人権と同じような言葉



 憲法を勉強する際、これらの言葉がよく分からないと、躓いてしまう。だから、一度ここで整理してみよう。


〇 基本的人権(11条、97条)

一人ひとりの人が本来的に持っているとして合意されているとされる、他者に侵害されない自由である。

 

〇 人権(憲法中にはない)

基本的人権とほぼ同じ意味である。基本的人権という言葉は、人の持つ自由を包括した言葉であるが、人権という言葉では、基本的人権の中に含まれる一部分の自由を限定して抜き出して示す際にも使われることがある。

人権 Wikipedia


〇 基本権(憲法中にはない)

基本的人権、人権とほぼ同じ意味である。

 

〇 権利(憲法中に22回)

人権を根拠に導き出された自由の中から、その一部分を取り上げて示すことが多い言葉である。『〇〇することができる力』というように、個別の許可された正当性のある力を示す際に使われることもある。

権利 Wikipedia

 

〇 ~~権

 

〇 自由(憲法中に11回)

自由は禁止されず侵害もされない思うままにできる状態である。権利は上記を参照。

自由 Wikipedia

自由権 Wikipedia

〇 ~~の自由


〇 個人の尊重(13条に「個人として尊重される」として登場)

人権概念が一人ひとりを基礎とする単位であることを示す言葉である。現在の人権概念と同じ範囲を示すので、ほぼ同じ意味として使われている。しかし、もし『個人の尊重』という言葉がなければ、人権として保障される自由の概念が『家族』を単位とされてしまったり、『クラス学級』や『会社組織の構成員全体』を単位とされてしまう恐れがある。現行憲法では『法人』に対しても性質上可能な限り保障がおよぶとされて運用されているが、人権の基礎的単位は個々人であることをこの言葉で明確にしている。

 

〇 個人の尊厳(24条2項)

上記と同じ意味であると考える。

個人の尊厳 Wikipedia

〇 主権(前文、1条)

 

前文 「ここに主権が国民に存することを宣言し」
前文 「この法則に従ふことは、自国の主権を維持し」

  1条 「主権の存する日本国民」


「主権」の三つの意味

① 最高機関の地位(最高決定力)「国民主権」

 

② 統治権(対内主権

 

③ 最高権(対外主権


主権 Wikipedia

〇 公共の福祉(12条、13条)
公共の福祉 Wikipedia


 ついでに考えてみよう。憲法中のこれらは、同じ意味なのか?

〇 ~~ことができる。
〇 ~~の自由を有する。
〇 ~~の権利を有する。





〇 「侵すことのできない永久の権利(11条、97条)」

これは、人権の一般原理を表している言葉であると解される。

人権の一般原理とは、普遍性、不可侵性、永久性、固有性であるとされる。


 

「基本的人権」と「自由及び権利」



 「基本的人権」と、「自由及び権利」は、同じ意味だろうか。ちょっと考えてみよう。

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〔基本的人権の由来特質〕

第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 

〔基本的人権〕

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 

〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

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 基本的人権とは、第三章「国民の権利及び義務」に列挙された自由及び権利をまとめて「基本的人権」と呼んでいるのではないか。

 自由及び権利とは、第三章「国民の権利及び義務」の中に列挙された個別の自由や権利について表現しているのではないか。

 ただ、これを明確に区別したところで、何か有益な分類を明確に設けることができるという性質のものではないと思われる。おおよそ「人権」として保障される対象を指し示すにすぎず、その言葉自体に厳密な定義を与えて区別することを目的とした概念ではないと思われる。



 下記に、「基本的人権」、「自由及び権利」について、太字で示してみた。ただ、「権利」「権」という文字を持っていない条文もある。


 また、国に対して「してはならない」、「侵してはならない」という風に要求することで、間接的に国民の自由や権利を守ろうとするものもあり、やはり「自由」や「権利」の文字が重要な意味を持つものではない。

 「権」という文字が入っていても、「権力」「権限」など、国の統治機関などの力を示したものもある。この点、「自由や権利」と混乱を招かないように注意したい。


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    第3章 国民の権利及び義務


〔国民たる要件〕
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

〔基本的人権〕
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

〔個人の尊重と公共の福祉〕
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

〔平等原則、貴族制度の否認及び栄典の限界〕
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

〔公務員の選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障及び投票秘密の保障〕
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

〔請願権〕
第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

〔公務員の不法行為による損害の賠償〕
第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

〔奴隷的拘束及び苦役の禁止〕
第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

〔思想及び良心の自由〕
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

〔信教の自由〕
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

〔学問の自由〕
第23条 学問の自由は、これを保障する。

〔家族関係における個人の尊厳と両性の平等〕
第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

〔教育を受ける権利と受けさせる義務〕
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止〕
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

〔財産権〕
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

〔納税の義務〕
第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

〔生命及び自由の保障と科刑の制約〕
第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

〔裁判を受ける権利〕
第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

〔逮捕の制約〕
第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

〔抑留及び拘禁の制約〕
第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

〔侵入、捜索及び押収の制約〕
第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

〔拷問及び残虐な刑罰の禁止〕
第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

〔刑事被告人の権利〕
第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

〔自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界〕
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

〔遡及処罰、二重処罰等の禁止〕
第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

〔刑事補償〕
第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
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 「基本的人権(11条、97条)」と「自由及び権利(12条)」の文言の意味を区別して考えるならば下記の図のようになる。

 

 ただ、「人権」というものは実体のない概念上のものなので、「基本的人権」や「自由」、「権利」などと指し示す言い方が変わっても、それ自体はほぼ同一の概念を指していると考えられる。そのため、この場面でこれらの言葉の意味を厳密に区別する必要は大きくないと考える。図の中では人権という概念が分割されているように見えるが、概念上は同じものを指している。


 このような関係を別のものに例えるならば、「フォルダー」と「ファイル」のようなものではないだろうか。基本的人権を「フォルダー」と、自由及び権利を「ファイル」と表現して条文に当てはめて考えてみよう。


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第97条 この憲法が日本国民に保障するフォルダーは、人類の多年にわたるファイル獲得の努力の成果であつて、これらのファイルは、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久のファイルとして信託されたものである。 


第11条 国民は、すべてのフォルダーの享有を妨げられない。この憲法が国民に保障するフォルダーは、侵すことのできない永久のファイルとして、現在及び将来の国民に与へられる。


第12条 この憲法が国民に保障するファイルは、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

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 厳密な意味として当てはめに成功したかどうかは分からないが、結局、フォルダーでもファイルでもその中身の有益性が大切である。結局フォルダーの中にはファイルが入っていて、ファイルが束になればフォルダーなのである。与えられたもの、信託されたもの、不断の努力で保持しなければならないものとは、その中身の実質的効力であり、フォルダーであるかファイルであるかはここでは厳密に区別する有益性はないと思われる。

 

 97条の「多年にわたる自由獲得」の『自由』の文言や、「これらの権利」「永久の権利」の『権利』の文言は、12条の『自由及び権利』の文言に反映されているのかもしれない。
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〔基本的人権の由来特質〕
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 


〔基本的人権〕  
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕  

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

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人権は国民だけのものなのか


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〔国民たる要件〕
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。


〔基本的人権〕
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。


〔基本的人権の由来特質〕
第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
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 人権は、人であれば生まれながらに持つとされ、憲法上も11条、97条で定められている。しかし、この11条、97条の文言は、「国民」「日本国民」と記載されており、文言上ではあたかも「日本国の国民」にしか人権の享有を認めていないようにも読み取れる。


 確かに、性質上外国人は含まず、日本国民のみを対象とした人権規定も存在するため、「国民」と表現することも妥当性があるかのようにも見える。しかし、日本国民でなければ人権の本体が享有されないかのような規定では、事態の重大性から考えても、文言を修正した方がいいようにも思われる。


 また、日本国の憲法であるから、日本国民の人権だけを保障することが妥当であるかのようにも見えるが、そうであるにしても、人権の性質は「侵すことのできない永久の権利」であるわけであり、その普遍性を国民のみに限定することはその性質に反する。また、人権は、国民主権の多数決原理によっても奪うことのできない権利であるのだから、国民のみを意識して規定することにも妥当性がないように思われる。


 さらに、10条で「日本国民たる要件は、法律で定める。」とあるように、法律で定めた要件に該当しなければ、「日本国民」ではなくなってしまうのだから、人権の享有主体を「国民」だけに限定しているかのような文言は、意見の合わない少数派の国民を切り捨てるために多数派が国籍法の改正を行ってしまう事態を防ぐことができない。


 もちろん、「人であれば生まれながらに持つ」という前提で法が運用されていれば、人であれば「平等権」を享有するため、多数派が一律に少数派を切り捨てることは不可能である。また、立法権とは一般・抽象的な規律を持った立法作用であるから、個別・具体的な国民の一部を切り捨てることも不可能なはずである。(ただし、合理的な理由を見出して差別される可能性はある。)


 しかし、この「人であれば生まれながらに持つ」とされる人権であるという前提が、「国民」という文言では不足していると感じられるのである。


 確かに、前文では「全世界の国民」という文言も使われており、国民とは広くは人類すべてを対象としているかのようにも見える部分もないではないが、11条後段と似通った文言を持つ97条の規定は、「日本国民」と書いてあり、その範囲を限定しているように見えるのである。


 日本国憲法の対象は、あくまで日本国の内部であり、それ以外の国民の人権に対して、日本国の統治権を行使して行うとした場合、他国の主権への干渉となり得る。そのため、憲法上(実定法)(制定法)上の規定としては、どうしても「国民」「日本国民」の表現を使わざるを得ない部分もあるかもしれない。


 しかしそれでも、人権規定の中には「何人」の表現も存在しており、人権の享有主体を示す文言としてはこちらの方が適切と思われる。


 どうにか、この整合性をより美しい形で表現することはできないのだろうか。


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〔国民たる要件〕
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。


〔基本的人権〕
第11条 何人も、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が何人にも保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。


〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第12条 この憲法が何人にも保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、何人も、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。


〔個人の尊重と公共の福祉〕
第13条 すべて何人も、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


〔基本的人権の由来特質〕
第97条 この憲法が何人にも保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
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 人権は、何人にも保障され(11条、97条)、何人も個人として尊重される(13条前段)はずである。しかし、信託されている(97条)のは国民であり、不断の努力(12条)をするのも国民であるかのように思われる。また、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする(13条後段)のも国民であり、その国民の要件は、法律で定める(10条)のである。


 これで整合性はとれただろうか。



<理解の補強>


日本国憲法における人権の享有主体としての「国民」とは誰なのか 2018.09.30

人権の保護の仕方に違いはあるのか



<理解の補強>


憲法上の権利の規定の整理を 2017年06月10日