規範力の復元



 近年、政治の多数派が憲法を軽視しており、憲法の規範力が低下しているのではないかと指摘されている。憲法の規範力が低下することは、法の秩序の存立そのものを揺るがすものであるから、国民に対する人権保障の質が低下することに繋がる。


 ここでは、規範力を復元し、憲法秩序の質を取り戻すためにいかなる方法があるのか検討していきたいと思う。



 近年、規範力が低下ししていると考えられる規定として下記がある。


◇ 7条「解散」  →  (自由裁量となっていることが妥当であるか)
◇ 9条「規範性の枠からの逸脱」  →  (『存立危機事態』での『武力の行使』)

◇ 31条「適正手続きの保障」  →  (2014年7月1日閣議決定の論理的な瑕疵の是正)

◇ 41条「立法内容の明確性の趣旨」  →  (『存立危機事態』の要件の曖昧さ)

◇ 53条「臨時国会召集義務」  →  (召集遅滞)

◇ 99条「憲法尊重擁護義務」



 これらの規定の規範力を復元させるためには、「適正手続きの保障」の趣旨を示したとされる31条が主に「刑事手続き」を対象としていることを拡大させ、「行政手続き」についても適正な手続きに則って行われることを明文化するというのはどうだろうか。

 その他、考えられる是正方法を検討してみる。憲法秩序全体の規範力を保つために、総合的に考えていく必要があると思われる。ただ、同時にその手段の妥当性や弊害にも注意する必要がある。


「憲法付属法(国会法・内閣法など)での補完」
「憲法尊重擁護義務の具体的内容を法律で明示」
「適正手続き一般法の制定」

「抽象的違憲審査制の導入」

「行政事件訴訟の新たな客観訴訟の区分の創設」

「憲法訴訟の充実」

「憲法裁判所の設置」

「裁判所の統治行為論の否定」

「条文の規律密度の向上」

「憲法保障の機能強化」


 これらのうち、どの手段を、どのような形で導入すれば、憲法の規範力を向上させることができるだろうか。それとも、現在の状態で解釈や運用によって是正する方法はあるのだろうか。

 「適正手続きの一般法」を導入する案は、現在の「行政手続法」だけでは憲法の規範性を確保するためには守備範囲が狭く、対応できていないと考えるからである。


 また、「憲法改正の限界」を確定していく論点も必要ではないだろうか。これは、無理な憲法改正を試みたり、改憲が行われてしまった場合に、憲法への信頼や規範力が低下し、法秩序そのものの安定性が損なわれるからである。


 少なくとも、憲法改正の限界に関する一定の合意を見いだせるような論点整理が必要ではないだろうか。

 文言上の限界や、近代立憲主義の理念から導かれる限界など、丁寧にまとめ、日本国憲法上においてはどのような改正ならば許容されるのかなどを示したガイドラインが必要ではないだろうか。


 憲法改正の条文案を提示しようとする者に対して、憲法全体との整合性を保つためのガイドラインとなる情報源が必要となるのではないだろうか。


<理解の補強>

 手続法のアイディアに共通点があるかもしれない。

橋下徹「政府は沖縄の民意を無視するな」 切り札は「手続き法」の制定だ 2018.10.3





規範力の復元方法の検討


 憲法の規範力を復元する方法を網羅的にリスト化し、憲法の規範力を保つためにどの立ち位置にいる人であっても常に最善の方法を選択できるような基盤を確立していくべきではないか。


 下記の〇✕△は、検討中である。一つ一つの項目が、どのような結果となるのかを検討すると良いだろう。




◇ 7条解散は憲法学者「木村草太」の「衆議院解散の手続法」が参考になる。

木村草太の憲法の新手(105) 衆院解散の手続法を 内閣は議員に理由を説明すべき 2019年6月2日

内閣の衆議院解散権の根拠と制約 奥村公輔 2023.07.31


◇ 9条の憲法改正での対応については、「武力行使」について憲法上でポジティブリストで明記することは性質上馴染まないと考えられる。

◇ 53条後段については、少数派のための制度であるから、具体的な内容を多数決によって確定する法律という形式にはなじまず、憲法付属法での対応は不能と思われる。


◇ 53条後段違反については、法律によって罰則を設けることができるのか。国会法によって53条に違反した場合に内閣は総辞職しなければならないとする規定を設けることはできるだろうか。

◇ 「適正手続き一般法」の制定については、同時に行政事件訴訟法の客観訴訟に訴訟要件を加えることで、抽象的違憲審査を可能とする方法もあるかもしれない。

◇ 「適正手続き一般法」関連で、「憲法解釈の手続きの適正に関する法律」などをつくることはできるのか。

◇ 「憲法訴訟(抽象的違憲審査制)」について、他にも「裁判所法」を改正し、裁判所内部に「憲法裁判部」を設置して実現する方法もあるかもしれない。

◇ 99条については、法律によって罰則を付けることはできるのか。




その他の規範力を形成する方法で考えられるもの


〇 会計検査院による違憲審査
〇 国会での追及

〇 国民の追求

〇 メディアの追求

〇 国民やメディアによる監視
〇 請願
〇 選挙の際に憲法を守る政治家を選ぶこと
〇 公務員の適正な職務による抵抗

〇 憲法訴訟の提起
〇 国民への法教育の普及

〇 学者が憲法学の学問分野をさらに確立する

〇 メタ憲法学の理論を明鏡に解明し、規範力の根本問題をクリアに示す

〇 歴史的評価による批判
 





<理解の補強>

立憲的改憲 憲法の力を取り戻すために 山尾志桜里・衆院議員 2018年11月9日
「護憲」「改憲」の二元論を超えて 橋下徹 木村草太 2018/11/26
立憲主義貫徹のため 憲法裁判所設置を 山尾志桜里・衆院議員 2018年12月25日
「憲法尊重擁護義務」は平成で終わったのか(上) “立憲主義の柔らかいガードレール”が無力化されたわけと日本国憲法の現状を検証する 2019年04月29日


 「『憲法裁判所』という名前の独自の機関をつくるのではなく、現在の裁判所に憲法訴訟における訴訟機能を担わせることでよいのではないか」との意見がある。

 確かに、規範力を復元するために必要なことは、司法権の行使による判決を得ることであるから、「憲法裁判所」という名前の独自の機関をつくる必要はない。

 こうなると、「憲法裁判所の設置」という目標を掲げるよりも、「憲法訴訟法の整備」という方向性で論じることが妥当なのかもしれない。

 「憲法訴訟法の整備」であれば、国民の具体的な権利・義務に関わらない問題であっても訴訟を提起することができるよう整備することが可能である。また、「統治行為論」をどのように扱うかについても規定できるはずである。


 当サイトも、そこまでの高い精度で憲法訴訟に関する論点を扱うことができていない。今後、この辺も考えていく必要がある。


 憲法学者「長谷部恭男」の記述も参考にする。

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 かりに、最高裁の過度の多忙さが違憲審査機関としての機能低下を招いているのだとすれば、判例の統一を含めた上告審としての機能を切り出して、最高裁と現在の高等裁判所との間に設置される第三審裁判所にそれを託し、最高裁の役割を違憲審査権の行使に特化することも考えられる(宍戸常寿=林知更編『総点検 日本国憲法の七〇年』二三九頁[宍戸常寿])。この制度の改革に、憲法の改正は不要である。
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日本国憲法 長谷部恭男解説 岩波文庫 amazon (P193) (下線は筆者)

 

【動画】2023年度前期・九大法学部「憲法1(統治機構論・後半)」第8回〜裁判所⑤ 2023/07/18

 

イ 「最高裁判所憲法部」「特別高裁」の構想 PDF

第5回司法の抱える課題と目指すべき役割とは。 2018年5月14日



 憲法学者「高見勝利」の記事も確認する。

“憲法のご意見番”高見勝利氏が警鐘「徴兵制も現実の話になる」 2015/08/02

 憲法学者「宍戸常寿」の説明も確認する。


【動画】第7回憲法調査会「統治機構改革と憲法論議」 2020/11/16 (35:18)

【動画】第7回憲法調査会「統治機構改革と憲法論議」 2020/11/16 (1:17:33)

 



 

「具体的事件を離れて最高裁判所は抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるか」についての判決。


日本国憲法に違反する行政処分取消請求  最高裁判所大法廷 昭和27年10月8日



憲法に関する主な論点(第6章 司法)に関する参考資料 衆議院憲法審査会事務局 平成25年4月 PDF

第19回国会 衆議院 外務委員会 第1号 昭和28年12月11日(発言番号177)

第19回国会 衆議院 外務委員会 第1号 昭和28年12月11日(発言番号179)

第19回国会 衆議院 外務委員会 第1号 昭和28年12月11日(発言番号189)

第24回国会 参議院 予算委員会 第11号 昭和31年3月9日

第151回国会 参議院 憲法調査会 第9号 平成13年6月6日(発言番号16)

第151回国会 参議院 憲法調査会 第9号 平成13年6月6日(発言番号18)

 

前内閣法制局長官「津野修」 (政府答弁ではない)

第156回国会 衆議院 憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会 第3号 平成15年5月15日

 

憲法学者「宮沢俊義」 (政府答弁ではない)

第19回国会 衆議院 法務委員会上訴制度に関する調査小委員会及び違憲訴訟に関する小委員会連合会 第3号 昭和29年7月8日

第26回国会 衆議院 法務委員会公聴会 第3号 昭和32年4月11日

 

【動画】2023年度前期・九大法学部「憲法1(統治機構論・後半)」第10回〜裁判所⑦ 2023/07/24

【動画】2023年度前期・九大法学部「憲法1(統治機構論・後半)」第11回〜裁判所⑧ 2023/07/25



 裁判所において、「統治行為論」を採用して法的判断を行わないか、あるいは、「国家緊急権」として違法性を阻却することが妥当となると思われる事例。

 

【動画】国会中継 参議院 憲法審査会 2023/05/31





「適正手続き一般法」の検討


 国会や政府が「適正手続き」を怠った場合、国民がそれを訴訟に持ち込んで司法判断を下せるようにする法律上の制度を作ることはできないだろうか。


「首相、適正な手続き軽視」 facebook

 考えられる法律を検討する。

〇 法解釈の適正手続きに関する法律(適正手続き一般法を整備してその中に組み込むことが良いか)
〇 行政手続きの違法の審査に関する訴訟法(行政事件訴訟法に組み込むことが良いか)



 「法解釈の適正手続きに関する法律」を立法する場合を考える。

 有権解釈が行われる場合について、下記のような法解釈の
ルールを厳密に適用させることで、内閣の適正な手続きの基づかない勝手な解釈を制約するための法律である。


〇 
一般法と特別法の関係を整理
〇 後法優先の原則の確保
〇 事後法の禁止
〇 論理的整合性の確保

〇 法的安定性の確保

〇 31条の「適正手続きの保障」の趣旨は刑事手続きだけでなく、行政手続きにも及ぶ旨の明記


〇 「条約法条約(条約法に関するウィーン条約)」は参考になるか。「法解釈法」とでもいうものになるか。
〇 「『国家公務員法』に対して『検察庁法』は特別法の関係にある。」などの規定によって法令の関係性を明確にすることはできないか。国民が法解釈の誤りを発見した場合に、政府の行為が行政裁量の範囲を逸脱していることを理由として訴訟に持ち込む場合の基準とすることはできないか。また、訴訟に持ち込む場合の手続きを整備することはできないか。
〇 この法律案は議員立法によってしか成立させることができないのではないか。内閣提出法案となると、行政権を通すことになるため、法令の解釈権を有する行政としては解釈手続きをできるだけ自由にしておきたいはずだからである。
〇 裁判所が判決を下す場合、現在でもこれらの法の原則に従って法解釈を行っている。しかし、行政権がこれらの原則に基づかない形で法解釈を行った場合、国民が「法解釈の適正手続きに関する法律」に違反していることを指摘し、司法府による訴訟に持ち込める形にすることに意味があると思われる。

〇 「法解釈の適正手続きに関する法律」は、司法府が判決を下す際にも、それらの法解釈に対して適用されることになると思われる。この点、現在までに積み重ねられてきた司法府の高度な法解釈の論理を乱さない形で、この「法解釈の適正手続きに関する法律」によって包括的に整備することができるかを考える必要がある。



 行政権における有権解釈の適正な手続きを導くために、法解釈の基準を立法化しておくことには意味があると思われる。

 現在、政府解釈によって示された基準を参考に、「法解釈の適正な手続きに関する法律」を立法できないか検討する。

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 憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。
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政府の憲法解釈変更に関する質問に対する答弁書 平成16年6月18日


    【動画】小西洋之 vs スガ 学術会議「任命拒否」問題 11/5 参院・予算委 2020/11/05 (1:27:28)


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 また、お尋ねの「法的安定性」とは、法の制定、改廃や、法の適用を安定的に行い、ある行為がどのような法的効果を生ずるかが予見可能な状態をいい、人々の法秩序に対する信頼を保護する原則を指すものと考えている。仮に、政府において、論理的整合性に留意することなく、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、法的安定性を害し、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。
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七・一閣議決定の法的安定性と論理的整合性の意味等に関する質問に対する答弁書 平成29年6月27日

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    「行政権における有権解釈の適正な手続きに関する法律」の案

【立法趣旨】
 行政権により「憲法解釈を便宜的、意図的に変更」されることによって、「政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれ」ることを防ぐことを目的とする。


【定義】

 「『法的安定性』とは、法の制定、改廃や、法の適用を安定的に行い、ある行為がどのような法的効果を生ずるかが予見可能な状態をいい、人々の法秩序に対する信頼を保護する原則を指す」。

【内容】
 「法令の解釈は、」下記の点を踏まえて「論理的に確定されるべきもの」である。「法令の解釈は、」下記「のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではない」。
 ① 「当該法令の規定の文言、趣旨等に即」したものであること
 ② 「立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮」すること
 ③ 「議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つこと」

 ④ 「法的安定性を害し」ないこと


 法令解釈の内容について国会で疑義が示された場合には、政府は論理的な理由を示して説明を行わなければならない。

 論理的な理由を示す際には、文章によって説明を行うだけでなく、国会で要求があれば「全体集合、補集合、部分集合」などを示すベン図を用いるなど論理的な内容や意味の関係性を図示することによって国民に分かりやすい形で示さなければならない。

【訴訟法】

 行政府による有権解釈に疑義がある場合は、下記の者は裁判所に訴訟を提起することができる。

…………国会の要求があれば、……
…………有権者の地位によって、……

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 法令解釈の誤りが発見された場合には、その誤った法令解釈を是正する必要がある。その是正の手続きについては、会計検査院法の手続きを参考に設計するとよいのではないか。

 下記は、会計検査院が「正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を行(会計検査院法20条3項)」い、問題を発見した場合に「是正を図る(会計検査院法20条3項)」方法である。 


会計検査院法

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    第六節 雑則


第三十四条  会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる


第三十五条  会計検査院は、国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し、利害関係人から審査の要求があつたときは、これを審査し、その結果是正を要するものがあると認めるときは、その判定を主務官庁その他の責任者に通知しなければならない
○2  主務官庁又は責任者は、前項の通知を受けたときは、その通知された判定に基いて適当な措置を採らなければならない


第三十六条  会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。


第三十七条  会計検査院は、左の場合には予めその通知を受け、これに対し意見を表示することができる。
一  国の会計経理に関する法令を制定し又は改廃するとき
二  国の現金、物品及び有価証券の出納並びに簿記に関する規程を制定し又は改廃するとき
○2  国の会計事務を処理する職員がその職務の執行に関し疑義のある事項につき会計検査院の意見を求めたときは、会計検査院は、これに対し意見を表示しなければならない

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 立法趣旨には、「国民主権」の観点なども組み込むとよいのではないか。情報公開法などを参考にするとよいかもしれない。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律

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    第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする
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 行政手続法は、「処分、行政指導及び届出に関する手続」と「命令等を定める手続」について定めているようであるが、有権解釈を行う場合の手続きについては定めがないと思われる。

行政手続法

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    第一章 総則
(目的等)
第一条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする

2 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

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 行政手続法の内容も参考になるかもしれないが、行政手続法の中に「行政権における有権解釈の適正な手続きに関する」規定を置くか、行政手続法とは別に「行政権における有権解釈の適正な手続きに関する法律」を設けるかは検討する必要がある。


<理解の補強>

 

法解釈 Wikipedia
行政手続法 Wikipedia




 「法解釈の適正手続きに関する法律」は、行政府の有権解釈だけでなく、司法府の有権解釈である判決においても適用されることを考慮して整備する必要がある。ただ、「行政手続法」の中にこの趣旨を整備した場合には、通常行政権のみを拘束することになるとも思われる。

 

 

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○政府特別補佐人(津野修君) 先ほど内閣法制局の見解と言われましたけれども、これは政府の見解として基本的になっておりますので、その点はまず申し上げておきたいと存じます。

 ただいま御指摘の、一般論として政府の憲法解釈と申しますのは、これはその規定の文言とか趣旨とか等に即しながら立法者の意図あるいはその背景となる社会情勢等を考慮し、また議論の積み重ねのあるものについては、全体の整合性を保つことにも留意して論理的になされてきたものであります。政府が、こうした考え方を離れて自由に変更できるというような性格のものではないと私どもは考えております。

 お尋ねの集団的自衛権に係る憲法の解釈につきましても、これは過去、幾多の国会での議論の積み重ねによりまして、それで固まってきたものでありまして、その変更については十分慎重でなければならない非常に難しい問題であるというふうに考えております。

 そこで、何か法律をつくって、手続とか何かをつくって憲法解釈を変更するようなことをするのはどうかというようなお尋ねかと存じますけれども、これは国会の方でされるというお話だったようにお伺いしましたが、それは国会の方でそういう立法をされるということにつきましては、私どもはその国会の権能についてとやかく申すべき立場にはございませんので、それについては私どもの方からお答えをすることは差し控えたいというふうに存じます。

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第153回国会 参議院 外交防衛委員会 第4号 平成13年10月26日

 



<理解の補強>


安倍首相による検察、警察の私物化 新型コロナ危機の陰で進む民主主義・法の支配の崩壊 PDF

【動画】7回憲法調査会「統治機構改革と憲法論議」 2020/11/16 (39:49)

 





司法府が抽象的違憲審査制に踏み切るべき場合


 憲法違反をどのように是正することができるのか。どの段階でどのような形式で司法府は違憲訴訟を受け付けるべきなのか。


・国会が9条に反して「先に攻撃(先制攻撃)」や「侵略戦争」を許容する法律を立法した場合
・国会が15条3項に違反して公職選挙法を改正し、選挙年齢が5才児にまで引き下げられた場合
・国会が42条に違反して国会法を改正し、一院制や三院制に変更された場合
・内閣が53条後段の国会召集決定義務を無視し、国会を召集しなかった場合
・公務員による99条の憲法尊重擁護義務に対する明らかな違反が見られた場合

などが考えられる。

 これらが行われた場合に、司法府が具体的違憲審査制を採用していることを理由として訴訟を受け付けなかったり、憲法判断を行わなかった場合、憲法秩序が破壊される恐れがある。

 そのため、裁判所は抽象的違憲審査制を採用して訴訟を受け付け、憲法判断を行うべき場合があると考えられる。



<理解の補強>

 

【動画】残念な判断~受講生・受験生の皆さんへ第168弾 2023年2月17日

【動画】安保法制違憲訴訟全国の状況 ~各地からの報告 XVII 2023/03/09

【動画】安保法制違憲山梨訴訟控訴審における長谷部恭男教授証人尋問後の記者会見 2023.4.7

 




 下記は、当サイトの憲法の規範力の論点に関わるページである。