行政権は内閣に属する


 行政権は内閣に属している。内閣の行政権がどのように行政機関に対して及んでいるのか、行政組織法いくつかを取り上げて考えてみよう。

 



憲法が根拠


憲法
   第五章 内閣

第六十五条  行政権は、内閣に属する

 

〔会計検査〕
第90条国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める


会計検査院法
   第一章 組織
    第一節 総則
第一条  会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。

 


内閣が根拠

 

(設置)
第一条  我が国の安全保障(以下「国家安全保障」という。)に関する重要事項を審議する機関として、内閣に、国家安全保障会議(以下「会議」という。)を置く
   第二章 内閣府の設置並びに任務及び所掌事務
(設置)
第二条  内閣に、内閣府を置く

内閣法制局設置法
(設置)
第一条 内閣に内閣法制局を置く
   第二章 復興庁の設置並びに任務及び所掌事務
(設置)
第二条 内閣に、復興庁を置く


警察法
   第二章 国家公安委員会
(設置及び組織)
第四条  内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会を置く
2  国家公安委員会は、委員長及び五人の委員をもつて組織する。

   第三章 警察庁
    第一節 総則
(設置)
第十五条  国家公安委員会に、警察庁を置く

 

 

国家行政組織法
(目的)
第一条  この法律は、内閣の統轄の下における行政機関で内閣府以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もつて国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。

(組織の構成)
第二条 国家行政組織は、内閣の統轄の下に、内閣府の組織とともに、任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を有する行政機関の全体によつて、系統的に構成されなければならない。
2 国の行政機関は、内閣の統轄の下に、その政策について、自ら評価し、企画及び立案を行い、並びに国の行政機関相互の調整を図るとともに、その相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。内閣府との政策についての調整及び連絡についても、同様とする。

(行政機関の設置、廃止、任務及び所掌事務)
第三条 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする
2 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。
3 省は、内閣の統轄の下に第五条第一項の規定により各省大臣の分担管理する行政事務及び同条第二項の規定により当該大臣が掌理する行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。
4 第二項の国の行政機関として置かれるものは、別表第一にこれを掲げる。

第四条 前条の国の行政機関の任務及びこれを達成するため必要となる所掌事務の範囲は、別に法律でこれを定める。

(行政機関の長)
第五条 各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する。
2 各省大臣は、前項の規定により行政事務を分担管理するほか、それぞれ、その分担管理する行政事務に係る各省の任務に関連する特定の内閣の重要政策について、当該重要政策に関して閣議において決定された基本的な方針に基づいて、行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務を掌理する。
3 各省大臣は、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が命ずる。ただし、内閣総理大臣が自ら当たることを妨げない。

 


内閣府が根拠


金融庁設置法
   第二章 金融庁の設置並びに任務及び所掌事務等
    第一節 金融庁の設置
(設置)
第二条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣府の外局として、金融庁を設置する
2 金融庁の長は、金融庁長官(以下「長官」という。)とする。



消費者庁及び消費者委員会設置法

   第二章 消費者庁の設置並びに任務及び所掌事務等
    第一節 消費者庁の設置
(設置)
第二条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣府の外局として、消費者庁を設置する
2 消費者庁の長は、消費者庁長官(以下「長官」という。)とする。


宮内庁法
第一条 内閣府に、内閣総理大臣の管理に属する機関として、宮内庁を置く
2 宮内庁は、皇室関係の国家事務及び政令で定める天皇の国事に関する行為に係る事務をつかさどり、御璽国璽を保管する。

 


国家行政組織法が根拠

 

文部科学省設置法
   第二章 文部科学省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 文部科学省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、文部科学省を設置する。
2  文部科学省の長は、文部科学大臣とする。
   第二章 厚生労働省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 厚生労働省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、厚生労働省を設置する。
2  厚生労働省の長は、厚生労働大臣とする。
   第二章 総務省の設置並びに任務及び所掌事務等
    第一節 総務省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、総務省を設置する。


消防組織法
   第二章 国の行政機関
(消防庁)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、総務省の外局として消防庁を置く。


経済産業省設置法
   第二章 経済産業省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 経済産業省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、経済産業省を設置する。
2  経済産業省の長は、経済産業大臣とする。
(設置及び長官)
第二条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、経済産業省の外局として、中小企業庁を置く。
2 中小企業庁の長は、中小企業庁長官とする。


財務省設置法
   第二章 財務省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 財務省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、財務省を設置する。
2  財務省の長は、財務大臣とする。
   第二章 国土交通省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 国土交通省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、国土交通省を設置する。
2  国土交通省の長は、国土交通大臣とする。


海上保安庁法
   第一章 組織
第一条  海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため、国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、国土交通大臣の管理する外局として海上保安庁を置く。
○2  河川の口にある港と河川との境界は、港則法 (昭和二十三年法律第百七十四号)第二条 の規定に基づく政令で定めるところによる。


農林水産省設置法
   第二章 農林水産省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 農林水産省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、農林水産省を設置する。
2  農林水産省の長は、農林水産大臣とする。
   第二章 環境省の設置並びに任務及び所掌事務等
    第一節 環境省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、環境省を設置する。


外務省設置法
   第二章 外務省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 外務省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、外務省を設置する。
2  外務省の長は、外務大臣とする。
   第二章 法務省の設置並びに任務及び所掌事務
    第一節 法務省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、法務省を設置する。
2  法務省の長は、法務大臣とする。

    第三節 特別の機関
(検察庁)
第十四条 別に法律で定めるところにより法務省に置かれる特別の機関で本省に置かれるものは、検察庁とする
2 検察庁については、検察庁法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる

   第四章 外局
    第一節 設置
第二十六条 国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて法務省に置かれる外局は、次のとおりとする。
公安審査委員会
公安調査庁
    第二節 削除
第二十七条 削除
    第三節 公安審査委員会
第二十八条 公安審査委員会については、公安審査委員会設置法(昭和二十七年法律第二百四十二号。これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
    第四節 公安調査庁
第二十九条 公安調査庁については、公安調査庁設置法(昭和二十七年法律第二百四十一号。これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。


(法務省設置法が根拠)
検察庁法
第一条  検察庁は、検察官の行う事務を統括するところとする。
○2  検察庁は、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁及び区検察庁とする。
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、法務省の外局として、公安調査庁を設置する。
2  公安調査庁の長は、公安調査庁長官とする。


公安審査委員会設置法 
(設置)
第一条の二 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、法務省の外局として、公安審査委員会(以下「委員会」という。)を設置する。


防衛省設置法
   第二章 防衛省の設置並びに任務及び所掌事務等
    第一節 防衛省の設置
(設置)
第二条  国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 の規定に基づいて、防衛省を設置する。
2  防衛省の長は、防衛大臣とする。

 

第二章 防衛省の設置並びに任務及び所掌事務等
 第三節 自衛隊


(自衛隊)
第五条 自衛隊の任務、自衛隊の部隊及び機関の組織及び編成、自衛隊に関する指揮監督、自衛隊の行動及び権限等は、自衛隊法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。


(自衛官の定数)
第六条 自衛官の定数は、陸上自衛隊の自衛官(以下「陸上自衛官」という。)十五万八百六十三人、海上自衛隊の自衛官(以下「海上自衛官」という。)四万五千三百六十四人、航空自衛隊の自衛官(以下「航空自衛官」という。)四万六千九百四十人並びに自衛隊法第二十一条の二第一項に規定する共同の部隊に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官千二百五十三人のほか、統合幕僚監部に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官三百六十八人、情報本部に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官千九百十一人、内部部局に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官四十八人並びに防衛装備庁に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官四百七人を加えた総計二十四万七千百五十四人とする。


第三章 本省に置かれる職及び機関等
 第五節 特別の機関


(部隊等)
第二十七条 部隊等の組織及び編成又は所掌事務は、自衛隊法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。



(防衛省設置法が根拠)
自衛隊法
   第一章 総則
(この法律の目的)
第一条  この法律は、自衛隊の任務、自衛隊の部隊の組織及び編成、自衛隊の行動及び権限、隊員の身分取扱等を定めることを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「自衛隊」とは、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛大臣補佐官、防衛大臣政策参与及び防衛大臣秘書官並びに防衛省の事務次官及び防衛審議官並びに防衛省本省の内部部局、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛会議、統合幕僚監部、情報本部、防衛監察本部、地方防衛局その他の機関(政令で定める合議制の機関並びに防衛省設置法 (昭和二十九年法律第百六十四号)第四条第一項第二十四号 又は第二十五号 に掲げる事務をつかさどる部局及び職で政令で定めるものを除く。)並びに陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊並びに防衛装備庁(政令で定める合議制の機関を除く。)を含むものとする。


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地方自治の行政権は、内閣に属しているのか


 地方自治は三権には直接属していないが、住民自治や団体自治の考え方を制度的に保障したもの(制度的保障説)であると解されていると思われる。


憲法

   第8章 地方自治
〔地方自治の本旨の確保〕
第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

〔地方公共団体の機関〕
第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

〔地方公共団体の権能〕
第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。


地方自治法

  第一編 総則
第一条  この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。

第一条の二  地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
○2  国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。