内閣の53条「臨時会召集決定義務」違反


 53条「国会召集決定義務」に違反している内閣が存在している。この行為が法秩序において許容されるのか、考えてみよう。


 まず、53条の条文を確認する。

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第53条 〔臨時会〕

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。

いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない

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 「53条は期限を定めていないため、召集時期は内閣の裁量である」との主張や、「53条で期限を定めていないのは、現行憲法の不備である」との主張が見られる。しかし、それは次の2つの論点の理由で妥当でないと思われる。


 ①「義務規定であることの論点」

 ②「内閣の裁量権の有無に関する論点」


 この2つの論点について、下記で詳しく解説する。

 

① 義務規定であることの論点

 

 憲法中の53条の「しなければならない。」と同じような文言を参考にしながら、この規定を無視しても構わないのかを考えてみよう。


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しなければならない
なければならない

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 これらは義務規定と解される。


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(しては)ならない

~ない
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 これは禁止規定と解される。



 53条を無視するならば、現行憲法のこれらの文言の規定をすべて無視した場合に、法秩序が成り立ちえるのか考えてみた方がいいだろう。法秩序を成り立たせるためには、罰則がないからといって、条文を無視していいということにはならない。


 下記に、53条と同じような文言の「しなければならない」「なければならない」の条文を列挙する。

 


日本国憲法

 

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。



第一章 天皇

〔財産授受の制限〕
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない


⇒ この規定を無視した場合、罰則はないけれども、天皇が権力を握ることとなり得る。これは、象徴天皇制を逸脱する行為となり得る。


第二章 戦争の放棄



第三章 国民の権利及び義務

〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

⇒ 罰則はないが、人権は不断の努力によって保持しなければ、憲法の正当性の効力基盤自体が失われてしまう性質であるため、国民に対して義務的な記載をしていると考えられる。


〔公務員の選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障及び投票秘密の保障〕
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

⇒ 罰則がないからといって、選挙における投票の秘密を侵してもいいわけではない。

〔思想及び良心の自由〕
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない


⇒ 罰則や具体的な法律がないからといって、このような禁止規定を侵すようなことをしてはならない。これに関しても、国の権限に裁量の余地があるというものではない。

〔信教の自由〕
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない

⇒ 罰則がないからといって、国は宗教団体に特権を与えたり、政治上の権力を行使させるようなことをしてはならない。これも、内閣に裁量の余地があるというものではない。
⇒ 罰則がないからといって、国及びその機関が、宗教教育やその他の宗教的活動を行ってはならない。

〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない

⇒ 罰則がないからといって、検閲をしていいわけではないし、通信の秘密を侵していいということにはならない。

〔家族関係における個人の尊厳と両性の平等〕
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない

⇒ 婚姻制度が、夫婦が不平等な状態で、使用人や奴隷のような関係になってはならず、「相互の協力により、維持」されなければならないことを示していると考えられる。
⇒ 違憲審査はあるはずであるが、罰則がないからといって、国会は「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚」していない法律を立法してはいけない。


〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

⇒ 努める義務を置き、国民の人権保障実現のために尽力するように義務を課している。

〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止〕
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない


〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。


〔財産権〕
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

⇒ 罰則がないからといって、財産権を侵すようなことがあってはならない。

〔抑留及び拘禁の制約〕
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない


⇒ 拘禁の理由について要求があったのにもかかわらず、罰則がないからといって、公開の法廷で示されないなんてことがあってはならない。


第四章 国会

〔議員及び選挙人の資格〕
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない

⇒ 罰則がないからといって、差別するようなことがあってはならない。

〔議員の不逮捕特権〕
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない

⇒ 罰則がないからといって、会期前に逮捕された議員を、議員の要求があったのにも関わらず、行政機関が釈放しないなんてことがあってはならない。

〔臨時会〕
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない


⇒ この条文を理解する上で、70条の文言を見てみよう。70条には、「内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。」とある。普通に読めば、「召集があった時は総辞職しなければならない。」と読める。これと同じように、この53条の規定でも、「要求があれば、召集を決定しなければならない」と読むのが妥当だろう。これは、直ちに決定しなければならないものであり、内閣に選択の余地や裁量の余地は想定されていないと考えられる。なぜ国会自身が召集の権限を持っていないかというと、国会の召集権限それ自体は7条2号によって天皇が有しているからである。天皇の国事行為は「内閣の助言と承認(7条)」が必要なため、内閣は、直ちに召集を決定しなければならないことを定めたと読むことが妥当であると考える。

 これを無視した場合、70条の規定も同じように、「総辞職しない」「特別の事情があるので総辞職しない」などと言い張ることもできることとなる。憲法無視は、政権が法の支配、立憲主義、憲法の下を逸脱し、独裁化するのである。これは国民の人権保障実現を目的としてつくられた法の精神を踏みにじるものであり、為政者の恣意的な都合が優先される人治主義である。

〔総選挙、特別会及び緊急集会〕
第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

⇒ 罰則がないからといって、選挙の日から30日以内に国会を召集しないなんてことがあってはならない。

〔会議の公開と会議録〕
第五十七条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない

⇒ 罰則がないからといって、公表できる会議の記録を一般に頒布しないことがあってはならない。

〔衆議院の予算先議権及び予算の議決〕
第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

⇒ 罰則がないからといって、予算を衆議院ではなく参議院に先に提出してはならない。

〔国務大臣の出席〕
第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない


⇒ 罰則がないからといって、出席を求められた場合には出席を拒んではならない。


第五章 内閣

〔内閣の組織と責任〕
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

⇒ 罰則がないからといって、「文民」の規定を無視してはいけない。

〔国務大臣の任免〕
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

⇒ 罰則がないからといって、過半数以上の大臣を国会議員から選んではいけない。

〔不信任決議と解散又は総辞職〕
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない

〔内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による総辞職〕
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない


⇒ 国会の召集後に、罰則がないからといって、総辞職を拒むようなことがあってはいけない。


第六章 司法

〔最高裁判所の規則制定権〕
第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

⇒ 罰則がないからといって、検察官が最高裁判所の定める規則に従わないことがあってはならない。

〔対審及び判決の公開〕
第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない


⇒ 罰則がないからといって、裁判所が「政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件」について、非公開とすることがあってはならない。


第七章 財政

〔財政処理の要件〕
第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない

⇒ 罰則がないからといって、財政を処理する権限を国会の議決に基づかないような行使の方法をしてはならない。

〔予算の作成〕
第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない


⇒罰則がないからと言って、予算を国会に提出しなかったり、審議のないままに議決をするようなことがあってはならない。

〔予備費〕
第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない

⇒ 罰則がないからといって、予備費の支出について、事後に国会の承諾を得ないなんてことがあってはならない。

〔皇室財産及び皇室費用〕
第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない

⇒ 皇室費用について、罰則がないからといって、国会の議決を得ないままに利用されてはいけない。国民の税金である。

〔公の財産の用途制限〕
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない

⇒ 罰則がないからといって、拘禁その他の公の財産を宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出したり利用に供していいわけではない。

〔会計検査〕
第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

⇒ 罰則がないからといって、国の収入支出の決算を国会に提出しないことがあってはならない。

〔財政状況の報告〕
第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない


⇒ 罰則がないからといって、内閣が国の財政状況について、国会と国民に対して報告を怠ってはならない。


第八章 地方自治



第九章 改正

〔憲法改正の発議、国民投票及び公布〕
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


⇒ 罰則がないからといって、国民に提案せず、国民の承認を経ないままに憲法改正が行われてはならない。



第十章 最高法規




② 内閣の裁量権の有無に関する論点

 
 53条【後段】の規定に、内閣の裁量が存在するかどうかを検討する。

 まず、なぜ53条が「内閣」に対して、「その召集を決定しなければならない」と定め、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求(53条後段)」という権限から直接、「国会を召集」することができないのかというと、国会の召集には「天皇」の国事行為(7条2号)が求められ、その行為は「内閣の助言と承認(7条)」を必要とするからである。

 53条の「内閣は、その召集を決定しなければならない。」の『決定』は、7条の天皇に対する「助言と承認」に繋がるものである。7条2号の「国会を召集すること。」という天皇の国事行為を求める決定なのである。

 

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    第四章 国会


〔臨時会〕

第53条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。

いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

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 内閣は、53条【前段】の「召集を決定」、または53条【後段】の「召集を決定」を行い、天皇に「助言と承認」を行う。

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    第一章 天皇


〔天皇の国事行為〕
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
 二 国会を召集すること。
 三 衆議院を解散すること。
 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
 七 栄典を授与すること。
 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
 九 外国の大使及び公使を接受すること。
 十 儀式を行ふこと。
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 7条2号の天皇の国事行為が行われ、国会が召集される。

 

 

 53条を【前段】と【後段】に分けて詳しく見てみよう。

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53条【前段】 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。 (←内閣の裁量)

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 【前段】の臨時会の召集時期は、「内閣」の自由裁量である。いつの時点で召集をするか、「内閣」が決定することができる。

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53条【後段】 いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。 (←いづれかの議院の総議員の四分の一以上の者たちの裁量)

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 【後段】の臨時会の召集時期は、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちの自由裁量である。いつの時点で召集するかを決定するのは、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上」の者たちである。しかし、召集それ自体は「天皇」の国事行為であるため、内閣による天皇への「助言と承認(7条)」が必要となる。そのため、53条【後段】は、内閣に召集の決定を裁量の余地なく求めた規定であり、内閣は要求があれば直ちに召集を決定しなければならないと読むことが妥当であると考えられる。



 この53条【後段】の中に、
「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの裁量」と、「内閣の裁量」との二重の裁量が含まれるとは読むことはできないと考える。


 53条【後段】について、これはおかしい。
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 「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの裁量」
    +
 「内閣の裁量」
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 なぜならば、「内閣の裁量」は、53条【前段】に既に規定されており、召集時期を決定できる裁量を有しているからである。



 もし53条【後段】の中に「「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの要求」を一定期間留めたり、断ったりする権限を有していると考えるにしても、それは、53条【後段】の規定が存在しない場合に、現実の政治の中で議院の議員からの要求にがあった際にも、53条【前段】の「内閣の裁量」による権限を不行使とすることが可能となるに留まり、53条【後段】の規定が存在するにも関わらず、「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの要求」があった時点で重ねて「内閣の裁量」が持ち出されることは不自然と言うべきである。


 53条【後段】は、そのような「内閣による権限の不行使」を行わせないために設けられたものと解することが自然であり、53条【後段】の「『いづれかの議院の総議員の四分の一以上』の者たちの要求」があった時点で、直ちに召集を決定し、国政の中で唯一「内閣」に託された天皇への「助言と承認(7条)」による国事行為の実施を決定しなければならないものと言うべきである。

 

①と②の評価


 ①「義務規定であることの論点」より、内閣は「しなければならない。」という義務規定を自由裁量や努力義務と解したり、もっぱら無視したりすることは、憲法秩序を不安定化させるために行ってはならず、違法なものと言うべきである。


 ②「内閣の裁量権の有無に関する論点」より、53条【後段】に、内閣の裁量の余地があるとは考えられず、これを無視したことは違法なものと言うべきである。



 さらに、高度に政治的な問題であることを理由とする「統治行為論」により裁判所が憲法判断を回避することが考えられるが、内閣の53条違反は「一見明白に違憲な行為」と解することができ、憲法判断するべきであると考えられる。また、「憲法の一義的な文言に背く」ことにも該当すると考えられ、憲法判断を行う必要は

高いと考えられる。

 


<理解の補強>

 
臨時会 Wikipedia

安倍政権が臨時国会を開かないのは憲法違反である 2015/10/24

臨時国会の召集義務に「応じない」内閣 憲法違反では? 憲法53条を見てみると……。 2017/07/1

衆院解散、やっぱり無視できない「憲法上の疑義」木村草太が説く 解散権濫用を防ぐ「3つの対応策」とは 2017/9/25
木村草太の憲法の新手(60)加計学園問題と国会召集 速やかな召集 立法化を

臨時国会のない秋――安倍内閣の憲法53条違反

「国難」という謳い文句はナチスも使った 権謀術数の衆院解散で問われているもの

ルールを決めても、守る意志がなければ意味がない。

憲法53条を妨害する理由での解散?

[1]すべての人が負けたのだー安保法制 2016年02月23日
国会を開かないのは違憲の「非常事態」だ 2015年10月23日


臨時国会先送りは違憲 立憲議員が提訴 2018年2月26日
国会召集放置、違憲と提訴 立民議員が国に賠償請求 2018/2/26
「国会召集応じず違憲」=立憲議員、国を提訴-岡山地裁 2018/02/26

本日、岡山地方裁判所に憲法53条違憲国家賠償請求の提訴を行い、その後記者会見を行いました。  2018年02月26日
臨時国会先送り「違憲」 立民議員、53条解釈巡り提訴 2018年2月26日

【詳しい】憲法53条違憲国家賠償請求訴訟の意義  2018 03.04

国会召集3カ月放置訴訟で初弁論 国争う姿勢 岡山地裁 2018.5.15

「憲法守らない総理が改憲議論、非合理的」国民・大塚氏 2018年5月17日

臨時国会先送りは違憲か 2018-05-25

違憲訴訟提起の報告(憲法53条違反) 2018.05.28

党基本情報 憲法に関する考え方 ~立憲的憲法論議~ 立憲民主党 2018年7月19日

「政府は先行する岡山訴訟において、」 Twitter 2018年9月14日
昨年臨時国会めぐり無所属参院議員が提訴 3カ月後の召集「違憲」主張 2018.9.14

「臨時国会を召集しなかったのは違憲」参議院議員が提訴 2018年9月14日

憲法保障による是正方法

 

 憲法は国民が国に求めた条文である。これを内閣が無視しているというのは、内閣が国民の求めに明白に背いたことになる。これは、「野党の要求」というような憲法下でなされる国会の政治的な問題ではなく、憲法という国民の求めた最高の法に背いたということである。


 このような憲法無視が横行した場合、裁判所が違憲審査で是正することができるのかどうかも真剣に考えていかなければならないだろう。また、憲法理念を守ろうとする憲法保障の観点から、裁判所が法律上の争訟(①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、②法律の適用によって終局的に解決できるもの)以外の抽象的な審査によって国会や内閣の憲法無視の横行を是正することができるのかを考えていく必要もあるだろう。(処分の不作為)


 また、違憲審査した際に、どのように是正するのか、その有効性についても判断をしなくてはならないはずである。国家賠償によって国に損失を与えることになるのだろうか。しかし、誰に対して金銭賠償をするのだろうか。司法府による違憲審査によって違憲性が決定された場合には、内閣総辞職や国会の解散がなされるべきなのだろうか。刑法的な罰則に値する規定を設け、憲法保障機能を強化できるものなのだろうか。



 憲法保障の手段を考えてみよう。



 

〇 〔宣言的保障〕の部分は、『事前的保障手段』であり、法の根幹に関わる非常に重要な意味を持っているが、法への信頼を保とうとする者の心構えを刺激することしかできず、今回の件を是正する力にはならない。


〇 〔制度的保障〕について、『事前的保障手段』の「権力分立制」は、三権分立は保たれているが、今回の件を直接是正するものではない。『事後的保障手段』の「違憲審査制」は、今回の件を実効的に是正する唯一の方法であると考えられる。

〇 〔手続的保障〕の「硬性憲法」は、『事前的保障手段』であり、今回の件を直接是正する力とはならない。将来同じような事態が起きることを防ぐために条文改正を検討することは可能である。ただ、現在の53条でも十分に明確であると考えられるが、現在よりもさらに明確な内容の規定へと改正したとしても、もともと法を無視した際に、その行為を是正する手続きが定められていなければ、その改正された新53条も実効性をもたないのである。よって、最終的には〔制度的保障〕の「違憲審査制(81条)」に頼らざるを得ないのである。


〇 上記に挙げた憲法典に定めのある【憲法内保障】ではなく、【超法規的憲法保障】については、「抵抗権」と「国家緊急権」がある。


 内閣の53条を無視した行為が、「国家緊急権」として憲法上の根拠なく、現実の必要性から行われた超法規的措置である可能性は検討の対象となる。しかし、憲法秩序を保障するための目的で行使されたやむにやまれぬ行為でなければ、違憲・違法性を免れることはできない。「国家緊急権」は憲法上の根拠がないのであるから、その行為の違法性は裁判所で判断される事柄となる。よって、〔制度的憲法保障〕の「違憲審査制(81条)」に行き着くこととなる。


 「抵抗権」については、人権が憲法以前に人に本来的に備わっているとする自然権思想を基に導かれる。ただ、この趣旨は直接国家を破壊したり、暴動によって制圧することに繋がるわけではない。自然権思想を条文に組み込んでいると考えられる12条の趣旨より、国民の「不断の努力」によって憲法保障を実現していく意志を持つことが求められると考えられる。ただ、これは現段階では〔宣言的保障〕に行き着くもので、法整備の実現などに向かって努力していくことを促されていると見るべきだろう。

憲法訴訟の理解

 

 下記は、今回の53条の件を直接取り扱うものではないが、憲法訴訟について理解を深めることができると思われる。いくつか資料を集めていこう。


青井未帆
憲法訴訟・憲法判断について考える 信州大学リポジトリ
【動画】青井未帆「裁判所の果たす役割」 2017/03/10

憲法判断をめぐる司法権の役割について : 安保法制違憲国賠訴訟を題材に 青井未帆 学習院大学リポジトリ


古賀茂明
「集団的自衛権違憲判決を阻止するための改憲を報じないメディア」 古賀茂明 2018.2.5


高橋和之
【書籍】体系 憲法訴訟 高橋和之 2017/04/27
【立ち読み版】体系 憲法訴訟 高橋和之 2017/04/27 PDF


司法消極主義の弊害について
自民案、立憲主義に逆行 核心評論「憲法改正」 2018年5月3日

法秩序の実現


 このようなことが横行し、法秩序への信頼が脅かされてしまったりすることがないように、日本国憲法制定時に「憲法を正しく運用」することが大切であることが発せられている。

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日本国憲法公布記念式典の勅語(昭和21年11月3日)


 本日、日本国憲法を公布せしめた。
 この憲法は、帝国憲法を全面的に改正したものであつて、国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によつて確定されたのである。即ち、日本国民は、みずから進んで戦争を放棄し、全世界に、正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し、常に基本的人権を尊重し、民主主義に基いて国政を運営することを、ここに、明らかに定めたのである。
 朕は、国民と共に、全力をあげ、相携へて、この憲法を正しく運用し、節度と責任とを重んじ、自由と平和とを愛する文化国家を建設するやうに努めたいと思ふ。

 朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第73条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
 御名 御璽
    昭和21年11月3日
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日本国憲法 参議院

 法秩序のへの信頼を失わせるような形で法を利用することは、そもそも正義と秩序を実現しようとする国家設立の意志に反するのである。これは、民法で表現するならば、第一条の信義則違反に該当するような行為である。ただ、憲法の効力基盤は、民法のように憲法を基にした立法によってできた法律の条文上にあるわけではなく、国民の支持や法秩序への信頼によってつくられているものである。それを破壊するような法運用を行う者に対しては、三権分立の上にある最高権力である国民が是正していく必要がある。