見やすく改憲案

体系が美しい日本国憲法をつくる

~ 分かりやすい憲法をつくろう ~


 現行憲法は法体系のアクセシビリティが低い。これは、学習しづらく理解を深める際に大きな障壁となっている。当サイトは、日本国憲法のこのような面を改善し、見やすく、読みやすく、理解しやすくしていきたいと思う。

 整った見やすい憲法の形に整理することで、次のような効果を見込む。

〇 勉強しやすくなる
〇 理解しやすくなる
〇 見やすく美しくなる
〇 読んでいて気持ちがすっきりする
〇 納得しやすくなる
〇 学習の疲労感を軽減できる
〇 多くの人の持つ法律への拒絶反応を軽減できる

 このような効果を得るため、憲法を"見やすく"改憲するのは大賛成である。見やすくするためだけに改憲するのかという疑問を持たれる方もいるだろうと思われる。しかし、見やすさというのは、憲法理念を国民や次世代の国民に普及するためにも非常に大切な要素である。憲法の体系が見やすく分かりやすくなることについては、多くの人から支持を得られるのではないかと思う。

 近年、憲法改正の議論が高まっている。しかし、当サイトは憲法の内容を変更するよりも、法の体系を美しく整理させる改憲をしてもらいたいと考える。そのため、当サイトがお勧めする、「体系が美しい憲法」の形を「見やすく改憲案」としてまとめてみた。

 ご覧いただけた方からは、できるだけ厳しいご指摘やご批判をいただけることを期待したいと思う。


 改憲案全体について

〇 難解な現行憲法を分かりやすく整理し直すことは、国民に憲法理念を普及するために有益であると考える。

〇 この改憲案は、現行憲法の一つ一つの条文をほとんど変更しておらず、現行憲法の精神を残すものとなっている。

〇 学習し、理解を深めていく際に大切な「見やすさ」を重視したため、「憲法総則」を置くこととした。【総則規定】を置くことで、現行の日本国憲法の体系が非常に簡潔に整理され理解しやすくなったと思う。ただ、分類をつくる際に今まで柔軟に行ってきた条文間の相互の関連性など解釈の幅やイメージが変わってしまう可能性も考えられる。その点は法曹実務家や学者との意見のすり合わせが重要になってくると考えている。当然のことながら、国民の意見も聞いていく必要がある。


■ 分類区分と「章」について


〇 理解を深めたり学習する際に分かりやすくするため、「章」の配置順序を変更した。

〇 「章」の位置づけを分かりやすく分類するため、【総則規定】、【人権規定】、【統治規定】の3つの区分を新しく設けることとした。分類して整理することで、国民が憲法を学ぶときに無用な混乱を招くことを防ぐことができると考える。

〇 現行憲法の「第十一章 補則」の章は、現在使われていない条文なので削除した。削除するのではなく、「章」から「附則」に降格させる方法でも構わない。


改憲草案の目次
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<日本国憲法>

   前文

【 総則規定 】

   第一章 最高法規

   第二章 戦争の放棄

   第三章 改正


【 人権規定 】

   第四章 国民の権利及び義務
      〔人権に関する総則規定群〕
      〔各種権利および義務に関するカタログ的規定群〕
      〔刑事訴訟関連規定群の規定〕


【 統治規定 】

   第五章 天皇

   第六章 立法・国会

   第七章 行政・内閣

   第八章 司法・裁判所

   第九章 財政

   第十章 地方自治

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① 分類区分の【総則規定】について

〇 「最高法規」の章の条文は、「【人権規定】に関すること」、「法体系全般に関すること」、「【統治規定】に関すること」のすべてに触れている。そのため、この規定は憲法が憲法を成り立たせるために決して欠くことのできない憲法原理の根幹部分である。つまり、これは憲法の総則的な規定であると考えられる。そのため、この章は憲法の中で一番最初の章として配置することが妥当であると考える。「最高法規」の章は憲法の一番最初に持ってくることで、前文からの自然な流れとして読み取ることもできるはずである。

〇 「戦争の放棄」の章は、憲法上【人権規定】でも【統治規定】でもない。また、平和主義について、その「目的」や「手段」にも触れており、【人権規定】や【統治規定】に関わる問題でもある。そのため【総則規定】に配置することにした。

〇 「改正」に関する規定は、憲法のほぼすべてのに及ぶものであるため、【総則規定】に配置することが妥当であると考える。


② 分類区分の【人権規定】について

〇 「国民の権利及び義務」の章の中に、〔人権に関する総則規定群〕、〔各種権利および義務に関するカタログ的規定群〕、〔刑事訴訟関連規定群の規定〕という3つの分類を加えることで、人権についての内容を理解する際に規定の性質を分かりやすく示すことができるようにした。


③ 分類区分の【統治規定】について

〇 天皇は日本国の象徴である。つまり、国の象徴という"仕事"であるから、「天皇」の章を統治機構の三権分立の前に持ってくることが妥当な配置であると考える。天皇は国の象徴であるが、国民主権の下ではあくまで国民が主役で国は成り立っている。そのため、人権規定である「国民の権利及び義務」の章の後においてもまったくおかしくないと考える。また、天皇は内閣総理大臣や最高裁判所長官の任命権も持っており、統治機構の三権の機能と密接な関係性もある。それらをまとめて配置することで、憲法の初学者が混乱することなく学習を進めることができるようになる。これは、国民に憲法を普及する上でも非常に有益であると考える。

もう「天皇」演じなくて済む…陛下の学友、体調を気遣う 2017年12月1日

〇 三権分立の章の名前である「国会」「内閣」「司法」を「立法・国会」「行政・内閣」「司法・裁判所」にした。三権分立の内容を学問上の分類名と整合性を持たせるため、「国会」「内閣」『裁判所』としたいところであるが、現行憲法は「国会」「内閣」『司法』となっている。司法と書くならば、「立法」「行政」「司法」と書いた方がいいのではないかと思う。しかし、内閣ばかりのことが書いてある現行憲法を「行政」とひとくくりにしてしまうのは大きすぎるのかもしれない。それに、会計検査院とか、内閣からやや独立している機関もあるため、「行政」とまとめ切るのは良くないのかもしれない。そうだとすると、「内閣」の項目に「行政」とだけ書くことはできないのかもしれない。ならば、この改憲案として「立法・国会」「行政・内閣」「司法・裁判所」という名前を付けて分類してみたが、どうだろうか。いや、これもなんだか面倒なので、やはり「国会」「内閣」「裁判所」という分類にした方がいいのかもしれない。ただ、現行憲法は意図して「裁判所」でなく「司法」という言葉を敢えて使っているという学説もあったりするかもしれないので、この変更に自信を持っていない。学者からの議論を待つ姿勢だ。

(追記:「裁判所」ではなく「司法」の文言にしているのは、国会による「弾劾裁判」との混同を防ぐためかもしれない。詳細はもう少し検討する必要がある。)



見やすく改憲案は、現行憲法のこの体系を整備する。


改憲草案 全文



■ 改憲草案を読む前に

〇 現行憲法に新しく追加したり、現行憲法から削除した前文や条文はない(現行憲法 第十一章「補則」を除く)。

〇 この改憲案には新条文番号を付けた。そのため、ここでは現行憲法の条文は〈現:〇条〉と記載し、照合できるようにした。

〇 各条文の頭に(小見出し)を付けた。(小見出し)はwikipediaの憲法の条文構成の記述から引用している。そのため、おおよそ悪くはないと思うが、(小見出し)のネーミングについては独自に詳細な検討は行っていない。国立国会図書館のページの小見出しなどの方が良いですかね。

〇 各条文に(小見出し)を付けたが、条文に(小見出し)を付けることで、条文解釈の意味合いが限定されてしまい、柔軟性を失ってしまうなどの弊害に十分に注意しながら名前を付けるべきだと思う。慎重に慎重な検討を重ねていきたい。

〇 条文中の「歴史的仮名遣い」のためにやや読みにくかったところを「現代仮名遣い」に変更した。そのため、「奉仕者であつて」などを「奉仕者であって」、「理由となつてゐる犯罪」などを「理由となっている犯罪」、「国事に関する行為を行ふ」などを「国事に関する行為を行う」のように変更した。
その他
「ないやうに」→「ないように」
「誓ふ」→「誓う」
「いづれの」→「いずれの」
「失ふ」→「失う」
「問はれない」→「問われない」
「試錬」→「試練」
「一の地方公共団体のみに〈現:95条」→「一つの地方公共団体のみに」(これは読みやすくしただけだが)

〇 条文中の「締結すること。但し、事前に、時宜によっては」などと出てくる「但し」の漢字を、難しいので「ただし」とひらがなにした。民法や刑法もひらがなで書かれている。

〇 条文中の「司法官憲が発し、且つ理由となっている」などと出てくる「且つ」の漢字を、難しいので「かつ」とひらがなにした。民法や刑法もひらがなで書かれている。

〇 現行憲法の前文・条文中にやたらに多く、分かりづらい言い回しであると指摘されている「これを」の言葉をカットした。ただし、一つの文の中に「これ」が示すものがない場合などは、その前の文との関連性を保ち、照合できるように残したものもある。また、「これを」をカットすると文全体が乱れてしまうように感じられる場合はカットせずに残した。

〇 文中の「これを」の言い回しをカットすることで、不自然に「、」が残ることがあるため、それも文全体を見て判断してカットすべきものを判断する必要あると思われる。(例:現行憲法35条2項の『司法官憲が発する各別の令状により、(これを)行う。』 など)


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  日本国憲法

(昭和二十一年十一月三日憲法)
(□□〇年〇月〇日改正)


  日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者が行使し、その福利は国民が享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免がれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。


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【 総則規定 】


   第一章 最高法規

(基本的人権の本質)
第一条〈現:97条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

(最高法規、条約及び国際法規の遵守)
第二条〈現:98条  この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
〇2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、誠実に遵守することを必要とする。

(憲法尊重擁護の義務)
第三条〈現:99条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。


   第二章 戦争の放棄
 
(戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認)
第四条〈現:9条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に放棄する。
〇2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、保持しない。国の交戦権は、認めない。


   第三章 改正
 
(憲法改正の手続き、その公布)
第五条〈現:96条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
〇2  憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちに公布する。


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【 人権規定 】


   第四章 国民の権利及び義務

  ~~~~〔人権に関する総則規定群〕~~~~

(国民の要件)
第六条〈現:10条〉  日本国民たる要件は、法律で定める。

(基本的人権の享有)
第七条〈現:11  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。

(自由・権利の保持の責任、濫用の禁止)
第八条〈現:12条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のために利用する責任を負う。


  ~~~~〔各種権利および義務に関するカタログ的規定群〕~~~~

(個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉)
第九条〈現:13条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

(身分制度の禁止、法の下の平等、栄典)
第十条〈現:14  すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
〇2  華族その他の貴族の制度は、認めない。
〇3  栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現に有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
 
(公務員選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障、秘密投票の保障)
第十一条〈現:15  公務員を選定し、及び罷免することは、国民固有の権利である。
〇2  すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
〇3  公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
〇4  すべて選挙における投票の秘密は、侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。

(請願権)
第十二条〈現:16  何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

(国及び公共団体の賠償責任)
第十三条〈現:17  何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

(奴隷的拘束及び苦役からの自由)
第十四条〈現:18  何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

(思想・良心の自由)
第十五条〈現:19  思想及び良心の自由は、侵してはならない。

(信教の自由)
第十六条〈現:20条〉  信教の自由は、何人に対しても保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
〇2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
〇3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

(集会の自由、結社の自由、表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密保障)
第十七条〈現:21条〉  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
〇2  検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

(職業選択の自由、居住移転の自由、外国移住及び国籍離脱の自由)
第十八条〈現:22条〉  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
〇2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

(学問の自由)
第十九条〈現:23条〉  学問の自由は、保障する。

(家族生活における個人の尊重と両性の平等)
第二十条〈現:24条〉  婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
〇2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

(生存権、国の社会的使命)
第二十一条〈現:25条〉  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
〇2  国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

(教育を受ける権利、子に普通教育を施す義務)
第二十二条〈現:26条〉  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
〇2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。

(勤労の権利及び義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止)
第二十三条〈現:27条〉  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
〇2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
〇3  児童は、酷使してはならない。

(勤労者の団結権)
第二十四条〈現:28条〉  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

(財産権)
第二十五条〈現:29条〉  財産権は、侵してはならない。
〇2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定める。
〇3  私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

(納税の義務)
第二十六条〈現:30条〉  国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。


  ~~~~〔刑事訴訟関連規定群の規定〕~~~~

(デュー・プロセス・オブ・ローの保証)
第二十七条〈現:31条〉  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

(裁判を受ける権利)
第二十八条〈現:32条〉  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。

(逮捕の要件)
第二十九条〈現:33条〉  何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

(抑留・拘禁の要件、不法拘禁に対する保障)
第三十条〈現:34条〉  何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

(住居の不可侵)
第三十一条〈現:35条〉  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、〈現:第三十三条〉の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
〇2  捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、行う。

(拷問及び残虐刑の禁止)
第三十二条〈現:36条〉  公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対に禁ずる。

(刑事被告人の権利)
第三十三条〈現:37条〉  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
〇2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
〇3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国で附する。

(自己に不利益な供述、自白の証拠能力)
第三十四条〈現:38条〉  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
〇2  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない。
〇3  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

(遡及処罰の禁止、一事不再理)
第三十五条〈現:39条〉  何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

(刑事補償)
第三十六条〈現:40条〉  何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。


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【 統治規定 】


   第五章 天皇

(天皇の地位・国民主権)
第三十七条〈現:1条〉  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

(皇位の継承)
第三十八条〈現:2条〉  皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、継承する。

(天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認)
第三十九条〈現:3条〉  天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う。

(天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任)
第四十条〈現:4条〉  天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。
〇2  天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

(摂政)
第四十一条〈現:5条〉  皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

(天皇の任命権)
第四十二条〈現:6条〉  天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
〇2  天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

(天皇の国事行為)
第四十三条〈現:7条〉  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。
一  憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二  国会を召集すること。
三  衆議院を解散すること。
四  国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五  国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七  栄典を授与すること。
八  批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九  外国の大使及び公使を接受すること。
十  儀式を行うこと。

(皇室の財産授受)
第四十四条〈現:8条〉  皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基づかなければならない。


   第六章 立法・国会
 
(国会の地位・立法権)
第四十五条〈現:41条〉  国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

(両院制)
第四十六条〈現:42条〉  国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

(両議院の組織・代表)
第四十七条〈現:43条〉  両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。
〇2  両議院の議員の定数は、法律で定める。

(議院及び選挙人の資格)
第四十八条〈現:44条〉  両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。ただし、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

(衆議院議員の任期)
第四十九条〈現:45条〉  衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

(参議院議員の任期)
第五十条〈現:46条〉  参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

(選挙に関する事項)
第五十一条〈現:47条〉  選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。

(両議院議員兼職の禁止)
第五十二条〈現:48条〉  何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

(議院の歳費)
第五十三条〈現:49条〉  両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

(議院の不逮捕特権)
第五十四条〈現:50条〉  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中釈放しなければならない。

(議員の発言・表決の無責任)
第五十五条〈現:51条〉  両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。

(常会)
第五十六条〈現:52条〉  国会の常会は、毎年一回召集する。

(臨時会)
第五十七条〈現:53条〉  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

(衆議院の解散・特別会、参議院の緊急集会)
第五十八条〈現:54条〉  衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
〇2  衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
〇3  前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

(資格争訟の裁判)
第五十九条〈現:55条〉  両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

(定足数、表決)
第六十条〈現:56条〉  両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
〇2  両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

(会議の公開、秘密会、会議録、表決の記載)
第六十一条〈現:57条〉  両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
〇2  両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、公表し、かつ一般に頒布しなければならない。
〇3  出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、会議録に記載しなければならない。

(役員の選任、議院規則・懲罰)
第六十二条〈現:58条〉  両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
〇2  両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

(法律案の議決、衆議院の優越)
第六十三条〈現:59条〉  法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
〇2  衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
〇3  前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
〇4  参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

(衆議院の予算先議権、予算議決に関する衆議院の優越)
第六十四条〈現:60条〉  予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
〇2 予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

(条約の承認に関する衆議院の優越)
第六十五条〈現:61条〉  条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

(議院の国政調査権)
第六十六条〈現:62条〉  両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

(閣僚[国務大臣]の議院出席の権利と義務)
第六十七条〈現:63条〉  内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

(弾劾裁判所)
第六十八条〈現:64条〉  国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
〇2  弾劾に関する事項は、法律で定める。


   第七章 行政・内閣
 
(行政権)
第六十九条〈現:65条〉  行政権は、内閣に属する。

(内閣の組織、文民資格、国会に対する連帯責任)
第七十条〈現:66条〉  内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣で組織する。
〇2  内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
〇3  内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

(内閣総理大臣の指名、衆議院の優越)
第七十一条〈現:67条〉  内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって、行う。
〇2  衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

(国務大臣の任免及び罷免)
第七十二条〈現:68条〉  内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。ただし、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
〇2  内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

(内閣不信任決議の効果)
第七十三条〈現:69条〉  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

(内閣総理大臣の欠缺・新国会の召集と内閣の総辞職)
第七十四条〈現:70条〉  内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

(総辞職後の内閣)
第七十五条〈現:71  前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。

(内閣総理大臣の職務)
第七十六条〈現:72  内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

(内閣の職務)
第七十七条〈現:73  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。
一  法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二  外交関係を処理すること。
三  条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四  法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。
五  予算を作成して国会に提出すること。
六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

(法律・政令の署名)
第七十八条〈現:74  法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

(国務大臣の特典)
第七十九条〈現:75  国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。ただし、これがため、訴追の権利は、害されない。


   第八章 司法・裁判所
 
(司法権・裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立)
第八十条〈現:76  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
〇2  特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。
〇3  すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

(最高裁判所の規則制定権)
第八十一条〈現:77  最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
〇2  検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
〇3  最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

(裁判官の身分の保障)
第八十二条〈現:78  裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関が行うことはできない。

(最高裁判所の裁判官、国民審査、定年、報酬)
第八十三条〈現:79  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣で任命する。
〇2  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
〇3  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
〇4  審査に関する事項は、法律で定める。
〇5  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
〇6  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、減額することができない。

(下級裁判所の裁判官・任期・定年、報酬)
第八十四条〈現:80  下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣で任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には退官する。
〇2  下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、減額することができない。

(法令審査権と最高裁判所)
第八十五条〈現:81  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

(裁判の公開)
第八十六条〈現:82  裁判の対審及び判決は、公開法廷で行う。
〇2  裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第四章〈現:第三章〉で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければならない。


   第九章 財政

(財政処理の基本原則)
第八十七条〈現:83  国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、行使しなければならない。

(課税)
第八十八条〈現:84  あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

(国費の支出及び国の債務負担)
第八十九条〈現:85  国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

(予算)
第九十条〈現:86  内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

(予備費)
第九十一条〈現:87  予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任で支出することができる。
〇2  すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

(皇室財産)
第九十二条〈現:88  すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

(公の財産の支出又は利用の制限)
第九十三条〈現:89  公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、支出し、又はその利用に供してはならない。

(決算検査、会計検査院)
第九十四条〈現:90  国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院が検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、国会に提出しなければならない。
〇2  会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。

(財政状況の報告)
第九十五条〈現:91  内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。


   第十章 地方自治
 
(地方自治の基本原則)
第九十六条〈現:92  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。

(地方公共団体の機関、その直接選挙)
第九十七条〈現:93  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
〇2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接選挙する。

(地方公共団体の権能)
第九十八条〈現:94  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

(特別法の住民投票)
第九十九条〈現:95  一つの地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

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~解説~

〇 現行憲法に新しく追加したり、現行憲法から削除した条文はない(現行憲法 第十一章「補則」を除く)

〇 基本的人権を導くために必要な現行憲法の背景思想である「自然法思想」、「自然権」、「個人の尊厳」、「価値相対主義」を完全に維持する。

〇 人権相互の矛盾衝突を調整する際、現行憲法の人権の制約原理である「公共の福祉」の考え方を維持する。

〇 現行憲法の三本柱である「平和主義」「基本的人権の尊重」「国民主権」も完全に維持する。おおよそ【総則規定】から「平和主義」、【人権規定】から「基本的人権の尊重」、【統治機構】から「国民主権」を導き出すことができ、これらが三本柱であることも漠然とではあるが、現行憲法よりは把握しやすくなった。

〇 現行憲法に対する批判で、「現行憲法の第11条と第97条は同じ意味であり、内容が重複している」と指摘する者がいる。しかし、【総則規定】【人権規定】【統治機構】の分類を設けて全体を整理して考えてみることで、「最高法規」の章にある現行第97条が決して欠くことのできない憲法原理に関わる重要な規定であることが明確に理解できると思う。また、「国民の権利及び義務」の章にある現行第11条もやはり個別の国民の権利及び義務の大本となる総則的規定として非常に重い条文であることも理解できると思う。

〇 現行第9条については、現行の条文のままで不足ないと考える。第9条に自衛隊や国防軍の位置づけを明確にする規定を置くべきだとの主張もあることは承知している。しかし、消防組織や警察組織などの機関について憲法の中に規定が置かれていないが、自衛隊のみを憲法に書き込むということは不自然であると考えるからである。現行の運用上の根拠の導き方としては自衛隊も内閣に与えられた「行政権」に基づいて行動する組織である。これは警察組織、消防組織、海上保安庁などの組織と同様である。しかし、自衛隊だけ憲法中に書き込んで別格扱いとするのは、三権分立の立憲的なバランス感覚からするとおかしなことになるのではないかと思われる。憲法中に自衛隊を書き込むと、国防組織が憲法上の他の統治機関と同格の位置づけと見なされてしまうことが想定される。すると、立法権、行政権、司法権に対立する新たな権力機構を立ち上げたような解釈に繋がってしまうと考えられる。そのため、基本的な方針としては現行憲法における警察組織、消防組織、海上保安庁などと同じ組織原理で動く「自衛隊」という行政機関として取り扱う現在の形が妥当であると考える。国防の任務についても、自衛隊法に規定のあるいくつかの任務(災害派遣など)の一つとして、「内閣の行政権の下で」行動する組織としておくことが妥当であると考える。それは現在の法体系で十分可能である。そのような理由から、憲法中に国防組織を書き込むことは、人権保障と立憲主義の統治原理を本質とした憲法の役割や簡素で分かりやすくつくられた法典の価値を守るためには、そぎ落とされるべきものであると考える。

〇 【総則規定】の規定は、通常改正を予定していない。その理由としては、
 ①「『最高法規』の章では、最高法規として憲法が憲法であるための根幹原理に関することであり、憲法保障を実現するための大本についての規定があること」
 ②「『戦争の放棄』の章では、一定の戦争行為を永久に放棄していると読み取ることができ、基本的に改正ができないような言葉遣いであること」
 ③「『改正』の章では、現行憲法は現行憲法の定めた改正方法によって変更することを予定しており、その改正規定自体を改正することは硬性憲法としての現憲法秩序の根幹原理を破壊することに繋がること」
などが挙げられる。
  このように、憲法中に【総則規定】を設けることで、憲法改正の限界をある程度明確化することが可能となる。そのため、「憲法改正の限界は存在するか」という議論で、無用に増えてしまった学説をある程度整理することができる。
■ 最後に

〇 この改憲草案にも多くの盲点があるはずである。ご批判をいただいてより良いものにしていきたいと思う。

〇 また勉強しているうちに考え方も変わるかもしれない。




~出典~

〇 ベースとして使っている日本国憲法
 総務省「法令データ提供システム」より

〇 条文の小見出し
 各条文のタイトルである(小見出し)については、下記のWikipediaのサイトから引用した。