規範力の復元


 近年、政治による憲法の軽視がなされ、憲法の規範力が低下している。憲法の規範力が低下することは、法の秩序の存立そのものを揺るがすものであるから、国民の人権保障の質が低下することに繋がる。


 ここでは、規範力を復元し、憲法秩序の質を取り戻すためにいかなる方法があるのか検討していきたいと思う。



近年、規範力が低下ししていると考えられるもの。

〇 7条「解散」(自由裁量が妥当か)
〇 9条「解釈手続きの適正」(論理の飛躍の是正)

〇 31条「適正手続きの保障」

〇 41条「立法内容の明確性の趣旨」(存立危機事態の要件の曖昧さ)

〇 53条「臨時国会召集義務」(召集遅滞)

〇 99条「憲法尊重擁護義務」


 これを復元させるためには、31条の適正手続きの保障を拡大させ、行政手続の保障を明文化するのはどうだろうか。


 その他、考えられる是正方法を検討してみよう。憲法秩序全体の規範力を保つために、総合的に考えていく必要があると思われる。ただ、同時にその手段の妥当性や弊害にも注意する必要がある。


「憲法付属法(国会法・内閣法など)での補完」
「憲法尊重擁護義務の具体的内容を法律で明示」
「適正手続き一般法の制定」

「抽象的違憲審査制の導入」

「行政事件訴訟の新たな客観訴訟の区分の創設」

「憲法訴訟の充実」

「憲法裁判所の設置」

「裁判所の統治行為論の否定」

「条文の規律密度の向上」

「憲法保障の機能強化」

 これらのどれをどのような形で導入すれば、憲法の規範力を向上させることができるだろうか。それとも、現在の状態で是正する方法はあるのだろうか。

 適正手続きの一般法は、規範性確保のための守備範囲が現在の「行政手続法」だけでは対応できないと考えられるからである。


 また、「憲法改正の限界」を確定していく論点も必要ではないか。無理な憲法改正を試みたり、改憲が行われてしまった場合に、憲法への信頼や規範力が低下し、法秩序そのものの安定性が損なわれるからである。


 少なくとも、憲法改正の限界に関する一定の合意を見いだせるような論点整理が必要ではないか。文言上の限界や、近代立憲主義の理念から導かれる限界など、丁寧にまとめ、日本国憲法上においてはどのような改正ならば許容されるのかなどを示したガイドラインが必要なのではないか。


 憲法改正の条文案を提示する際に憲法全体との整合性を保つためのガイドラインなどが必要なのではないか。


<理解の補強>

 手続法のアイディアに共通点があるかもしれない。

橋下徹「政府は沖縄の民意を無視するな」 切り札は「手続き法」の制定だ 2018.10.3



規範力の復元方法の検討


 憲法の規範力を復元する方法を網羅的にリスト化し、どの立ち位置にいる人であっても、常に最善の方法を選択できる基盤を確立していくべきではないか。


 下記の〇✕△は、検討中である。一つ一つの項目が、どのような結果となるのかを検討すると良いだろう。


> 7条解散は憲法学者「木村草太」の「衆議院解散の手続法」が参考になる。

木村草太の憲法の新手(105) 衆院解散の手続法を 内閣は議員に理由を説明すべき 2019年6月2日

> 9条の憲法改正での対応については、「武力行使」について憲法上でポジティブリストで明記することは性質上馴染まないと考えられる。

> 53条後段については、少数派のための制度であるから、具体的な内容を多数決によって確定する法律という形式にはなじまず、憲法付属法での対応は不能と思われる。


> 53条後段違反については、法律によって罰則を設けることができるのか。

> 「適正手続き一般法」の制定については、同時に行政事件訴訟法の客観訴訟に訴訟要件を加えることで、抽象的違憲審査を可能とする方法もあるかもしれない。

> 「適正手続き一般法」関連で、「憲法解釈の手続きの適正に関する法律」などをつくることはできるのか。

> 「憲法訴訟(抽象的違憲審査制)」について、他にも「裁判所法」を改正し、裁判所内部に「憲法裁判部」を設置して実現する方法もあるかもしれない。

> 99条については、法律によって罰則を付けることはできるのか。


その他の規範力を形成する方法で考えられるもの

〇 会計検査院による違憲審査
〇 国会での追及

〇 国民の追求

〇 メディアの追求

〇 国民やメディアによる監視
〇 請願
〇 選挙で憲法を守る政治家を選ぶこと
〇 公務員の適正な職務による抵抗

〇 憲法訴訟の提起
〇 国民への法教育の普及

〇 学者が憲法学の学問分野をさらに確立する

〇 メタ憲法学の理論を明鏡に解明し、規範力の根本問題をクリアに示す

〇 歴史的評価による批判
 


<理解の補強>

立憲的改憲 憲法の力を取り戻すために 山尾志桜里・衆院議員 2018年11月9日
「護憲」「改憲」の二元論を超えて 橋下徹 木村草太 2018/11/26
立憲主義貫徹のため 憲法裁判所設置を 山尾志桜里・衆院議員 2018年12月25日
「憲法尊重擁護義務」は平成で終わったのか(上) “立憲主義の柔らかいガードレール”が無力化されたわけと日本国憲法の現状を検証する 2019年04月29日


 「『憲法裁判所』という名前の独自の機関をつくるのではなく、現在の裁判所に憲法訴訟における訴訟機能を担わせることで良いのではないか」との意見がある。確かに、規範力を復元するために必要なことは、司法権の行使による判決を得ることであるから、「憲法裁判所」という名前の独自の機関をつくる必要はない。

 こうなると、「憲法裁判所の設置」という目標を掲げるよりも、「憲法訴訟法の整備」という名前の方が妥当なのかもしれない。「憲法訴訟法の整備」であれば、国民の具体的な権利に関わらない訴訟を提起することもできるように整備できるし、「統治行為論」をどのように扱うかについても規定できるはずである。


 当サイトも、そこまでの精度で憲法訴訟を扱えていないため、今後、この辺も考えていく必要がありそうである。


 憲法学者「長谷部恭男」の記述も参考にしよう。

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 かりに、最高裁の過度の多忙さが違憲審査機関としての機能低下を招いているのだとすれば、判例の統一を含めた上告審としての機能を切り出して、最高裁と現在の高等裁判所との間に設置される第三審裁判所にそれを託し、最高裁の役割を違憲審査権の行使に特化することも考えられる(宍戸常寿=林知更編『総点検 日本国憲法の七〇年』二三九頁[宍戸常寿])。この制度の改革に、憲法の改正は不要である。
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日本国憲法 長谷部恭男解説 岩波文庫 amazon (P193) (下線は筆者)


 「高見勝利」の記事も確認する。

“憲法のご意見番”高見勝利氏が警鐘「徴兵制も現実の話になる」 2015/08/02



 下記は、憲法の規範力に関わる論点の掲載されたページである。