟(訴えの種類) Wikipedia

確認の利益 Wikipedia


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 訴訟では将来、召集を要求した場合に臨時国会を開く義務があることの確認も求め、裁判で争える問題ではないとした一、二審に対し、最高裁は争えると判断。この点について、小西洋之参院議員は「政府に対し、強力なけん制となる。国会の地位を守る道が開かれた」と語った。

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「国会の地位守る判決」 原告議員ら、一定評価―不召集訴訟 2023年09月12日


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 一方、野党議員側は、要求から20日以内に内閣が臨時国会召集の義務を負うことの確認も求めた。小法廷は、この訴えが裁判で解決可能な法律上の争いに当たるとし、野党議員側に訴訟で争う資格を認めたものの、「将来に関する訴えで、不利益が生じる現実の危険があるとは言えない」として退けた。


 一連の訴訟は野党議員ら6人が18年に東京、岡山、那覇の3地裁に提訴していた。判決後に記者会見した原告の一人、立憲民主党の小西洋之参院議員は「確認訴訟では裁判を起こす道が開かれた。内閣が直ちに召集をしない姿勢を見せたら裁判に訴えていく」と語った。

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臨時国会召集先送り「議員の権利侵害せず」 最高裁が初判断 2023/9/12

 

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最高裁の判示からすれば、今後、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の議員が国会の召集要求をすれば、要求した議員は裁判所へ内閣の召集義務の確認訴訟を提起出来る。

まだまだこの戦いは続く

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国会召集98日間先送り違憲訴訟の会 2023/9/14


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 最高裁は、議員が臨時国会の召集を受けられる地位の確認を求める訴えについて、地裁や高裁の判断を覆し、裁判で争える事柄であること自体は認めた。今後、内閣が召集要求に応じないときに速やかに議員が訴えれば、裁判所が救済する可能性もある。

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(社説)国会召集義務 議論封じは許されない 2023年9月15日


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 原告の敗訴は確定したものの、判決では内閣に召集義務があるとし、将来要求に応じなければ裁判で争えるとの判断も示した。

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<社説>臨時国会要求 召集義務課す法整備を 2023年9月18日

 

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 「臨時国会の召集要求は巡り巡って主権者のための権利だが、それが実現されない状態にある時に、人権の番人である最高裁の腰が引けてしまっている。ただ、判決を丁寧に読むと希望も見えてくる。裁判所は一貫して高度な政治問題から身を引いてきたが、今回は、そもそも議論の場が開かれないという手続きの問題と整理し、『法律上の争訟に当たる』と示した。今後、臨時国会召集が遅れた場合、損害賠償の請求ではなく、(特定の権利が存在するかどうかを確定する)確認訴訟の形で訴えれば訴訟を受け付けると示唆した。将来に向けて少し芽を出したと言える」

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志田陽子教授が語る「民主主義のプロセスの大きな問題」 憲法53条・国会召集を巡る最高裁判決を読み解く 2023年11月3日 

 

【詳しい】最高裁判所判決(憲法53条違憲国賠訴訟)を受けて 2023.09.13

小口 幸人 facebook 2023/9/13

小口 幸人 facebook 2023/9/15

小口 幸人 facebook 2023/9/19

賀川 進太郎 facebook 2023/9/15

金原 徹雄 facebook 2023/9/15

 

【動画】現在の統治行為論~受講生・受験生の皆さんへ第198弾 伊藤真 2023年9月15日

【動画】憲法53条訴訟(最判令和5年9月12日)の解説  2023/09/28

【動画】シリーズ憲法講演会No.33「53条訴訟の意義と今後の課題」 2023/12/23

53条訴訟の意義と今後の課題 伊藤真 PDF

 





政府の認識


 政府は「臨時会の召集を適切に決定してきた」と認識している。


質問主意書

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一 「安倍元総理におかれては、憲政史上最長の八年八か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと」について、第二次安倍政権の二〇一五年には七十五日間、二〇一七年には九十八日間、二〇二〇年には四十七日間にわたって憲法第五十三条に違反して臨時国会の召集要求を無視しているが(特に、二〇一七年には臨時国会後直ちに衆議院を解散している)、安倍政権が「憲政史上最長」であったからと言ってそれを国葬儀の理由とすることは憲法の定める国民主権、議会制民主主義の観点から問題があるのではないか。

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答弁書

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一について

 

 安倍内閣(当時)においては、憲法第五十三条の規定に基づき臨時会の召集を適切に決定してきたところであり、「憲法第五十三条に違反して臨時国会の召集要求を無視して」との御指摘は当たらないため、それを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。

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安倍元総理に国葬儀を行う理由等に関する質問主意書 令和4年8月5日





2020年の事例


【動画】ダースレイダーx木村草太 "コロナ考~憲法をじっくり考えよう" 2020/08/10
国会召集せず「説明責任回避」と憲法学者らが批判 2020年8月13日

憲法学者ら、説明責任回避と批判 臨時国会召集拒否を巡り 2020年8月13日

安倍内閣の度び重なる憲法第53条違反に関する見解 2020年8月13日

憲法学者ら、説明責任回避と批判 臨時国会召集拒否を巡り 2020/8/13

「憲法違反が常態化」 学者グループ、臨時国会巡り批判 2020年8月14日

なぜ「憲法53条」に基づく臨時国会の召集規定に「期限の定め」がないのか? 憲法が私たちに託するもの 2020.08.14

山口二郎法大教授ら立憲デモクラシーの会が会見 「憲法53条に基づき臨時国会を召集せよ」 2020/08/14

改めて憲法を尊重し擁護することを考える 2020年08月15日

安倍政権「臨時国会」召集拒否“自民党憲法”にも明確に違憲 2020/08/22

国会開かずに延命図る安倍政権 国民が強制的に開かせる方法 2020.08.26



2021年の事例

 

国会召集の可能性否定せず 加藤氏「与党と相談」 2021年9月1日

野党、国会拒否で抗議声明 自民に提出「役割放棄」 2021年9月2日

<社説>臨時国会召集を拒否 法治主義の逸脱目に余る 2021年9月3日

【解説】憲法53条の国会召集要求、内閣に応じない裁量の余地ある? 2021年9月8日

憲法第53条後段に基づき、速やかな臨時国会の召集を強く求める会長声明 東京弁護士会 2021年09月09日

国会召集先送りは「違憲」 元最高裁判事、異例の意見 2021年9月26日



2022年の事例


「夏休み取っている場合でない」野党が早期の臨時国会召集を要求 国葬、旧統一教会問題の審議必要と訴え 2022年8月18日

野党が「臨時国会」要求も自民は拒否…憲法53条に規定されているのに、なぜ召集されないのか 2022.08.18

【速報】立憲など野党側 憲法に基づく臨時国会召集を要求 2022年8月18日

立民など早期の国会召集要求 旧統一教会問題めぐり 2022/8/18



2023年の事例 


(これは憲法53条に基づくものではないようである。)


野党、臨時国会の早期召集を要求 国対委員長が会談 2023年9月27日

臨時国会の早期召集を要求 野党が国対委員長会談 2023年09月27日

野党、臨時国会の早期召集要求へ 国対委員長会談 2023/9/27

立憲・安住国対委員長 自民側に「臨時国会早期召集」を要求 2023年9月27日


アングル:早期解散の思惑、臨時国会召集日・補正提出時期巡り 2023年9月29日

臨時国会は10月20日召集の方針…首相が解散・総選挙に踏み切ると与野党に見方も 2023/09/29

岸田首相「臨時国会に補正予算案」 解散「いま考えず」 2023年9月29日

永田町「早期解散含み」臆測も 臨時国会10月20日に召集へ 2023/9/29

臨時国会、10月20日召集の方針 内閣改造後初の国会論戦へ 2023/9/29

首相、10月20日臨時国会召集方針を公明代表に伝達 2023/9/29

 



 





改憲案の想定


 期限を設けるという改憲にも問題があることについて、下記で確認できる。

【詳しい】【自民党憲法改正案の問題点:第53条】臨時国会の召集が遅れる 2020.12.17


 改憲で期限を設けようとする意見は下記のようなものである。


【動画】【LIVE配信】国民民主党・玉木代表会見 2023年9月12日(火)





法律での対応は可能か

国会法で期限を決める考え方について

 国会法で期限を決める考え方については、上記「①と②の評価」や「那覇地方裁判所」のところで解説しているような懸念がある。

 

立民、臨時国会召集期限で法案 2022年9月2日

立憲、臨時国会召集期限で法案 20日以内と明記検討 2022/09/02

立民、臨時国会召集期限で法案 20日以内と明記検討 2022年9月2日

泉健太代表記者会見 ○憲法53条に基づく国会召集要求について 2022年9月2日

【動画】泉会見 立憲民主党 2022年9月2日

立民「臨時国会20日以内召集」法案提出に維新も同調 「憲法改正草案」で“言い出しっぺ”の自民に迫られる選択 2022.09.03

 

【動画】国会法改正に向けて 立憲民主党と日本維新の会の国会議員の先生方の事務所へ挨拶回りしてきました 2022/10/01

野党、国会法改正案提出 要求後20日以内の召集 2022年10月3日

臨時国会 召集要求の規定で野党 国会法の改正案 衆議院に提出 2022年10月3日

「要求後20日以内の国会召集」義務付ける改正案を5野党が提出 2022/10/03

「政権が政治空白を作っていると言っても過言ではない」  野党が国会法改正案提出 政府与党をけん制 2022年10月3日

【動画】野党、国会法改正案を提出 要求から20日以内に召集 2022/10/3

立憲&維新が代表質問で「臨時国会召集」質す それでも「ゼロ回答」で「共闘不発」なのか 2022年10月06日



 法律で「20日以内」などと期限を設定した場合には、結局、その法律を制定する国会の多数派が召集の期限を自由に設定することができることになるから、憲法53条後段が「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが召集を要求できるとしている趣旨を没却することになる。

 しかし、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが指定した日付・期限で召集することを義務付ける内容の法律であれば、憲法53条後段の趣旨を没却することはなく、合憲といえると思われる。



 「憲法53条後段には召集の期限について定めがない」との議論がある。

 しかし、そもそも召集の期限は「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが53条後段の趣旨に従って毎回自由に決めることができるのではないかと思われる。
 「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが、毎回、内閣に対して「〇〇日までに国会を召集することを要求する」と求めることができるように思われる。


 もし、内閣がその指定された期限内に国会を召集しなかった場合には、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちによって訴訟が起こされ、裁判所は、内閣が指定された期限内に国会を召集しなかった事情について、憲法53条後段が定める内閣の「法的義務」にどうしても従うことができないような合理的な理由があったか否かを審査することになる。

 そして、合理的な理由がない場合には、憲法53条に違反すると判断を下せるように思われる。


 しかし、憲法53条に期限の定めがないことを理由に、法律で期限を区切ることは、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちの有する憲法上で認められた地位を、国会の多数派が法律の制定によって覆そうとするものであるから、憲法53条後段の趣旨に違反すると思われる。


 また、法律(国会法)で期限を定めると、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが内閣に対して期限を指定して国会の召集を要求した場合に、内閣が法律で別の期限が定められていることを理由として「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが指定した期限内の召集を決定しなくなることが考えられる。

 その場合、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちは、法律に定められた期限が憲法53条に違反すると主張して訴訟を起こすことが考えられる。
 すると、法律に定められた期限は、憲法53条に違反することになって無効となるように思われる。


 この問題を回避するためには、法律で召集の日付・期限について触れる際には、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが指定した日付・期限に召集することを義務づける内容でなければならないように思われる。

 あるいは、法律で期限を設けるにしても、「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちが召集の日付・期限を自由に指定することができることを前提とし、その者たちが日付・期限を指定しなかった場合に限り、内閣は『〇〇日以内』に召集しなけばならない」という形でなければならないように思われる。


 これならば、憲法53条後段の趣旨を没却することがなく、合憲と考えることが可能かもしれない。



 「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちは、召集の日付・期限を指定して召集要求するべきと思われる。


【動画】憲法第53条に基づく「臨時国会召集要求書」を衆院議長に提出 2022/08/18

憲法53条に基づく臨時国会召集要求の申し入れ 2022/08/18


 指定された日付・期限から遅滞した期間が、内閣の「法的義務」に背いた部分であり、裁判所で合理性を審査するべきところと思われる。

 

 下記の案は「20日以内」と書かれているが、憲法53条の下では「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちが直ちに召集するべきと要求しているのであれば、「20日以内」の期間についても合理的な理由がなければ違憲である。

 

憲法53条に基づく国会召集要求、「20日以内に召集義務付け」の国会法改正案提出//会見 2022年10月4日

 

岸田内閣の臨時会召集が憲法第五十三条に違反すること等に関する質問主意書 令和4年10月6日

臨時国会召集の野党案 立法府軽視改める契機に 2022/10/10

【動画】衆議院 予算委員会 岡田克也議員(私たち野党5党1会派は、20日以内に国会召集を内閣に義務づける法案を提出しました) 2022年10月17日

(社説)国会召集要求 期限設定で合意めざせ 2022年10月31日

与野党対決の土俵を再整備 臨時国会召集「20日以内」案 2022年11月3日

<社説>国会召集の要求 憲法の趣旨守る合意を 2022/11/08

社説:国会召集の期限 設定へ与党は決断せよ 2022年11月9日

臨時国会の召集 法律で期限設定を目指せ 2022年11月09日

 

臨時国会召集 野党提出の国会法改正案 与野党の議論始まる 2022年11月15日

「20日以内の国会召集」国会法改正案 与野党で議論始まる 2022年11月15日

20日以内に国会召集法案、自民が反対意向 違憲の可能性指摘 2022年11月15日

20日以内の召集、自民が反対意向 「違憲の可能性」指摘 2022年11月16

<憲法はどこへ2022>臨時国会召集、20日以内に 国会法改正 野党案の議論開始 2022/11/16



訴訟法の整備で対応する考え方


 裁判所において国家賠償法等を使う形での違憲審査をすることができない場合に限られるが、この問題を法律の立法によって解決することを試みるのであれば、法律で訴訟を提起することができる適格者について定める方法も考えられる。


裁判所法
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(裁判所の権限)
第3条 裁判所は、日本国憲法 に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。

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 この裁判所法3条の「その他法律において特に定める権限」というのは、具体的な事件でなくとも法律によって定めた者であれば裁判所の権限の中にあるとして裁判の道を開いたものである。

 実際に、行政事件訴訟法の規定によって一定の条件に該当する者は客観訴訟にあたる「民衆訴訟(住民訴訟・当選訴訟)」や「機関訴訟」を提起することが可能である。

 このような訴訟法を整備することによって、裁判所での審査の道を開くことはできないだろうか。

 

【動画】2023年度前期・九大法学部「憲法1(統治機構論・後半)」第5回〜裁判所② 2023/07/01 

【動画】2023年度前期・九大法学部「憲法1(統治機構論・後半)」第5回〜裁判所② 2023/07/01 ②


 最高裁判決では「確認の訴え」は「法律上の争訟」に当たると述べている。


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 本件各確認の訴えは、上告人が、個々の国会議員が臨時会召集要求に係る権利を有するという憲法53条後段の解釈を前提に、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして、上告人を含む参議院議員が同条後段の規定により上記権利を行使した場合に被上告人が上告人に対して負う法的義務又は上告人が被上告人との間で有する法律上の地位の確認を求める訴えであると解されるから、当事者間の具体的な権利義務又は法律関係の存否に関する紛争であって、法令の適用によって終局的に解決することができるものであるということができる。そうすると、本件各確認の訴えは、法律上の争訟に当たるというべきであり、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。

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憲法53条違憲国家賠償等請求事件 最高裁判所第三小法廷 令和5年9月12日 (PDF


 そうなると、訴訟法を新たに整備する必要はないのかもしれない。