自民党 改憲案 9条2項 改正 法的分析等

 

 自民党の改憲案9条2項改正の具体案として挙げられた改正案について分析しようと思う。

 


 <2項を削除改正>
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第2章 戦争の放棄

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(改正)

2 日本国の独立ならびに国際社会の平和と維持に寄与するため陸海空3自衛隊を保持する。

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石破茂氏、9条2項改正で自衛隊明記を主張 国防軍は取り下げ 2017.9.5 22:24

 


 この改正案では、自衛隊はどの機関によって保持され、統制されるのか、よく分からない。自衛隊が完全に憲法上の根拠を持った独立の機関となり、法律による統制も存在しないため、国会の立法権も及ばなくなる。行政権としての内閣の指揮監督機能も存在しない。まるで第1章に置かれた「天皇」のような完全に独立した特殊な配置となると思われる。しかも、4条の「国政に関する権能を有しない。」などの文言も存在しないことから、国政に関する権能を持っている可能性がある。「三権分立の機関」+「国政の権能を有しない天皇」に匹敵する新たな特殊機関「自衛隊」となってしまう可能性がある。

 

 現行の法律の規定によって設置されている「自衛隊」という組織のイメージを引きずったままに改憲案を練っているように思われる。そのため、このような表面的で唐突な付加的な文言の規定となってしまうのだと思われる。人権保障実現への意志を軸とした憲法の統治原理の理念や精神から生み出される権限基盤が存在していない。

 この様子を例えるならば、「臓器移植」のようである。


 臓器とは、本来的に受精卵から細胞分裂を経て、様々な分化の過程を経た上で、全体の調和の中に生み出されるものである。そのため、身体の成長や体調の変化に合わせ、全体の機能調整の中に様々な変化に対応しながらその役割を果たしているのである。

 しかし、この規定は、既に存在している「自衛隊」というものを単に憲法規定に移植しようとしているものであり、憲法理念という身体の健全な機能に調和的に創造された機能を有していない。現実の臓器提供が悪いと言っているわけでは全くないが、本来的に異質なものを、自分の細胞の細胞分裂と進化の過程を経たものではないものを組み入れることは、身体に適合しなかったり、身体機能のバランスを崩してしまう危険性が大いに考えられる。つまり、憲法理念の派生形として憲法秩序から生み出したものでないものを、単に憲法に移植しようというのは、その発想に安易さが見えるのである。

 この規定がたたき台であるにせよ、「既にあるものを、取って付ければよい。」との安易な考えでは身体機能に大きな障害を与えることとなる。「怪我の手当てだけを考える西洋医学」だけでなく、「身体機能の全体のバランスを考える東洋医学」の精神も学んでほしいものである。この両者の視野を有せずに、怪我の手当てだけを考えているならば、そもそも目指していた健康な身体を忘れてしまうこととなり得る。

 参考になるかもしれないので、神経学、脳外科医の話を紹介する。

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そういう考え方の方向性、論理性を、あるいは科学性を見失わないために「発生学」というのが必要なんですね。つまり人間の脳は、どのように動物が進化するにつれて発達してきたのか。または生物自体が、恐らく最初の一個のDNAの断片からどういうように発達してきたのか。そういう生命の歴史というものを考え、その頂点に脳というものがあるわけです。だから脳というのは、何もそのもの自体が最初から出発したわけじゃないんで、体とのつながりを欠いた脳というのは、全く無意味であると。
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心はいかにして生まれるのか―脳外科と仏教の共鳴



 また、この規定は、「戦争の放棄」という名称の第2章とは関係ない。この改正が行われると、第2章の趣旨が完全に変容するため、この第2章の名称変更が必要となる。それについて具体案が挙げられていないことは不備だろう。この点の辻褄が合わないまま改正した場合、改正の後に批判の対象として追及され続けることとなると思われる。


 2項を削除して改正したことから、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」の規定の効力がなくなってしまうこととなる。そのため、自衛隊以外の新たな武力組織が法律によって創設された際に、それは自衛の範囲を超える侵略戦争としての「戦力」を保有することも当然に可能となると考えられる。なぜならば、9条1項は「国権による戦争」や「武力の行使」などを禁止しているに過ぎないからである。保有については何らの歯止めもないからである。よって、攻撃型空母や海外派兵の装備など、自衛の範囲を超える戦力を保有する道を開くこととなる。その点、歯止めがなくなってしまい、自衛隊も攻撃的な組織へと変質させる意図があると考えることが妥当だろう。



 そもそも、禁止規定である2項の「戦力」にあたらない範囲で、13条の精神を根拠として「自衛隊」という組織を誕生させたわけである。この9条2項を削除改正し、自衛隊を明記したならば、「戦力の保持」を禁止する規定が存在しなくなってしまう。すると、その後に法律によって「国防軍」を設置することも当然に可能となってしまう。自衛隊以外にも、完全な戦力としての装備を備えた武力組織の保有が許されることとなるのである。


 となると、何のために「自衛隊」を憲法規定として明記したのか意味が分からなくなってしまう。現行2項を削除して改正すると、法律によって国防軍を誕生させる道を開くからである。

 率直に言って、何がしたいのか謎である。自衛隊とは一体何だったのか。その枠組みがないのである。



 いや、もしかすると、この陸海空3自衛隊は、天皇が「統帥権」を行使してコントロールするのかもしれない。天皇は「国政に関する権能を有しない。(4条)」とされてはいるが、明治憲法下では、統帥権は天皇の大権と規定されており、一般の国務から独立するとされていた。内閣、行政の圏外に置かれていたのである。つまり、立法、行政、司法の三権に属さない権限である。そのため、「国政に関する権能」に該当しないとされる可能性があり、天皇の統帥権の復活もありうると考えられる。


 イギリス軍の最高指揮権は、君主にある。これを想定している可能性がある。

イギリス軍 Wikipedia



 内閣の『行政権』の行使による自衛隊の活動ではなく、天皇の『統帥権』による自衛隊の活動となる可能性がある。

 


 ただ、もう一度初めに戻って考えるべきことは、日本国憲法の第二章「戦争の放棄」の章は、三権の中でも行政権だけを対象とした禁止規定としてつくられているわけではないことである。明治憲法下でもそうであったように、「天皇」の権限による「戦争、武力による威嚇又は武力の行使、陸海空軍その他の戦力、交戦権」は当然否定しているし、行政権によるそれらももちろん禁止しているし、立法権や司法権によるそれらも禁止しているのである。それを、あたかも行政権や統帥権の範疇として自衛隊を明記するなどということは、禁止規定としてつくられた規定の効果のもともとの意味を分解して解体させる改正に他ならないのである。憲法中の権限がいかなる仕組みによってつくられているのか、学び直しが必要であると思われる。

 


 お読みいただきありがとうございました。


<理解の補強>


 当サイトとは見解が異なるものも含まれています。あくまで「理解の補強」のための材料です。

憲法9条の主語と自民党憲法改正案について~憲法9条解釈論その2~ 2017年05月11日

改憲に「自衛隊」の3文字が必要ない理由 2017年10月20日
⇒ 国際法を遵守することで憲法上の9条の制限を外してもいいなどと考えるているようである。しかし、この主張は、国内の憲法上で完結した法体系を整えておくことで、国際機関の廃止・新設・国連憲章の改正・加盟国の大幅な脱退による機関の性質の変容などによる国際法の新設、定義変更、変遷、解釈変更、改廃などの侵害から日本の『主権(国家権力の最高独立性の意味)』を守り通すことができるという重要な問題について混乱した理解が見られる(詳細は今後も検討中)。ただ、憲法中に三権分立の機関以外の組織を具体的に明記することに対して反対している点は当サイトも同じ立場であり、大いに賛同できると思われる。


憲法に明記すべきは「自衛隊」ではなく「軍隊」という語ではないか 2017年10月14日 


抵抗の憲法学 Wikipedia

 これは、中立性や学術性にやや疑問を持たざるを得ない内容の記述が含まれていると思われる。上記ブログと内容が重なるため、ここに記載することとした。


 当サイトは、Wikipediaへのリンクを多用しておりますが、Wikipediaの記載が必ずしも正しいものではないことを前提としてお読みいただければと思います。Wikipediaの中には、間違った理解によるものや、中立公平な立場で記載されていないもの、情報が完全でないものなどがあります。


憲法研究者に対する執拗な論難に答える(その1)――「9条加憲」と立憲主義 2017年10月16日

篠田英朗著『ほんとうの憲法』への反論 2017年08月24日

水島朝穂氏による篠田英朗氏への反論が痛快 2017年10月16日

水島朝穂氏による篠田英朗氏への批判 読後感 2017年10月19日


2017衆院選 改憲論議本格化へ 2017年10月25日

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