緊急事態条項の研究

緊急事態関連法の一括整備で対応可能

 

 緊急事態条項を設けるよりも、「参議院緊急集会強化法」などを立法すれば対応できるのではないか。三権分立も完全に維持し、迅速な措置を行うことができるはずである。


 裁判所の緊急抽象的違憲審査の道を「緊急抽象的違憲審査法」によって開けばいいのではないか。緊急時においても、三権分立の統治原理が迅速に働くという、極めて立憲主義に沿う考え方である。


 会計検査院の、緊急会計検査も行えばいいかもしれない。


 これらは、「国会法」「内閣法(+行政法〔組織法・作用法・救済法〕)」「裁判所法」「会計検査院法」「地方自治法」の改正で対応できる。立憲主義を守って、緊急事態に対応できるという、誰もが望んでいる考え方ではないだろうか。



下記の図の茶色の法律名
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 これら統治機関に関わる法整備を、緊急事態に対応できるように総合的に整備すればいいのである。


 この方法であれば、内閣の独裁にはならないだろう。


 なぜ内閣が緊急時に独裁権を手にしたいのかと言えば、三権分立の抑制均衡の作用を働かせるための「国会」と「裁判所」からの権力抑制を無視したいからである。

 緊急時において、国会と裁判所が事態に対応するために迅速に活動できるのであれば、内閣が独裁権を働かせる必要はないのである。

 

国会に非常事態委員会を設置すれば対応できる


 常設の「緊急事態委員会」を国会に設けることで対応できる。

国会法
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第五章 委員会及び委員

第40条 各議院の委員会は、常任委員会及び特別委員会の二種とする。

第41条 常任委員会は、その部門に属する議案(決議案を含む。)、請願等を審査する。

○2 衆議院の常任委員会は、次のとおりとする。
一 内閣委員会
二 総務委員会
三 法務委員会
四 外務委員会
五 財務金融委員会
六 文部科学委員会
七 厚生労働委員会
八 農林水産委員会
九 経済産業委員会
十 国土交通委員会
十一 環境委員会
十二 安全保障委員会
十三 国家基本政策委員会
十四 予算委員会
十五 決算行政監視委員会
十六 議院運営委員会
十七 懲罰委員会

○3 参議院の常任委員会は、次のとおりとする。
一 内閣委員会
二 総務委員会
三 法務委員会
四 外交防衛委員会
五 財政金融委員会
六 文教科学委員会
七 厚生労働委員会
八 農林水産委員会
九 経済産業委員会
十 国土交通委員会
十一 環境委員会
十二 国家基本政策委員会
十三 予算委員会
十四 決算委員会
十五 行政監視委員会
十六 議院運営委員会
十七 懲罰委員会

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 ここに、常設の「緊急事態委員会」を創設し、緊急時にどのような措置が必要であるのかを国会議員に常々検討させ、必要であれば非常事態に対応できるよう国家機関に関する法整備を行っていけばいいのである。


 この「非常事態委員会」は、ここに挙げられている各委員会やそれらに関わる内閣を構成する大臣や、大臣以下の行政機関である省庁とも連絡を取り合い、精度の高い非常事態の連携措置や法運用の在り方を検討すればいいのである。

 国会の国政調査権なども行使し、緊急事態での行政権の措置が、裁判所で違法性がどのように判定されるのかも綿密に検討していけばいいのである。

 

 内閣法では、既に内閣危機管理官や、国家安全保障局があるため、非常事態にも対応できるはずである。憲法規定とする必要があるというものではない。

内閣法

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第15条 内閣官房に、内閣危機管理監一人を置く。
2 内閣危機管理監は、内閣官房長官及び内閣官房副長官を助け、命を受けて第十二条第二項第一号から第六号までに掲げる事務のうち危機管理(国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処及び当該事態の発生の防止をいう。第十七条第二項第一号において同じ。)に関するもの(国の防衛に関するものを除く。)を統理する。
3 内閣危機管理監の任免は、内閣総理大臣の申出により、内閣において行う。
4 国家公務員法第九十六条第一項、第九十八条第一項、第九十九条並びに第百条第一項及び第二項の規定は、内閣危機管理監の服務について準用する。
5 内閣危機管理監は、在任中、内閣総理大臣の許可がある場合を除き、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行つてはならない。

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第17条 内閣官房に、国家安全保障局を置く。
2 国家安全保障局は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 第十二条第二項第二号から第五号までに掲げる事務のうち我が国の安全保障(第二十二条第三項において「国家安全保障」という。)に関する外交政策及び防衛政策の基本方針並びにこれらの政策に関する重要事項に関するもの(危機管理に関するもの並びに内閣広報官及び内閣情報官の所掌に属するものを除く。)
二 国家安全保障会議設置法(昭和六十一年法律第七十一号)第十二条の規定により国家安全保障局が処理することとされた国家安全保障会議の事務
三 国家安全保障会議設置法第六条の規定により国家安全保障会議に提供された資料又は情報その他の前二号に掲げる事務に係る資料又は情報を総合して整理する事務
3 国家安全保障局に、国家安全保障局長を置く。
4 国家安全保障局長は、内閣官房長官及び内閣官房副長官を助け、命を受けて局務を掌理する。
5 第十五条第三項から第五項までの規定は、国家安全保障局長について準用する。
6 国家安全保障局に、国家安全保障局次長二人を置く。
7 国家安全保障局次長は、国家安全保障局長を助け、局務を整理するものとし、内閣総理大臣が内閣官房副長官補の中から指名する者をもつて充てる。

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 裁判所においても、国会の立法や内閣の処分に対して、緊急違憲審査を行うことができるように法律によって権限を与えることで対応できる。これで、三権分立の統治原理を維持したまま、非常事態への対応が迅速に行えるようになる。国民の人権も最大限に保障できるはずである。

裁判所法

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第八条(その他の権限) 最高裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。
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極論、憲法保障で対応可能


 非常事態とは、憲法秩序を停止する考え方であるため、そもそも憲法典に書き込むことに馴染まず、法制度上も法律規定で非常事態に対応することが前提である。それでもなお、非常事態に対応しなければならないほどの想定外の事態が起きた際には、憲法中に緊急事態条項を設けなくとも、憲法保障の考え方を採用し、超法規的憲法保障(非常手段的憲法保障、未組織的憲法保障)で対応することが可能であると考えられる。


 それでも、憲法中の【統治規定】の統治機構に対して「国家緊急権」を付与しようとする場合には、同じく国民にも【人権規定】として「抵抗権」を付与する条文を加えた方がいいものと思われる。憲法秩序のバランスを保つことができるからである。


憲法保障 Wikipedia


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歴史に学んだ基本法

 議会制民主主義を独裁に変えたナチの統治は、ホロコーストなど人類史の汚点ともいえる破局をもたらしました。抵抗権は、一九六八年の緊急事態条項追加とともに加えられました。基本法は歴史に学んだたまものなのです。
 ドイツ社会は基本法の原則について議論を重ねながら、守り続けてきました。

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変えられぬ原則がある 憲法を考える 2018年5月2日

<理解の補強>


衆憲資第87号 「緊急事態」に関する資料  平成25年5月 衆議院憲法審査会事務局


No.147 緊急事態条項批判 2017/11/24