大日本帝国憲法の軍事規定

改正前後の体系の比較


大日本帝国憲法


第1章 天皇


第2章 臣民権利義務
第3章 帝国議会
第4章 国務大臣及枢密顧問
第5章 司法
第6章 会計

第7章 補則(73条 憲法改正)



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(新設)

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(新設)

(章に格上げ)

(新設)

日本国憲法(現行)


第1章 天皇
第2章 戦争の放棄
第3章 国民の権利及び義務
第4章 国会
第5章 内閣
第6章 司法

第7章 財政
第8章 地方自治
第9章 改正
第10章 最高法規
第11章 補則



大日本帝国憲法


日本国憲法


改正過程の意図


大日本帝国憲法からの移行と削除


 大日本帝国憲法では『天皇主権』であったが、日本国憲法では日本国民が主権を持ち、『国民主権』となった。

 また、日本国憲法は前文にて「国政は国民の厳粛な信託によるもの」「その権威は国民に由来」「これは人類普遍の原理」「この憲法は、かかる原理に基づくもの」としている。

 このことにより、大日本帝国憲法の改正の過程での『天皇主権』は失われると同時に、天皇の有していた11条、12条、13条の軍事に関する規定も削除されている。

 そして、新たに主権者となった日本国民は、9条の規定を設け、自らの『国民主権』の行使によって国家(統治機関)に対して軍事に関する事柄を信託しない旨を宣言しているのである。

 これによって、国民の主権によって創設される国家機関(統治機関)のすべては、9条の制約を受けることとなる。この9条の規定は、今まで主権を有し統治権を総攬していた「天皇(1条)」の権限はもちろんであるが、日本国憲法でその権限が分配された「行政権(65条)」、「立法権(41条)」、「司法権(76条)」、「国の財政を処理する権限(83条)」、「地方自治」に対しても効力が及ぶこととなる。


軍事規定の削除と戦争の放棄


 

 現行憲法は、大日本帝国憲法の天皇大権に含まれる軍事権を削除している。

 

 大日本帝国憲法の天皇主権から現行憲法の国民主権に変わったが、9条1項の「日本国民」が軍事権を放棄し、不保持とし、否認をし、削除の上に重ねて禁止しているのである。



大日本帝国憲法(原文のカタカナはひらがなにしているひらがな・カタカナ変換ツール
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   第1章 天皇


第11条 天皇は陸海軍を統帥す
第12条 天皇は陸海軍の編制及常備兵額を定む
第13条 天皇は戦を宣し和を講し及諸般の条約を締結す


   第2章 臣民権利義務

第20条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ兵役の義務を有す

第31条 本章に掲けたる条規は戦時又は国家事変の場合に於て天皇大権の施行を妨くることなし
第32条 本章に掲けたる条規は陸海軍の法令又は紀律に牴触せさるものに限り軍人に準行す
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日本国憲法
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   第2章 戦争の放棄

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない国の交戦権は、これを認めない


   第3章 国民の権利及び義務

第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない


第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
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<おおよその対応関係>

明憲11条 陸海軍を統帥す

 ⇒ 【軍事権限の削除】 現憲9条1項「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇又は武力の行使」を放棄


明憲
12条 陸海軍の編成及び常備兵額

 ⇒ 軍事組織の削除 現憲9条2項前段「陸海空軍その他の戦力」を不保持


明憲13条 
戦を宣し和を講し

 ⇒ 【対外戦争行為の削除 現憲9条2項後段「国の交戦権」を否認

 

大日本帝国憲法 ⇒ 変更 ⇒ 日本国憲法(現行)

【天皇主権】により

天皇の有していた権限

主権の変更

【国民主権】により日本国民が

国家に信託せず、禁じた権限

11条「陸海軍を統帥す 軍事権限の削除 9条1項「国権の発動たる戦争武力による威嚇又は武力の行使」を放棄
12条「陸海軍の編成及び常備兵額 軍事組織の削除 9条2項前段「陸海空軍その他の戦力」を不保持
13条「戦を宣し和を講し」 対外戦争行為の削除 9条2項後段「国の交戦権」を否認
 
20条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ兵役の義務を有す 兵役の削除 18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない
31条 本章(注:第2章 臣民権利義務)に掲けたる条規は戦時又は国家事変の場合に於て天皇大権の施行を妨くることなし

侵害可能な

人権観を削除

11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
32条 本章(注:第2章 臣民権利義務)に掲けたる条規は陸海軍の法令又は紀律に牴触せさるものに限り軍人に準行す 軍人の削除 (66条2項 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。)


 大日本帝国憲法において天皇の持つ軍事権は、現行憲法では削除されている。


 また、天皇は現行憲法4条で「国政に関する権能を有しない。」とされ、国家の作用は、41条の国会の『立法権』、76条の裁判所の『司法権』、65条の内閣の『行政権』(控除説:国家作用から立法権と司法権を除いた残りの部分)の三権のみとなった。(地方自治は行政に属するのか議論がある)


 よって、侵略戦争や集団的自衛権を行使して他国防衛を行う組織は、9条2項の「陸海空軍その他の戦力」に該当し、違憲となる。現行憲法ではこれらの組織や権限については認められていないのである。


 ただ、13条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を「立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定められていることから、国政を担う『立法権』、『行政権』、『司法権』は、それら国民の権利を保障することを義務付けられているのである。

 このことから、国内行政の範囲で、「陸海空軍その他の戦力」に当たらない行政組織としての必要最小限度の実力を保有することは可能であると解される。


 そのため、国会は『立法権』を行使して軍事権に当たらない実力組織についての法律(自衛隊法や海上保安庁などの設置法)や、その権限について定めた法律を立法することができる。


 また、内閣や内閣以下の行政機関も『行政権』を行使して、それらの法律を軍事権に当たらない範囲で執行することが可能である。



大日本帝国憲法 全文

 

 下記の大日本帝国憲法の下線部は、日本国憲法では削除されている軍事関係の規定である。

 大日本帝国憲法から日本国憲法に改正される過程で、『天皇主権』から『国民主権』に変わっている。


 そのため、第二章「戦争の放棄」の章にあるように、その国民から国民主権の行使による「厳粛な信託(前文)」の過程で、日本国民が戦争を放棄したために、日本国憲法では軍事関係に関する規定が存在しないのである。

 大日本帝国憲法は、カタカナで非常に読みづらいため、「ひらがな・カタカナ変換ツール」で変換してみました。



   告文
皇朕れ謹み畏み
皇祖
皇宗の神霊に誥け白さく皇朕れ天壌無窮の宏謨に循ひ惟神の宝祚を承継し旧図を保持して敢て失墜すること無し顧みるに世局の進運に膺り人文の発達に随ひ宜く
皇祖
皇宗の遺訓を明徴にし典憲を成立し条章を昭示し内は以て子孫の率由する所と為し外は以て臣民翼賛の道を広め永遠に遵行せしめ益々国家の丕基を鞏固にし八洲民生の慶福を増進すへし茲に皇室典範及憲法を制定す惟ふに此れ皆
皇祖
皇宗の後裔に貽したまへる統治の洪範を紹述するに外ならす而して朕か躬に逮て時と倶に挙行することを得るは洵に
皇祖
皇宗及我か
皇考の威霊に倚藉するに由らさるは無し皇朕れ仰て
皇祖
皇宗及
皇考の神祐を祷り併せて朕か現在及将来に臣民に率先し此の憲章を履行して愆らさらむことを誓ふ庶幾くは
神霊此れを鑒みたまへ


   憲法発布勅語
朕国家の隆昌と臣民の慶福とを以て中心の欣栄とし朕か祖宗に承くるの大権に依り現在及将来の臣民に対し此の不磨の大典を宣布す
惟ふに我か祖我か宗は我か臣民祖先の協力輔翼に倚り我か帝国を肇造し以て無窮に垂れたり此れ我か神聖なる祖宗の威徳と並に臣民の忠実勇武にして国を愛し公に殉ひ以て此の光輝ある国史の成跡を貽したるなり朕我か臣民は即ち祖宗の忠良なる臣民の子孫なるを回想し其の朕か意を奉体し朕か事を奨順し相与に和衷協同し益々我か帝国の光栄を中外に宣揚し祖宗の遺業を永久に鞏固ならしむるの希望を同くし此の負担を分つに堪ふることを疑はさるなり


   大日本帝国憲法
朕祖宗の遺烈を承け万世一系の帝位を践み朕か親愛する所の臣民は即ち朕か祖宗の恵撫慈養したまひし所の臣民なるを念ひ其の康福を増進し其の懿徳良能を発達せしめむことを願ひ又其の翼賛に依り与に倶に国家の進運を扶持せむことを望み乃ち明治十四年十月十二日の詔命を履践し茲に大憲を制定し朕か率由する所を示し朕か後嗣及臣民及臣民の子孫たる者をして永遠に循行する所を知らしむ
国家統治の大権は朕か之を祖宗に承けて之を子孫に伝ふる所なり朕及朕か子孫は将来此の憲法の条章に循ひ之を行ふことを愆らさるへし
朕は我か臣民の権利及財産の安全を貴重し及之を保護し此の憲法及法律の範囲内に於て其の享有を完全ならしむへきことを宣言す
帝国議会は明治二十三年を以て之を召集し議会開会の時を以て此の憲法をして有効ならしむるの期とすへし
将来若此の憲法の或る条章を改定するの必要なる時宜を見るに至らは朕及朕か継統の子孫は発議の権を執り之を議会に付し議会は此の憲法に定めたる要件に依り之を議決するの外朕か子孫及臣民は敢て之か紛更を試みることを得さるへし
朕か在廷の大臣は朕か為に此の憲法を施行するの責に任すへく朕か現在及将来の臣民は此の憲法に対し永遠に従順の義務を負ふへし

御名御璽
  明治二十二年二月十一日
 内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
 枢密院議長 伯爵 伊藤博文
 外務大臣 伯爵 大隈重信
 海軍大臣 伯爵 西郷従道
 農商務大臣 伯爵 井上 馨
 司法大臣 伯爵 山田顕義
 大蔵大臣内務大臣 伯爵 松方正義
 陸軍大臣 伯爵 大山 巌
 文部大臣 子爵 森 有礼
 逓信大臣 子爵 榎本武揚




   大日本帝国憲法


   第1章 天皇

第1条 大日本帝国万世一系天皇之を統治す(⇒現 1条)
第2条 皇位皇室典範の定むる所に依り皇男子孫之を継承す(⇒現 2条、皇室典範1条)
第3条 天皇は神聖にして侵すへからす(⇒現 削除)
第4条 天皇は国の元首にして統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ(⇒現 4条)
第5条 天皇は帝国議会の協賛を以て立法権を行ふ(⇒現 削除、41条に近い)
第6条 天皇は法律を裁可し其の公布及執行を命す(⇒現 7条1
第7条 天皇は帝国議会を召集し其の開会閉会停会及衆議院の解散を命す(⇒現 7条2、3
第8条 天皇は公共の安全を保持し又は其の災厄を避くる為緊急の必要に由り帝国議会閉会の場合に於て法律に代るへき勅令を発す(⇒現 削除)
2 此の勅令は次の会期に於て帝国議会に提出すへし若議会に於て承諾せさるときは政府は将来に向て其の効力を失ふことを公布すへし(⇒現 削除)
第9条 天皇は法律を執行する為に又は公共の安寧秩序を保持し及臣民の幸福を増進する為に必要なる命令を発し又は発せしむ但し命令を以て法律を変更することを得す(⇒現 削除、76条6項が近い)
第10条 天皇は行政各部の官制及文武官の俸給を定め及文武官を任免す但し此の憲法又は他の法律に特例を掲けたるものは各々其の条項に依る(⇒現 7条5号)
第11条 天皇は陸海軍統帥(⇒現 削除)
第12条 天皇は陸海軍の編制及常備兵額を定む(⇒現 削除)
第13条 天皇は戦を宣し和を講し及諸般の条約を締結す(⇒現 削除、7条1号、8号、61条、73条3号)
第14条 天皇は戒厳を宣告す(⇒現 削除)
2 戒厳の要件及効力は法律を以て之を定む(⇒現 削除)
第15条 天皇は爵位勲章及其の他の栄典を授与す(⇒現 7条7号)
第16条 天皇は大赦特赦減刑及復権を命す(⇒現 7条6号)
第17条 摂政を置くは皇室典範の定むる所に依る(⇒現 5条)
2 摂政は天皇の名に於て大権を行ふ(⇒現 削除)


   第2章 臣民権利義務

第18条 日本臣民たる要件は法律の定むる所に依る(⇒現 10条)
第19条 日本臣民は法律命令の定むる所の資格に応し均く文武官に任せられ及其の他の公務に就くことを得(15条)
第20条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ兵役の義務を有す(⇒現 削除)
第21条 日本臣民は法律の定むる所に従ひ納税の義務を有す(⇒現 30条)
第22条 日本臣民は法律の範囲内に於て居住及移転の自由を有す(⇒現 22条1項)
第23条 日本臣民は法律に依るに非すして逮捕監禁審問処罰を受くることなし(⇒現 33条、36条)
第24条 日本臣民は法律に定めたる裁判官の裁判を受くるの権を奪はるヽことなし(⇒現 32条)
第25条 日本臣民は法律に定めたる場合を除く外其の許諾なくして住所に侵入せられ及捜索せらるヽことなし(⇒現 35条)
第26条 日本臣民は法律に定めたる場合を除く外信書の秘密を侵さるヽことなし(⇒現 21条2項後段)
第27条 日本臣民は其の所有権を侵さるヽことなし(⇒現 29条1項)
2 公益の為必要なる処分は法律の定むる所に依る(⇒現 29条3項)
第28条 日本臣民は安寧秩序を妨けす及臣民たるの義務に背かさる限に於て信教の自由を有す(⇒現 20条)
第29条 日本臣民は法律の範囲内に於て言論著作印行集会及結社の自由を有す(⇒現 21条1項)
第30条 日本臣民は相当の敬礼を守り別に定むる所の規程に従ひ請願を為すことを得(⇒現 16条)
第31条 本章に掲けたる条規は戦時又は国家事変の場合に於て天皇大権の施行を妨くることなし(⇒現 削除)
第32条 本章に掲けたる条規は陸海軍の法令又は紀律に牴触せさるものに限り軍人に準行す(⇒現 削除)


   第3章 帝国議会

第33条 帝国議会貴族院衆議院の両院を以て成立す(⇒現 42条)
第34条 貴族院は貴族院令の定むる所に依り皇族華族及勅任せられたる議員を以て組織す(⇒現 46条、14条2項)
第35条 衆議院は選挙法の定むる所に依り公選せられたる議員を以て組織す(⇒現 43条1項)
第36条 何人も同時に両議院の議員たることを得す(⇒現 48条)
第37条 凡て法律は帝国議会の協賛を経るを要す(⇒現 41条)
第38条 両議院は政府の提出する法律案を議決し及各々法律案を提出することを得
第39条 両議院の一に於て否決したる法律案は同会期中に於て再ひ提出することを得す
第40条 両議院は法律又は其の他の事件に付き各々其の意見を政府に建議することを得但し其の採納を得さるものは同会期中に於て再ひ建議することを得す
第41条 帝国議会は毎年之を召集す(⇒現 52条)
第42条 帝国議会は三箇月を以て会期とす必要ある場合に於ては勅命を以て之を延長することあるへし
第43条 臨時緊急の必要ある場合に於て常会の外臨時会を召集すへし(⇒現 53条、54条2項)
2 臨時会の会期を定むるは勅命に依る
第44条 帝国議会の開会閉会会期の延長及停会は両院同時に之を行ふへし
2 衆議院解散を命せられたるときは貴族院は同時に停会せらるへし(⇒現 54条2項)
第45条 衆議院解散を命せられたるときは勅令を以て新に議員を選挙せしめ解散の日より五箇月以内に之を召集すへし(⇒現 54条1項)
第46条 両議院は各々其の総議員三分の一以上出席するに非されは議事を開き議決を為す事を得す(⇒現 56条1項)
第47条 両議院の議事は過半数を以て決す可否同数なるときは議長の決する所に依る(⇒現 56条2項)
第48条 両議院の会議は公開す但し政府の要求又は其の院の決議に依り秘密会と為すことを得(⇒現 57条1項)
第49条 両議院は各々天皇に上奏することを得
第50条 両議院は臣民より呈出する請願書を受くることを得(⇒現 16条)
第51条 両議院は此の憲法及議院法に掲くるものヽ外内部の整理に必要なる諸規則を定むることを得
第52条 両議院の議員は議院に於て発言したる意見及表決に付院外に於て責を負ふことなし但し議員自ら其の言論を演説刊行筆記又は其の他の方法を以て公布したるときは一般の法律に依り処分せらるへし(⇒現 51条)
第53条 両議院の議員は現行犯罪又は内乱外患に関る罪を除く外会期中其の院の許諾なくして逮捕せらるヽことなし(⇒現 50条)
第54条 国務大臣及政府委員は何時たりとも各議院に出席し及発言することを得(⇒現 63条)


   第4章 国務大臣及枢密顧問

第55条 国務各大臣は天皇を輔弼し其の責に任す(⇒現 65条)
2 凡て法律勅令其の他国務に関る詔勅は国務大臣の副署を要す(⇒現 74条)
第56条 枢密顧問枢密院官制の定むる所に依り天皇の諮詢に応へ重要の国務を審議す


   第5章 司法

第57条 司法権は天皇の名に於て法律に依り裁判所之を行ふ(⇒現 76条1項)
2 裁判所の構成は法律を以て之を定む
第58条 裁判官は法律に定めたる資格を具ふる者を以て之に任す
2 裁判官は刑法の宣告又は懲戒の処分に由るの外其の職を免せらるヽことなし(⇒現 78条)
3 懲戒の条規は法律を以て之を定む
第59条 裁判の対審判決は之を公開す但し安寧秩序又は風俗を害するの虞あるときは法律に依り又は裁判所の決議を以て対審の公開を停むることを得(⇒現 82条)
第60条 特別裁判所の管轄に属すへきものは別に法律を以て之を定む(⇒現 削除、76条2項に近い)
第61条 行政官庁の違法処分に由り権利を傷害せられたりとするの訴訟にして別に法律を以て定めたる行政裁判所の裁判に属すへきものは司法裁判所に於て受理するの限に在らす(⇒現 削除、76条2項に近い)


   第6章 会計

第62条 新に租税を課し及税率を変更するは法律を以て之を定むへし(⇒現 84条)
2 但し報償に属する行政上の手数料及其の他の収納金は前項の限に在らす
3 国債を起し及予算に定めたるものを除く外国庫の負担となるへき契約を為すは帝国議会の協賛を経へし(⇒現 85条)
第63条 現行の租税は更に法律を以て之を改めさる限は旧に依り之を徴収す
第64条 国家の歳出歳入は毎年予算を以て帝国議会の協賛を経へし(⇒現 86条)
2 予算の款項に超過し又は予算の外に生したる支出あるときは後日帝国議会の承諾を求むるを要す(⇒現 87条2項)
第65条 予算は前に衆議院に提出すへし(⇒現 60条1項)
第66条 皇室経費は現在の定額に依り毎年国庫より之を支出し将来増額を要する場合を除く外帝国議会の協賛を要せす(⇒現 8条、88条)
第67条 憲法上の大権に基つける既定の歳出及法律の結果に由り又は法律上政府の義務に属する歳出は政府の同意なくして帝国議会之を廃除し又は削減することを得す
第68条 特別の須要に因り政府は予め年限を定め継続費として帝国議会の協賛を求むることを得
第69条 避くへからさる予算の不足を補ふ為に又は予算の外に生したる必要の費用に充つる為に予備費を設くへし(⇒現 87条1項)
第70条 公共の安全を保持する為緊急の需用ある場合に於て内外の情形に因り政府は帝国議会を召集すること能はさるときは勅令に依り財政上必要の処分を為すことを得(⇒現 削除、87条1項に近い

2 前項の場合に於ては次の会期に於て帝国議会に提出し其の承諾を求むるを要す(⇒現 削除、87条2項に近い)
第71条 帝国議会に於いて予算を議定せす又は予算成立に至らさるときは政府は前年度の予算を施行すへし
第72条 国家の歳出歳入の決算は会計検査院之を検査確定し政府は其の検査報告と倶に之を帝国議会に提出すへし(⇒現 90条1項)
2 会計検査院の組織及職権は法律を以て之を定む(⇒現 90条2項)


   第7章 補則

第73条 将来此の憲法の条項を改正するの必要あるときは勅命を以て議案を帝国議会の議に付すへし(⇒現 削除、96条に近い)
2 此の場合に於て両議院は各々其の総員三分の二以上出席するに非されは議事を開くことを得す出席議員三分の二以上の多数を得るに非されは改正の議決を為すことを得す(⇒現 削除、96条に近い)
第74条 皇室典範の改正は帝国議会の議を経るを要せす(⇒現 削除、2条に近い)
2 皇室典範を以て此の憲法の条規を変更することを得す(⇒現 削除、98条、96条に近い)
第75条 憲法及皇室典範は摂政を置くの間之を変更することを得す(⇒現 削除)
第76条 法律規則命令又は何等の名称を用ゐたるに拘らす此の憲法に矛盾せさる現行の法令は総て遵由の効力を有す(⇒現 98条)
2 歳出上政府の義務に係る現在の契約又は命令は総て第六十七条の例に依る